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オリンパス(株) 執行役員 研究開発センター長 窪田 明氏


「原点回帰」で医療中心に世界初・一流の製品作り
ソニー、テルモなどとも戦略的提携で事業拡大

2013/4/9

窪田 明氏
窪田 明氏
 オリンパス(株)研究開発センター(東京都八王子市久保山町2-3、Tel.042-691-7111)にあってトップを務める執行役員の窪田明氏は、かつて経済産業省の官僚として大活躍した人物である。ニッポン再生のための半導体の国家戦略プロジェクトを立ち上げたことで知られており、エレクトロニクス業界にも顔が広い。今日のオリンパスにあっては、すべての企業活動の礎となる中期ビジョンに「原点回帰」というスローガンを掲げ、世界初・世界一流の製品作りで社会貢献、をうたっている。3大事業となる「医療」「ライフサイエンス・産業」「映像」を旗印に、その持てる技術力に磨きをかけていく方向だ。窪田氏は研究開発を陣頭指揮で引っ張り、技術力とものづくりをベースとするオリンパスの将来像を設計しようとしているのだ。今回は、研究開発の方向性やデバイス技術の重要性などについてお話を伺った。
 ――2012年9月末に情報通信分野を切り離したことで、得意とする医療分野がダントツの構成比となりましたね。
 窪田 1950年に世界初の胃カメラ実用化に成功して以来、この分野では圧倒的な開発の成果を積み上げてきた。マーケットシェアではオリンパスの内視鏡は世界の70%を握っている。実はこのシェアはこの数年間ほとんど変わっていない。また、1920年にはオリンパス初の顕微鏡「旭号」を開発し、現状においても生物顕微鏡はトップクラスのシェアを獲得している。1919年の創業以来、オリンパスには新しい価値を創造するという熱い思いが流れており、これは今後の世代にも引き継がれていくだろう。
 ――医療機器の主要製造拠点で3棟の工場棟建設を決めました。
 窪田 197億円を投入し、会津オリンパス会津工場(福島県会津若松市)、白河オリンパス(福島県西郷村)、青森オリンパス(青森県黒石市)の3カ所で一気に増強を図る。会津は医療用内視鏡スコープ、周辺機器の開発製造を行っているが、今回の計画では94億円を投じ延べ2万2135m²の新棟を建設する。主に医療内視鏡筐体の開発製造を行っている白河は、今回は86億円を投じ延べ2万3900m²の新棟を建設する。青森では主に医療用処置具製品の開発製造を行っているが、今回は約17億円を投じ延べ3000m²の新棟を建設する。東日本大震災で大きな傷を負った福島エリアに新たな設備投資を実行することは、現地の人たちにとっても元気の出ることだと評価をいただいている。当社が医療分野に大きく注力した戦略をとることの意思表明だともいえるだろう。この3棟の新たな工場棟は16年度までに竣工させる予定だ。
 ――中長期的にも医療重視の戦略ですね。
 窪田 医療分野は現状で売り上げ3500億円、営業利益率20%だが、17年3月期までに年率10%以上の成長を目指し、5700億円まで売り上げを引き上げる。営業利益はその時点で22%としたい。内視鏡はドクターとのつながりが強く、病院側のニーズをきっちりと把握しているため、今後も強みを持つだろう。当面の課題としては、外科分野の低侵襲治療機器・デバイスなどを強化する考えであり、こちらは年率14%成長を狙っていく。医療分野の売り上げの約55%が内視鏡であり、この得意分野をさらに拡大していく。
 ――カプセル内視鏡の分野にも注力しますね。
 窪田 実用化されているカプセル内視鏡のメーカーは、主にイスラエルのギブンイメージングとオリンパスだ。現状のカプセル内視鏡は消化管のぜん動運動により推進していく小腸用である。問題は口から飲み込んで出てくるまで8時間もかかってしまうことだ。また、一番重要な消化器である胃を細かく見ることができない。磁気誘導などの技術を使い、遠隔操作で止めたり、動かしたりできる最新鋭のカプセル内視鏡を開発中だ。カプセル内視鏡はLED、マイコン、通信チップ、CMOSセンサーなど多くの半導体が使われている。オリンパスも半導体の応用技術にさらに力を入れていきたい。
 ――長野県辰野工場では一部半導体を内作していますね。
 窪田 MEMSセンサーや医療向けのカスタムチップを製造している。ソニーとの戦略的提携により、デバイス技術や映像技術におけるクロスオーバーも期待できる。半導体のオリンピックともいわれる国際固体回路会議では、オリンパスも新たな半導体チップの論文発表を行う予定だ。
 ――今後の研究開発の方向性としては。
 窪田 なんといっても世界No.1技術への挑戦というのに尽きる。たとえば、がんの早期診断など新たな医学的価値を提供できる高画質・新機能の内視鏡イメージング技術や高周波・超音波を統合した高機能治療デバイスの開発が挙げられる。また、複雑形状の内視鏡部品を高速高精度で内製化するマイクロファクトリーも進めていく。環境に対応したものづくりを実現するだけではなく、ノウハウをブラックボックス化し、生産技術の海外流出を防止していく。高級コンパクトデジタルカメラ「XZ-1」は4分の3世紀にわたり顧客に愛されてきた「ZUIKOレンズ」を搭載し、業界および消費者を驚かせた。OLYMPUS PENは最先端の画像処理エンジンと撮像センサーを積み込み、新世代一眼カメラの芸術品として、これも高い評価をいただいている。デジカメ分野を拡大する一方で、そこで培った技術を横展開し、新たな製品開発につなげていきたい。
 ――テルモとも提携して新技術を追求。
 窪田 合弁会社のオリンパス テルモ バイオマテリアルで展開している「骨補填材オスフェリオン」は、人間の自然治癒力を支援する技術と素材の研究開発が実用化・事業化された一例だ。それ以外にも医療分野全般にわたって両社のシナジーが活かせるような連携を強化したい。
 ――国家プロジェクトにも積極的に参加していますね。
 窪田 NEDOプロジェクトに参加して、ロボットを体外から操作することで手術の傷口を最小限にとどめるインテリジェント・ロボティクス技術で大きな成果を上げることができたので、実用化に向けた開発を進めている。再生医療の研究など、大学とも連携し、新たな可能性を追求している。また、蛍光ブローブでがん組織を検出するとか、がんの超早期発見に貢献する、微小細胞の変化を検出する分光ビデオ内視鏡システム先端光学系の開発にも取り組んでいる。

(聞き手・特別編集委員 泉谷 渉)

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