電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第626回

(株)トリケミカル研究所 代表取締役社長 太附聖氏


中国市場で需要が急増
新工場で極低温向けを量産

2025/5/16

(株)トリケミカル研究所 代表取締役社長 太附聖氏
 (株)トリケミカル研究所(山梨県上野原市)は、半導体用の高純度化学品を製造・販売しており、現在はHigh-k(高誘電)材料、Metal(バリアメタル)、エッチング材料が収益の柱となっている。2024年度(25年1月期)は生成AIを中心に先端半導体の需要増や中国向けの売上高が急増し、前期比で大幅な増収増益を達成。25年度(26年1月期)はさらに業績が伸長する見通しだ。同社の太附聖社長に今後の展望や製品開発の現状を聞いた。

―― 25年1月期は業績が好調でした。
 太附 24年1月期はメモリー不況で需要が低迷したが、25年1月期はメモリー需要が回復し、生成AIを中心に先端半導体の需要も増加したことで、売上高および営業利益のいずれも過去最高を記録した。

―― 中国の売上高が増えています。
 太附 24年1月期は中国の売上高が全体の2割未満だったが、25年1月期は4割まで拡大し、金額も約4倍に急増した。中国では28nmプロセスのロジック半導体の生産が本格化したほか、DRAMの生産も始まったことで、当社の製品も販売が大きく増えた。中国では、24年9月に100%子会社を設立するなど、顧客対応を強化している。なお、中国以外の売上高の比率は台湾が3割、日本が2割、韓国が1割となっている。台湾の売上高も前期比で1割以上増えたが、中国向けが急増したことで、相対的に比率が下がった。

―― シリコン(Si)半導体が成長を牽引しています。
 太附 売上高の9割以上がSi半導体だ。24年1月期はマイナス成長だったが、25年1月期は需要が急回復し、前期比8割弱の大幅増収だった。主力製品は軒並み売上高を伸ばしたが、なかでも、High-kは前期比で2倍以上となり、Metalも4割の増収だった。High-kはアルミ系、ハフニウム系、ジルコニウム系が中心で、ロジック半導体のゲート絶縁膜やDRAMのセルキャパシタ向けに供給している。一方、Metalはタンタル化合物やチタン化合物をバリアメタル向けに供給している。

―― 用途別ではメモリー向けが好調です。
 太附 25年1月期はメモリー向けの売上高が前期比で倍増したが、ロジック向けも5割増となり、いずれも過去最高を記録した。なお、メモリーは大半がDRAM向けだ。

―― 業績見通しは。
 太附 26年1月期も中国向けを中心に売上高は大幅に増える見通しで、前期に続き増収増益を予定している。なお、中期経営計画の最終年度となる28年1月期の売上高は315億円、営業利益は86億円を計画している。引き続きHigh-kが成長を牽引するが、エッチング、Metalも大きく伸びる。28年1月期のエッチング材料の売上高は25年1月期に対して4倍弱の増加で、Metalも倍増する計画だ。

―― 需要増への対応は。
 太附 当社は少量多品種を製品戦略に掲げており、多くの製品をラインアップすることで、プロセスの世代交代や競合に対するリスクに備えている。Si半導体はプロセスの世代交代で新しい材料の需要が生まれるが、一方で、古い世代向けの製品の需要がなくなるわけではない。新旧の世代に対応した幅広い製品を揃えることで、半導体の需要増に対応している。

―― 生産体制も強化します。
 太附 国内外の最先端半導体の需要増に即応できる体制を構築するため、南アルプス事業所を新設し、先日、工場が竣工した。現在、装置の搬入を進めており、早期の立ち上げを目指している。海外では、台湾工場が22年から稼働している。顧客の評価が完了次第、本格的な量産に移行するが、将来的には生産能力の増強も視野に入れている。

―― 南アルプス事業所の役割は。
 太附 南アルプス事業所では、3D-NANDの極低温エッチング(クライオエッチング)に使用する新規エッチング材料を量産する。クライオエッチングでは、HFガスに添加剤を加えてメモリーホールを深掘りエッチングするが、当社はリン系の特殊な添加剤を開発している。また、今後成長が期待できる新規素材の開発や量産拠点としても南アルプス事業所を活用していく。



(聞き手・松永新吾記者)
本紙2025年5月15日号1面 掲載

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