商業施設新聞
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第292回

相鉄ローゼン(株) 代表取締役社長 曽我清隆氏


沿線で培った信頼・ブランド力
都内など沿線外にも積極出店へ

2021/8/10

相鉄ローゼン(株) 代表取締役社長 曽我清隆氏
 相鉄ホールディングスの基幹会社である相模鉄道は、横浜駅から海老名市や藤沢市と、神奈川東部~県央間の計約40kmを走る。2019年11月には、JR線との相直運転を開始し、都心に乗り入れた。さらに22年度下期には東急電鉄と乗り入れるなど、利便性が高まり、沿線の魅力向上が期待される。その沿線の食を支えるのが相鉄グループの相鉄ローゼン(株)だ。6月末で代表取締役社長に就任した曽我清隆氏に聞いた。

―― 巣ごもり需要の影響はどうでしたか。
 曽我 総合的にみてプラスの影響が多かった。在宅率が高まり、駅の利用者が減ったため、駅前店舗は苦戦したが、郊外店舗は好調だった。商品面では来店回数が減り、まとめ買いをするお客様が増えたため、消費期限の短い総菜が苦戦したが、21年明けごろから徐々に戻ってきた。自炊疲れや飲食店のテイクアウトも増えるなど、需要のパターンが変わった。

―― 相鉄ローゼンの強みは。
沿線外にも積極的に出店する(写真は19年2月に川崎市幸区にオープンしたそうてつローゼン塚越店)
沿線外にも積極的に出店する
(写真は19年2月に川崎市幸区にオープンした
そうてつローゼン塚越店)
 曽我 神奈川の地域スーパー(SM)として、エリアやお客様の需要に合わせた機動的な品揃えを行っている。特に相鉄線沿線のお客様はローゼンのブランドに愛着がある方が多く、生鮮のおいしさや鮮度、こだわりにご評価をいただいている。青果はバイヤーが産地に出向き、直接農家から話を伺い、自信を持っておすすめできる「ローゼンがんばる農家応援団」を展開する。また、全国から仕入れた鮮魚を店内で加工した寿司も好評だ。専用の厨房が必要なため全店で対応できていないが、順次拡大してきたい。

―― 現在の店舗数は。
 曽我 55店で、うち53店が神奈川県内にあり、小田原や三浦など、全域に店舗を持つ。神奈川県以外は東京都町田市内に2店。沿線が23店、非沿線が32店。また、そのうち駅前・駅近は26店。
 沿線外では、川崎市内に多く、18年は立て続けに川崎市内に3店出店し、現在は市内に6店ある。

―― 直近の新店は。
 曽我 19年10月、相鉄線大和駅の至近に大和駅前店を開店した。19年度はこの1店だが、18年度は計4店で、前半にジョイナステラス二俣川店、後半に川崎市内で川崎アゼリア店、塚越店、梶ケ谷店の3店を出店した。

―― 出店余地は。
 曽我 相鉄沿線の内外を問わず出店余地はまだあるが、好物件は競争が激しい。

―― 競合は大手SMチェーンでしょうか。
 曽我 それだけでなく、ドラッグストアも積極出店と圧倒的な低価格で攻めてきている。生鮮の品質の勝負であればお客様に私どもを選んでいただける自信はあるが、加工食品や日配品は価格の競争になりがちで厳しい。
 相鉄線沿線だけでは出店地が限られるので、基本的には神奈川県内に加え、大田区など東京の城南地区にも出店したい。出店要請もいただいており、生鮮が美味しい、鮮度が良い、しっかり陳列しているなど、SMの基本を愚直にやっている点が評価されていると自負する。また、相鉄グループには不動産開発会社もあり、グループの総合力を活かし、住宅との一体開発やNSCなどの土地活用提案も可能である。

―― 今後の計画は。
 曽我 年間2店を目標に出店したい。現時点で今年度の計画はないが、居抜きなどの機会があれば検討したい。

―― 相鉄線沿線は高齢化が進んでいます。
 曽我 神奈川県では、中央から南部で高齢化が進行しており、相鉄線沿線も人口増加から下降に転じたのも早かった。増加を牽引したのは、横浜市では都筑や青葉、緑区などの北部地域。相鉄線沿線は数年前から下降に転じており、特に旭、瀬谷区は高齢化が早い。

―― ネットスーパーが有効では。
 曽我 ネットスーパーや移動販売など、幅広く情報を収集し検討している。相鉄線沿線は山坂が多く、今後は車の運転ができない高齢者も出てくるなど、買い物難民になるケースが増えてくるだろう。地域の食を支えるスーパーマーケットとして、ラストワンマイルについて様々に対応していきたい。

―― 相互直通運転で新たな流入も期待できます。
 曽我 そのとおりだ。都心とつながったことで、相鉄線沿線に居住する選択肢が以前より高まっている。さらに22年度下期からは東急線とも乗り入れるので、期待したい。

―― 中期計画は。
 曽我 3カ年計画を策定中だ。3年以内では難しいかもしれないが、販売高1000億円超は目指したい。また、老朽店舗も多いので、大規模な改修や建て替えも視野に入れる。併せて、生産性を上げるため、センター改善やICTへの投資も行っていく。

―― 最後に一言を。
 曽我 沿線の店舗は相鉄グループのブランド力の源泉なので、ここはしっかりした商売で地域一番店の座を確保しなければいけない。ただ、相鉄線の路線長は約40km。大手私鉄の中では最下位クラスだ。沿線だけにこだわっていたのでは規模の拡張はできない。相鉄グループの基本戦略に、積極的に沿線外にも出ていくと位置づけられており、当社も沿線内の商売をしっかりやりながら、そこで培ったお客様の評価やノウハウを生かして沿線外に積極的に出店していく。


(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
※商業施設新聞2405号(2021年7月27日)(5面)
 地域密着! 沿線スーパーを探る

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