(株)カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(東京都港区新橋4-5-1)は、北関東~九州で「カンデオホテルズ」を展開している。ビジネスホテルとラグジュアリーホテルの中間領域をターゲットに開発型の出店を行い、2025年には契約ベースで客室1万室突破を目指している。コロナ禍で厳しい中でもテレワークなどの新規需要を掴んだほか、過去最高の売り上げを記録した地域もあるという。代表取締役会長兼社長の穂積輝明氏に話を聞いた。
―― 会社の概要から。
積極出店を進める「カンデオホテルズ」(写真は19年10月オープンのカンデオホテルズ大宮)
穂積 05年7月の創業で、現在17期目に突入したところだ。チェーンホテル数は23店・4235室を展開しており、開業が決定した契約済みのものを含めると28店・5770室となる。設立当初は地方でのロードサイド出店をメーンとしていたが、9号店の福岡・天神、10号店の愛媛・松山から徐々に都市部の中心地へ出店する戦略へ切り替え、現在に至る。
また、当社のホテルは最上階に大浴場を設置し、客室を平均的なビジネスホテルより広めに作る、レストランは1カ所のみでラウンジロビーを兼ねる、など独自の企画を展開している。
―― 新型コロナが業績に与えた影響は。
穂積 売り上げベースで最も落ち込んだのが20年4月で、昨年対比約85%減だった。だが、早急に様々な対策を講じ、直前期の通期実績は同約38%減にまで持ち直した。業績には大きな影響があったが、業界的に見れば当社はまだ踏みとどまれたのではないかという印象だ。確かに業績は落ち込んだが、当社のホテルがある多くのエリアでトップクラスのRevPARを獲得できている。
一方、売り上げのどん底は前述の20年4月だったが、翌5月からは業績回復の兆しが見え、復活の立ち上がりも早かった。要因は、エッセンシャルワーカーなどの連泊需要、テレワーク推進による需要、デイユースや時間利用の需要を新しいニーズと捉え、これに対応した商品を5月の段階で投入できたため。
エリアで見ると、やはり首都圏と大阪圏は大きな影響があった。一方、地方エリアの栃木・佐野、愛知・半田、広島・福山などは暦年でも高水準の売り上げを記録。これは、従来と異なる需要が生まれた結果だと思う。
―― コロナ禍で始めた新しいサービスは。
穂積 デイユース・時間利用で使いたいというニーズが高いことを受け、5時間や7時間など利用時間で選べる商品の投入を行った。また、当社のホテルは大浴場を目的に来られるお客様も多いことから、大浴場も使えるデイユースのプランも、コロナ禍初期に販売していた。
そして現在、アフターコロナに向けた商品の見直しを行っている。コロナ禍の初期は、とにかく居場所を確保したいという思考があったと思うが、最近はいわゆるコロナ疲れで、開放感に浸りたい・ゆっくりしたいなど今まで抑圧されていたマインドを発散したいというニーズに変わってきているので、こうした需要に応える商品を現在開発中である。
―― 出店について。
穂積 出店意欲は常に高く、早期に1万室を展開したい。今後の予定は22年に2店、23年に1店、24年に2店、計5店の新規出店を計画しており、コロナ前とコロナ後で出店戦略に変更はなく、従前どおり行っている。計画中のプロジェクトも予定どおり進んでいる。
未進出エリアもまだあり、実際に札幌などでも検討を進めているが、原則は太平洋ベルトを中心に店舗展開していこうという戦略だ。
―― レストランについて。
穂積 エリアごとにオペレーションをアジャストしながら、FB(料飲部門)も適宜強化していこうと思っているが、原則、我々は朝食のみの提供で、ランチやディナーは地元の飲食店に行っていただきたいという考えだ。ホテルでお客様を集客し、ホテルの外で食事をしてもらうほうが、地域に貢献できると思っている。実際に客数が増え、売り上げが伸びたという飲食店の声もよく聞く。コロナ禍でホテルも厳しい状況になったが、飲食店も同様である。打開策として、宿泊利用のお客様に地元の飲食店で使えるクーポンを付与するなどし、共存共栄していく考えだ。
―― 今後の事業展開は。
穂積 “ニッチトップで光り輝く”という戦略を進めていきたい。現在、国内ホテルマーケットでは約100万室が供給されており、メーンは宿泊主体のビジネスホテル、次がラグジュアリーホテルで、当社が展開する中間領域はニッチと言えばニッチ。そのニッチマーケットではおよそ10万室が限界だろう。当社では、この10%にあたる1万室が上限と考えており、1万室以上はあまり現実的ではないと感じている。
―― 1万室達成後のビジョンは。
穂積 将来的には、ホスピタリティビジネスをコングロマリット化したい。ホテルは衣食住、エネルギー、教育などの産業と馴染みやすい。そういう周辺領域で社会貢献型の事業を横展開し、コングロマリット化する。あくまで、本業のホテルで高収益体質をつくっておき、そこで余裕が生まれれば周辺事業にまわして、社会貢献につなげたい。
教育に関しても、例えばビジネススクールを直営で行い、ホテルビジネスを教える。卒業後は当社、他社どちらでも構わないので、就業につながる教育を手がけ、ホテルをはじめ様々な業界に貢献していきたい。
さらに、従業員1人あたりの年商を高め、少人数で高収益を生み出す少数精鋭集団として、従業員が経済的にも精神的にも幸福を実現できる環境を整備したい。
(聞き手・副編集長 若山智令)
※商業施設新聞2407号(2021年8月10日)(7面)
アフターコロナのホテル運営 No.3