八重洲地下街(株)(東京都中央区)は、東京駅の八重洲エリアで地下街の「ヤエチカ」を運営している。八重洲エリアは過去最大規模の再開発が進んでおり、その中でヤエチカは物販、飲食、サービスなど約180店(物販64店、飲食60店、サービス40店と、その他小規模区画の合計)を展開し、近隣のワーカーや来街者が便利に利用できる店を集める。テナント売り上げは2025年度に過去最高を見込むという。同社専務取締役の丹羽亨氏に聞いた。
―― 24年度の業績を振り返って。
丹羽 テナント売り上げは、前年度比約109%と好調だった。当社が重要な指標の一つとする坪効率もコロナ前を上回った。これまでバブルの時期が売り上げとして過去最高だったが、24年度はその数字に近づいた。
客数も同約105%と伸長し、コロナ前の18年度比でも約102%となった。コロナ禍で客数は大きく落ち込んだものの、周辺再開発の効果もあり客数が戻ってきた。売り上げは伸びても客数が戻っているか心配していた部分があったが、しっかり客数も獲得できている。
―― 好調な業種は。
丹羽 全般的に好調で24年度のカテゴリー別売り上げは、物販が前年度比約108%、飲食が同約108%、サービスが同約122%となった。物販はビジネス系アパレル・アイテムを取り扱う店舗が特に好調に推移した。飲食はラーメンでは「東京ラーメン横丁」が牽引し同約115%。サービスでは旅行代理店が売り上げを大きく牽引した。
コロナ前の18年度比でも、物販が約119%、飲食が約123%、サービスが約149%、地下街全体では約124%と大きく伸びた。コロナ前比では、例えば物販の紳士服カテゴリーは店舗数が減ったにも関わらず、売り上げはほぼ維持できている。
―― 周辺の再開発による効果は。
丹羽 非常に大きく、良いシナジー効果が表れている。23年に「YANMAR TOKYO」「東京ミッドタウン八重洲」が開業し、ヤエチカは両施設に地下でつながっているため、通行量や来街者が増加している。東京ミッドタウン八重洲にはバスターミナルも整備されており、直接的な数値は分かりづらいが、ポジティブなインパクトがあるだろう。YANMAR TOKYOも地下のオープンスペースでイベントなどが開催され、そのお客様の効果などもある。
26年には、外堀通りと八重洲通りに再開発ビル「TOFROM YAESU」が竣工し、同ビルにもバスターミナルが併設する。その後も隣接の京橋エリアに再開発ビルができ、そことも直結する。今閉鎖している5号階段でつながるため、通行量の増加が見込める。
―― 店舗のリニューアルは。
丹羽 以前は新店、既存店改装などリニューアルの数は多かった。現在は徐々に落ち着き、新規出店とともに、既存店の環境面の整備を進めるというフェーズへと、リニューアルの内容が変わってきた。
24年度の新店は計9店で、24年5月にオープンした「カラーフィールド」、同年7月にオープンした「三陽食堂」はともに関東初出店となった。改装は計7店で、物販の「レザーファクトリー」や飲食の「ザ・カーブ・ド・オイスター」、「牛たんねぎし」などはお客様ニーズに合わせて店内改装や客席レイアウトを大幅に変更し売り上げは好調だ。また「ファミリーマート」は、メインアベニューから入店できるよう入り口を新設した。
―― 店舗の入れ替えは。
丹羽 25年4月に「神乃珈琲」が開業したほか、カレー店が集結した「トウキョウカレーカルテット」を改装し、新店2店を4月23日にオープン予定だ。
―― 今後の戦略・方針について。
館内環境のリニューアルも積極的に取り組む(写真はメイン・アベニュー)
丹羽 お客様に対して新しさを見せていかなければならない。リアル店舗を大切にし、日本・世界の中心である東京の公共地下道であるヤエチカで、安全安心や利便性を提供する。また、24年8月にはメイン・アベニュー デジタルサイネージ(66面)を刷新。今後も館内環境のリニューアルに取り組んでいく。
加えて25年4月1日、当社運営駐車場の名称を「東京駅八重洲パーキング」から「ヤエチカパーキング」に変更した。合わせて駐車場には大きな投資を行い、壁・柱・階段を刷新。サインにはヤエチカのロゴを使うなど、ヤエチカとの一体感や視認性を向上させた。今後は床面や駐車場入り口の整備を進めていく。
―― 中長期的な目標は。
丹羽 25年度は、順調なら過去最高のテナント売り上げが見込まれる。29年度までの4~5年の間、周辺で複数の再開発が行われ、就業者や来街者が増えるだろう。このチャンスを逃さず、さらなる成長を目指したい。東京駅といえば丸の内というイメージが強いが、八重洲にも来ていただけるよう、様々なイベントなども行っていきたい。
(聞き手・副編集長 若山智令/サリョールサラ記者)
商業施設新聞2593号(2025年4月22日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.464