商業施設新聞
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第266回

三井不動産(株) 商業施設本部 上席主幹 安達覚氏


21年は新潮流・新ニーズを深耕
顧客分析、商業と物流連携も注力

2021/2/2

三井不動産(株) 商業施設本部 上席主幹 安達覚氏
 2020年は新型コロナウイルス感染拡大で想定外の事態が相次いだ。こうした中でも新たなニーズや潮流が生まれている。それを来年以降どう生かすのか。三井不動産(株)上席主幹の安達覚氏に今年の振り返りと来年への意気込みを聞いた。

―― 今年開業した商業施設から。
 安達 「三井アウトレットパーク(MOP) 横浜ベイサイド」「ららぽーと愛知東郷」「RAYARD MIYASHITA PARK(宮下)」「RAYARD-Hisaya-odori Park(久屋大通り)」「アーバンドック ららぽーと豊洲3」が開業した。

―― 客足について。
 安達 ららぽーとやMOPなどの郊外型商業施設は、外出を控えていたお客様が7月ごろから戻り始めた。都心型商業施設はテレワークでオフィスへの出社人口が減り影響が出たが、9、10月になると回復してきた。
 また、ステイホームでホームウェア、オンライン会議が増えた影響か、ちょっとしゃれたシャツや高価な眼鏡など画面に映る上半身のアイテムが売れている。当社のECサイト「Mitsui Shopping Park&mall」での購入も多かった。そのほかにキッチン、ガーデン周り、インテリア、アウトドアやキャンプ用品などへのお客様の支持はこれまで以上に高まっている。ライフスタイルが変化する中であっても、お客様は何を求めているのかを捉えられれば、チャンスがある。

―― 都心型は。
 安達 ワーカー向けの商業施設は郊外型よりも復調が遅い傾向はあるが、9月以降はだいぶ人が戻ってきた。また、富裕層が動き出し、高額商品が売れている感触もある。宮下にあるギャラリー「SAI」が好調で、若い経営者の方がふらっとやって来て、100万円を超えるようなアート作品を気に入って購入される場面があった。また、コロナ禍の影響もあり公園一体型の施設は人気が高い。宮下や久屋大通りは予想を上回る来場だ。都心商業でも3密回避やコロナ対策がしっかりされている施設には行ってみようという動機につながるようだ。

―― スモールオフィスの需要が高いです。
 安達 三井不動産では法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」を展開しており、12月4日時点で91拠点ある。9月からは三井ガーデンホテルズなど一部の系列ホテルの客室でもサービス連携を開始した。商業施設でも、12月からららぽーと柏の葉やららぽーと豊洲、MOP多摩南大沢の敷地内に、トレーラーハウスを個室オフィスに改装したモビリティタイプのワークスタイリング拠点を設置した。色々な場所で働けるという意識が生まれている。

―― 根付きますか。
 安達 コロナ収束後も働く場所はオフィスビルの中に限らないという潮流は、今後も続くと思う。また、会社にいなくても仕事ができることで、余暇時間が増える。お客様の声を聴くと、自分の人生を大事にしたいとの声が多い。SDGsやESGの観点を重視する流れも加速している。当社は街づくり会社として、そこにコミットしていく。

―― 商業はどうかかわっていきますか。
 安達 大きな流れとして自分の時間やライフスタイルを大事にする方向性はコロナが収束しても変わらないと思う。それにつながるファッションやフードを追求する流れになるのでは。ただ、ぜいたくをしないということではなく、おしゃれをしたい、自分にごほうびをあげたい需要は強い。

―― 今後の商業施設開発の方向は。
 安達 RAYARDは機会があれば拡大したい。商業だけでなくホテルや、シェアオフィスなどを組み合わせたミクストユース型施設も当社の強みが活かせる分野。都心商業は今後ギャラリー、ショールーム、ミュージアム的な仕掛けをしたポップアップなど、新しい業態が生まれると思う。驚きや発見を仕掛けたい。
 また、顧客分析の分野においてもICT化が進み、行動分析からきめ細かい商品提案やダイレクトマーケティングが可能になっている。必要な情報はテナントと共有し、売り場もショールーミング化や、モノを置かないデリバリー型が進む。この流れは早まっており、当社も対応していく。

―― 21年以降の計画は。
 安達 21年は海外案件が控える。上海金橋、クアラルンプールでららぽーとを開業する。22年は海外では台湾3都市(台北、台中、台南)でららぽーととMOPを、国内は福岡で計画がある。

―― 国内の都心型は。
 安達 22年に八重洲でオフィスとブルガリホテル、商業、小学校、バスターミナルが一体となった究極のミクストユース施設の開業を予定している。商業は現在リーシングを進めている。ライフサイエンス、ウエルビーングといった新たなものが加わるかもしれない。

―― 来年の抱負を。
 安達 テナントと会話していると、在庫管理が大きな課題になっている。当社は物流施設事業も手がけているため、商業と物流の連携によってテナントの物流面での課題解決にも寄与したい。物流コストを5%削減できれば、それがテナントの利益にもなる。衣類や食品の廃棄も物流をコントロールすることで削減でき、結果的にSDGsにつながる。


(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2376号(2020年12月22日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.349

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