(株)メイコー(神奈川県綾瀬市大上5-14-15、Tel.0467-76-6001)は、新型コロナ禍で打撃を受けた2020年度(21年3月期)上期業績から立ち直りつつある。20年10~12月は四半期ベースで過去最高を売り上げるなど足元でも好調な受注を継続するなか、東証1部申請を行った。現在の市況や21年度の事業展望について、同社の名屋佑一郎社長に聞いた。
―― 20年4~12月期業績を振り返って。
名屋 9カ月累計の売上高は前年同期比4.6%減の856億8700万円、営業利益は同16.5%減の41億4100万円の減収減益となった。昨年の新型コロナ感染拡大の影響で主力拠点の武漢工場が約2カ月にわたり生産が停止したため、業績が大きく落ち込んだ。しかし、20年4~6月を大底に売上高が急回復し、10~12月期は四半期ベースで過去最高の324億円を売り上げた。営業利益も23億円を計上して2年前のレベルまで戻している。当社の注力する車載ならびにスマートフォン(スマホ)の二本柱の需要回復が大きい。
―― 足元の市況ならびに21年3月期見通しについて。
名屋 昨年後半からの良い地合いを引き継いでおり、車載やスマホ、ゲーム機器関連など全般的に好調に推移している。通期の売上高見通しは前期比横ばいの1160億円、営業利益は同2%増の53億円を見込む。いずれも期初計画に対して売上高で60億円、営業利益で18億円の上方修正を行った。利益面は費用削減効果などが寄与する見込みだ。なお、経常利益は為替の関係もあり減益を想定しているが、現在、月次ベースで過去最高の売り上げを計上する月もあり、場合によっては通期業績見通しがさらに上ぶれる可能性はある。
―― 各工場の稼働率は。
名屋 国内外の工場はいずれもフル稼働になっている。ベトナム工場は、車載とスマホ/タブレットを中心に生産をしている。第3工場は、MSAP仕様の基板の生産を行っている。EMSの拠点も立ち上がっており、実装品や完成品まで仕上げた形でのニーズが高いため、強い引き合いが継続している。本社工場は、先端基板センターと改称した。少量試作、多品種に加え、様々な高難易度の基板に対応する。
―― 主力の車載基板やスマホ基板の受注の状況は。
名屋 4~12月実績でいけば、車載は前年同期比10%減の368億円、スマホ/タブレットは同横ばいの206億円、AI/IoTが52億円とわずかだが増加した。アミューズメントは同3割増の25億円を確保した。EMSは同4割増加して86億円を確保できた。ビルドアップ基板などの難易度の高い基板が中心となるスマホ/タブレット分野が奮闘して、同期間の営業利益の半分を稼いだ。なお、ビルドアップ基板は全体の4割強を占めるまでに拡大している。
―― 21年度の事業環境や戦略は。
名屋 新型コロナの感染拡大や米中貿易摩擦といった不確定要素があるため、先を見通すのが難しい。何も不測の事態が起こらなければ、20年度下期並みの高水準の業績拡大が見込めるだろう。5G関連も21年以降にかけて期待でき、新たな成長機会として注目している。
―― 設備投資の考え方を教えて下さい。
名屋 20年度は期初計画の100億円を見込む。ベトナム第3工場ではモジュール基板向けのラインの整備を行っている。5G端末向けでは放熱対策用のビア加工プロセスが急増するため、レーザー加工機を導入中だ。
当面は100億円弱の水準を維持する。建屋関係を先行して整備しており、今後は製造ラインを逐次、需要に合わせて導入する。20年秋に、ベトナムでは第4の工場として活用できる施設(建屋面積約2万m²)を確保、現在一部を貸工場として活用している。今後の需要次第では遊休スペースを有効活用できる。ベトナムではスマホや車載基板、EMSなどの事業展開を含めて能力を増強している。既存工場では依然余力があり、現状よりもさらにキャパアップが可能だ。また、武漢ではメモリーモジュール・FCCSPのパッケージ基板の生産もしているが、ここも拡張余地がある。
―― 次期中計の方向性は。
名屋 収益力向上を図る。特に国内は老朽化した製造設備も多く、生産効率が海外拠点よりもどうしても劣る。ここ2~3年かけて省人化投資を進めてきたが、さらに合理化・自動化を進めることで生産性の向上を図る。試作・少中量産品は国内を軸にやるが、量産は基本的にベトナムなどの海外拠点に展開する。現在、営業利益率で高い月では8%の水準だが、これをさらに引き上げていく。
(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2021年3月25日号5面 掲載)