ホノルルコーヒージャパン(株)(東京都渋谷区)は、2024年12月にハワイ発のコーヒーブランド「ホノルルコーヒー」の日本再上陸1号店となる原宿店をオープンした。さらに25年5月には銀座店と麻布十番店をオープン。各店ともインバウンドの利用が想定以上で、好調に推移しているという。今後は34年までに30~50店を出店したい考えだ。同社代表取締役社長兼CEOの萩原利貴氏に聞いた。
―― ホノルルコーヒーを日本に再上陸させた経緯からお聞かせください。
萩原 コナコーヒーの独特な風味に魅了され、以前より一顧客として習慣的に通っていた。日本から撤退すると聞いたときは非常に残念に思ったが、SNSを見ると自分と同じような意見を多く見かけ、ファンの多さを再認識した。全国に店舗があったのであらゆる地域の様々な層を捉えており、ビジネスとしての面白さを感じた。
パスポート保有率は今や先進国最下位でどんどん鎖国的になっている日本人が、海外に目を向けるきっかけにとしてホノルルコーヒーがあってほしいと思った。それなら帰国子女でハワイにも20回以上足を運んだ僕自身がやろうと思い立ち、今に至っている。
―― 一度日本から撤退しているブランドですが、勝算はありますか。
萩原 前回は店舗運営一点のみでの展開だったことが良くなかったように思う。今回は店舗事業(カフェ展開)に加えてEC、卸の三本柱で事業を拡大していく。カフェを出店できない空白地帯をECで埋めていきたいが、それでも拾いきれない部分を拾うため、例えば地方の高齢者との接点を得るために、卸事業にも参入した。すでに群馬県高崎市にあるハワイをモチーフとしたゴルフ場「吉井カントリークラブ」のレストランなどにコーヒー豆を卸している。
―― 再上陸1号店を原宿に出店した理由を教えてください。
萩原 トレンドが生まれる場所である原宿に出店することで、「新しい流行を発信していく」という意味を込めたかった。インバウンドにとっても分かりやすいエリアというのも大きい。
同時に原宿といえば若者の街だ。出店前の独自調査では、10代の若年層にとってアサイーボウルは1500円以上払う価値のあるものだということが分かった。若者に刺さる「美容と健康」を打ち出せば、彼らのSNS発信を通じて幅広い世代にホノルルコーヒーを発信できると目論んでいる。
―― 原宿1号店の足元の状況はいかがでしょうか。
萩原 当初の想定どおり、女子高校生が制服姿でアサイーボウルとコーヒーを楽しむ光景がよく見られる。傾向としては2品以上頼まれる方が多い。ドリンクメニューはシンプルなコーヒーが中心でそれに合うフードをラインアップしているから、これは想定どおりだ。
客単価は1800円程度だ。主にハワイ島の斜面で生産されているコナコーヒーは、人の手で1粒ずつ収穫されている。その分選び抜かれた良質な豆だけが流通しているため、我々はそれを価格にも反映している。現在、ブレンドでないコナコーヒーは1200円で販売している。
―― 5月には銀座と麻布十番にもオープンしました。
5月1日にオープンした「HONOLULU COFFEE AZABUJUBAN」
萩原 原宿店では「今と昔のハワイ」を表現しているが、銀座店は倉庫をイメージしたデザイン、麻布十番店は街並みに溶け込むデザインを店舗に反映した。スタンプラリー形式で色々なお店に足を運んでいただけるよう、店舗ごとに外観・内装のデザインを変化させるよう心がけており、これは今後も継続していく。
口コミで「(お店が)ハワイらしくない」と言われることもあるが、多くの人が思い浮かべるハワイのイメージは少し古い。ハワイはコロナ禍以降の数年でも急激に変わっており、我々の店舗では近代化した最新のハワイを表現している。
―― 今後の出店計画は。
萩原 34年までに最低でも30店を出店する。目標としては50店を出したい。新店を任せられる人材が育ってから新しい店舗を考えるというスタンスのため、無理して店舗数を追うことはしない。また、すべての店舗の面倒を僕自身で見られる体制を維持したいため、50店というのが出店できる数の上限になってくるだろう。今年中にさらに新店をオープンできるかは何とも言えないが、少なくとも来年は2~3店を確実に出店する。
50店を出店する場合、都内は15店程度となるだろう。東京以外だと大阪、名古屋などの大都市圏には進出する。そのほか注目しているのは札幌と福岡だ。どちらもハワイへの熱量が高い街で、札幌ではハワイのラジオ番組が20年以上も放送されているほどだ。
―― 商業施設への出店はお考えですか。
萩原 今後も街に溶け込む店舗を作っていきたいため、路面店の数を増やしたい。ただ、商業施設にはいくつかは出店したい。
既存の3店はインバウンドの来店が想定以上に多い。朝食需要を取り込めていることがその理由の1つだと思っているが、商業施設内では朝食の時間帯には営業できない。そうであれば、10坪程度の小さい区画でドリンクやアサイーボウルなどにメニューを限定して展開するようなことを想定している。
―― 働き手不足は課題にはなりませんか。
萩原 実は店舗スタッフの採用には困っていない。既存のスタッフにはフラダンスサークルや英語サークルに所属する大学生など、ハワイが好き、あるいは仕事で英語を使いたい人が多い。SNS経由で公募したり近隣の海外大学の日本校に通う学生にアプローチしたりするなど、工夫しながら人材を集めている。
(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2601号(2025年6月24日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー