IGP ROBOTICS(株)(東京都渋谷区東1-32-12)は、ビジネスコンサルティング事業などを展開するイグニション・ポイント(株)(東京都渋谷区)が2020年8月に設立した企業で、サービスロボット関連の事業を展開している。国内外のロボットのローカライズ、アプリケーションソフトの開発、コンサルティングなどを総合的に提供しており、様々な産業のRX(ロボティクストランスフォーメーション)化を支援している。今回、イグニション・ポイントのCSOで、IGP ROBOTICSのCOOである野上隆徳氏に話を伺った。
―― IGP ROBOTICSの設立経緯について。
野上 IGP ROBOTICSの母体であるイグニション・ポイントでは、コンサルタント、エンジニア、クリエイター、デザイナー、データサイエンティスト、研究者などが連携し、独創的なビジネスコンサルティングサービスを提供している。また、新規事業の創出にも積極的に取り組んでおり、その1つとして、サービスロボット分野に焦点を当てた専門ユニットを20年4月に設立。そして、そのユニットがスピンアウトするかたちで20年8月にIGP ROBOTICSを設立した。
IGP ROBOTICSでは、国内外のサービスロボットを導入先の業種や用途に合わせてローカライズしたり、アプリケーションソフトの開発、コンサルティング、導入、運用、アフターサービスなどをトータルで提供している。また、パートナー企業と連携して保険などを提供することも可能だ。
―― 取り扱っているロボットについて。
野上 UBTECH Robotics(中国・深セン市)のAI搭載型ロボットや紫外線照射ロボット、Pudu Robotics(中国・深セン市)の配膳ロボットなどを扱っているほか、ソフトバンクロボティクス(株)の製品や、日本ユニシス(株)が開発した小売店舗の棚チェックを行うAIロボットなども取り扱っている。
現在までに、医療機関向け、小売店舗向け、美術館・博物館向けのソリューションなどを開発・実証し、本格的な採用事例も出てきている。
―― そのソリューションについて。
野上 医療機関向けの一例としては、UBTECHのAIサービスロボット「Cruzr」(クルーザー)に、来院者を非接触で検温できるシステムを当社で開発して搭載し、来院者がCruzrの前に立つと自動で検温するシステムを開発した。また、入院患者とロボットを通じて遠隔面会できるシステムや、病院内の案内を行うロボットの実証実験なども実施している。
―― 小売店舗向けでは。
野上 (株)三越伊勢丹(東京都新宿区)と連携し、検温・案内機能を持つAIコミュニケーションロボットを開発・実証したほか、伊勢丹新宿店本館の知育玩具売り場にロボットを設置し、ロボットが子供の年齢に合わせたコンテンツや商品の紹介・案内する取り組みも実施した。
また、三越伊勢丹は、当社の販売パートナーとして、店舗・施設を保有する法人顧客に対して、開発したロボットソリューションの販売も行っている。
―― 21年における取り組みについて。
野上 医療機関、小売店舗、美術館・博物館向けなど、すでに一定の導入効果が確認されているソリューションについてはアップデートを進めつつ、営業パートナーと連携しながら採用件数を伸ばしていきたい。また、新たな領域でのロボット需要の開拓やロボットソリューションの開発にも力を入れていく。ただ、そういったことは当社だけで行えるものではなく、開発・販売面などで連携していただける方がいればぜひお声がけいただきたい。
―― ロボット市場の可能性についてどう考えていますか。
野上 昨今、様々な産業でDXに関する取り組みが進んでいるが、それに続き今後はRXに関する取り組みが様々な産業で起こってくるとみている。現状ではロボットの導入コストなどがRX化のネックとなるケースが多いが、中国などでは市場の拡大に伴いロボットの低価格化も始まりつつあり、生産年齢人口の減少なども相まってロボットを活用する産業は必然的に増えていくだろう。そういった流れのなか、当社としてはRX化が進む産業やタイミングをしっかりと見極め、パートナーと連携していきながら各産業のRX化につながるロボットソリューションを開発・提供していくことで、23年8月期に売上高20億円を目指していきたいと思う。
(聞き手・副編集長 浮島哲志)
(本紙2021年7月1日号15面 掲載)