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伯鳳会東京曳舟病院、災害緊急医療対応車を秋導入へ、コロナ禍で再び注目


CT/エコー/検体検査/AI搭載のシーメンス1号機、電源は専用車で、発熱外来にも対応

2021/5/11

 (医)伯鳳会(兵庫県赤穂市惣門町52-6 赤穂中央病院、Tel.0791-45-1111)グループは、シーメンスヘルスケア(株)(東京都品川区)のアドバンスト・モビリティ・ソリューション「Medical-ConneX(メディカル・コネクス)」の1号機を、伯鳳会東京曳舟病院(東京都墨田区東向島2-27-1、Tel.03-5655-1120)に導入することで合意したことを、共同記者会見して発表した。大型トラックにCTや検体検査装置、超音波画像診断装置、AI画像解析ソフトを搭載した救急災害医療向け車両として、今秋に実車を納入する予定である。東京DMAT(災害医療派遣チーム)が「Medical-ConneX」の運用や、人員の訓練を行う。

 導入が決定したMedical-ConneXは、大型車両(日野自動車製の4tトラック、いすゞ自動車製の2tトラック)を基台とし、内部にCT装置、免疫生化学分析装置、自動血球装置、血液ガス分析装置、超音波画像診断装置、AI画像解析ソフトウエア、ITクラウドシステム、診療情報管理システム、ベッドサイドモニターなどを装備している。検査用車両と電源車両を独立させたことで、それぞれ単独で使用したり、用途に応じて他の車両と組み合わせたりするなど、多様な要望に対応できる設計になっている。また、単独運用から医療機関との連携運用、地域医療連携まで幅広く対応できるようなシステム構成を用意している。PACS(医療用画像管理システム)接続や電子カルテ接続などを別途追加することで、単独医療施設に加えて、グループ病院間や地域の医療機関同士の接続連携が可能になる(通信回線やクラウド利用料などは別途契約が必要)。同ソリューションは、自然災害やテロなど緊急性の高い現場に医療を迅速に届けること、また、高齢化・過疎化によって顕在化する高度医療へのアクセス格差を減らすことを目指し、シーメンスが長年世界規模で培ってきた軍事医療分野でのノウハウや、パートナーシップを結ぶ日本の医療機関との意見交換をもとに、日本で開発されたもの。

 同社は同ソリューションを、患者と医師が「つながる」こと、いつどこにいても質の高い医療に「つながる」ことをコンセプトに、災害医療・発熱外来・健診・往診・巡回診療向けに設計し、4月1日から販売開始した。救急医療チームを持つ医療機関、往診・回診や発熱外来に力を入れる医療機関をはじめ、省庁や地方公共団体への導入を目指し、販売活動を展開していく。

◆CTや検体検査、超音波、AI解析など搭載

伯鳳会理事長の古城資久氏
伯鳳会理事長の古城資久氏
 このソリューション導入について、伯鳳会理事長の古城資久氏は「過去の災害救援の現場で、被災地の医療機関が機能不全となり助かる命も助けられない場面が多々あった。災害現場から域外への搬送が困難な事例のほか、域外搬送のトリアージの精度を上げたい事例もあった。災害現場に一定のグレードの画像診断装置、血液生化学検査装置が持ち込めれば、災害医療に貢献できるという思いから、CT、超音波、血液生化学検査の可能な診療所機能を持つトレーラーと、その電源車を準備したいと考えた。今回、パートナーシップ契約を結んでいるシーメンスヘルスケアと共同でこのプロジェクトを進められることを喜んでいる。この車両の有効性が認められ、国内に10台程度配置できれば、日本の災害医療は必ず前進すると思う」と述べている。

