富士通インターコネクトテクノロジーズ(株)(FICT、長野市大字北尾張部36、Tel.026-263-2710)は、スーパーコンピューター「富岳」の超高密度多層板をはじめ、半導体プローブカード向け超高多層板を安定量産できる大手基板メーカーである。足元で世界的に需要が逼迫している大型FC-BGA基板などのビジネス拡大も視野に入れる。2020年1月には、ファンド企業の傘下となり、経営体制も刷新した。FICTの三好清司社長に足元の市況ならびに21年の事業戦略を聞いた。
―― 20年1月に、ファンドの傘下となりました。
三好 現在の資本構成はファンド80%、富士通20%となっている。ベトナムの海外法人であるFCV社(Fujitsu Computer Products of Vietnam, Inc.)は、FICTの100%子会社となっている。当面この資本構成比を維持し、伸長する分野に積極果敢にチャレンジ、経営判断のスピードを向上させる。
―― 足元の市況を教えて下さい。
三好 総じて好調に推移している。高性能サーバーをはじめHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)向けの高多層板の受注が上向いている。特に欧米の新規顧客からの受注が牽引している。これは、欧米で駐在員を増員対応して顧客開拓につなげた結果が奏功している。
また、昨年秋からは半導体テスター向けなどの需要が急増している。ネットワーク向けや5G基地局向けバックボード、スモールセル対応の高周波対応基板などの受注も拡大している。足元では車載用基板も動き出しており、総じて全分野で受注が好調に推移している。
―― 貴社の主力事業について。
三好 4つの事業で展開中だ。(1)高多層板事業、(2)半導体関連(プローブカード、テスター、半導体パッケージ基板など)事業、(3)微細加工事業、(4)海外のFCV社事業で構成している。
当社の主力事業でもある高多層板事業は、ボリュームゾーンが20~40層となり、データセンターのサーバー用などが中心となる。半導体関連では、プローブカードは最大100層を超える製品要求も出てきており、高アスペクト比の製品が特徴だ。
また、半導体パッケージ基板にも積極的に取り組んでいる。今後はAIチップ向けなどのハイエンド製品で70mm角を超える大型パッケージ基板としてさらに拡大する可能性がある。ベトナムのFCV社は、車載用途を含めてHDI基板などの製造から部品実装、樹脂成型までを手がける。
―― 半導体市況が急回復しています。テスター向け需要などお忙しいのでは。
三好 そのとおりだ。昨年秋口から急激に受注が入っており、足元もフル稼働が続く。テスター本体やプローブカード向けが忙しい。プローブカード向けは特にアスペクト比が厳しくなっており、1対30は普通にあり、場合によっては1対40超といった超高アスペクト比製品の量産もしている。
―― FC-BGA基板も世界的に不足していますが。
三好 高機能な大型サイズのパッケージ基板市場に注目している。当社はもともと富士通向け高性能CPUなどのパッケージ基板を生産してきた。現在もハイエンド向けの量産を手がける。年々、低電圧化傾向にあるなかで、大電流対応のノウハウはトップレベルだ。年内の早い時期に投資を含めて、ビジネス拡大のための決断をしたい。
―― スーパーコンピューター「富岳」向けの基板受注も成功裏に進めました。
三好 二十数層で高速伝送技術にも配慮した難易度の高い基板だが、受注から出荷まで9カ月の納期を守り、無事全量を出荷した。低伝送損失基材と汎用基材を組み合わせたハイブリッド材を使用し、高速伝送化にも対応した。光実装技術などこれまでにない高度な実装技術を結集して、累計約8万枚を出荷している。国内の量産拠点である長野工場(長野市)で既存の製造システムを一新して、新たな管理システムやシミュレーション技術を導入・融合させて対応した。
―― 次期中期経営計画のイメージを教えて下さい。
三好 20年度(21年3月期)は前年度比5%前後の堅調な成長は可能とみており、年間260億円を見込む。21年度以降から次の中期経営計画年度をスタートさせるが、この間で330億~340億円まで売上規模を拡大させたい。18~20年度の現中計ではメリハリをつけた投資を実施、着実に足元を固めてきた。次期中計では成長領域に経営資源を投入することで、さらに飛躍したい。「グローバルエッジトップ」を掲げ、最先端分野でのシェア向上を目指し、高収益の基板メーカーになる。
(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2021年3月18日号5面 掲載)