◆仮設医療・療養施設の展開迅速化に有用

東京曳舟病院 病院長の山本保博氏
東京曳舟病院 病院長の山本保博氏
 東京曳舟病院 病院長の山本保博氏は、「移動型災害緊急対応車の活用は、2011年3月の東日本大震災で注目され、その後、費用面や平時の活用での観点から棚上げされていたが、コロナ禍で再び検討され始めた。フェリーに災害時用の移動型対応車を積み込んで、災害地域に迅速に出動させれば、日本全体でも4~6艘のフェリーを準備すれば済むだろう。コロナ禍の米国では1000床の病院船を用意したが、移動型災害緊急対応車とフェリー(医療用資機材・薬品を装備)を併用すれば米国と同様の病院船の役割をも果たすことができる。また同車両は、テントを張れば仮設医療やワクチン接種センターとしても利用できる。コロナ後の日本の感染症医療体制確立のためには、(1)感染症拡大時に有事用の十分な病床確保、(2)感染爆発に耐えられる医療計画の策定、(3)政府はワクチン確保に全力を、(4)変異型ウイルスには十分な監視体制で患者の隔離を、(5)仮設医療・療養施設の展開を迅速に、(6)看護師の負担軽減の徹底、(7)保健所職員を増員しパワーアップすることが重要との指摘がある。Medical-ConneXは、災害時の(5)の仮設医療・療養施設の迅速な対応に有用である」と述べた。


◆シーメンスヘルスケアと救急災害医療で提携

 シーメンスヘルスケア代表取締役社長の森秀顕氏は「伯鳳会とのパートナーシップをもとに、あらゆる知恵を結集してMedical-ConneXを世に送り出せることは大変光栄に思う。救急災害医療の現場で求められるものを検討するうちに、感染症対策や健診・往診、巡回診療などにも幅広く対応できる本ソリューションが誕生した。新型コロナウイルスの感染拡大や、日本の課題である高齢化や過疎化を背景に、質の高い医療に迅速にアクセスするのが難しい局面でもMedical-ConneXはその一助となると信じている。コンセプトの『つながる』には多くの意味が含まれている。いつ、どこにいても質の高い医療につながること、医師の方々の知見が地域を越えてつながること――このような新しい医療の未来を形づくり、日本全体に広がっていくことを願っている」と述べる。

 伯鳳会とシーメンスヘルスケアは17年4月に「救急災害医療を中心とした医療機器の運用およびサービスに関するパートナーシップ」を締結しており、「Medical-ConneX」の導入は同パートナーシップに基づくもの。

検査用車両のイメージ
検査用車両のイメージ
 東京曳舟病院は、都指定の災害拠点病院ならびに東京DMAT指定病院として高度な救急医療をできる環境を備え、同時に、東武スカイツリーライン・曳舟駅に直結している立地からも、地域住民の健康維持・増進を支える体制を整えている。同病院の前身は白髭橋病院(1936年開設)で、17年4月に現在地へ移転し名称変更した。診療21科目、病床数200床、透析24床で、都指定二次救急医療機関、災害拠点病院として24時間365日の安心安全の医療体制に取り組んでいる。


◆災害医療・発熱外来・健診/へき地医療で活用

 東京曳舟病院は「Medical-ConneX」を、災害医療、発熱外来、健康診断/へき地医療への手段として活用できる。災害医療で求められるのは、いかなる状況下でも必要な検査ができ、迅速に安定した結果を得られること。特に初動時の適切な対応が重要となり、搭載した機器群は、救命救急における外傷初期診療のプライマリーサーベイ(日本外傷学会(JATEDC)「外傷初期診療ガイドライン」による)の必要項目である気道確保や胸腹部外傷の有無の確認、循環の確認などに対応する。災害医療用に導入しても、平時は健診や往診・巡回車両として活用できるため、災害医療対策の費用対効果の向上にも貢献する。

検査用車両を上部から見たイメージ


電源用車両のイメージ
電源用車両のイメージ
 発熱外来は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、病棟の外に機能を設置したいという声が高まっているが、仮設病棟を設置する場合、専用の医療機器を整備する費用負担が大きいことや、病院敷地内のスペース確保が難しいこと、設計から建設までに時間を要することなどが課題になっている。その点で、同ソリューションは発熱外来に求められる検体検査が行える装置を搭載しており、さらにCT検査や超音波検査も可能。大型車両が置けるスペースさえあれば、すぐに発熱外来として運用できる有用性がある。


 健康診断/へき地医療では、高齢化・過疎化への対応として、健診や往診・巡回診療に活用できる。先進的な画像診断装置に加え、検査結果をその場で得られる検体検査装置を搭載し、診断医が同乗する場合はその場で診断できる。診断医が離れた場所にいる場合は、PACSや電子カルテをインターネットで接続しデータの送受信をすることで診断が可能となる。受診者は、質の高い多様な検査を住居の近くで受けることができる利点がある。

(笹倉聖一記者)

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