商業施設新聞
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第252回

(株)カインズ 代表取締役社長 高家正行氏(2)


多彩な新業態、相次ぎ投入
街づくりを小売りの枠越え展開

2020/10/20

(株)カインズ 代表取締役社長 高家正行氏
―― ECに加えて、購入商品を取り置くロッカーが好評です。
 高家 お客様が希望するものを取り置き、カウンターやロッカーでお渡しする「カインズピックアップ」サービスの利用は、新型コロナの影響で以前の2~3倍に増えている。お客様は、店内を買い回る必要がなく、店内での滞在時間を短くでき、コロナ禍での安全・安心の観点から好評である。ピックアップロッカーは、お客様自身がQRコードなどで開けて、収納された購入商品を取り出すことで、人と接することなく商品を受け取ることができる。

―― 現在の設置数は。
 高家 カインズピックアップロッカーは、19年秋にさいたま市浦和区の店で試験的に設置したのが最初で、20年8月末時点で約50店に設置しており、21年2月までには100店の設置にまで拡大する予定だ。大中小の大きさのロッカーをセットで組み合わせ、1店につき約20箱が設置されていることになる。東京都心により近い店から設置し、今後は店外への設置も進め、これによりお客様は、営業時間外の早朝・深夜にも商品を受け取れるようになる。

―― 新業態「Style Factory」を開業しました。
Style Factory
Style Factory
 高家 7月にららぽーと海老名店(神奈川県)、8月にみなとみらい東急スクエア店(横浜市)を開業した。首都圏に初進出した業態で、18年からららぽーと名古屋みなとアクルス店で試験的に営業してきた。この新業態は1000m²程度を標準面積とし、当社従来型店の約1万m²と比べると10分の1の大きさである。
 女性客の来店増を期待しており、オープン当初は来店客のおよそ60%が女性客だった。“楽カジ”(家事が楽になる)を主題に、優良な厳選商品をテーマごとのコーナーに分けて陳列している。例えば、カラフルなタップコンセントがよく売れているが、これは男性客も多く購入している。家で使われる電化製品が巣ごもり消費によって増えていることがうかがえる。Style FactoryでのPB商品は約70%で、通常型店よりかなり多い。開店から1カ月後の売り上げ予算は達成しており、今後の増加に期待する。

―― 建築職人向けプロショップも開店しました。
C
C'z PRO
 高家 東名高速道路の横浜町田IC近くで、会員制プロショップ「C'z PRO」を8月29日に出店した。開業前に会員を募集したところ、おかげさまで中小規模の企業に所属する左官職人さんや、ひとり親方など多くの応募があった。工具などを扱う当社の「資材館」は、DIYの個人客と、工務店などのプロ職人の客が訪れてくれ、今回はこのうちプロ職人専用店を開設したものだ。今後、住宅のリフォーム需要が拡大することで市場はさらに大きくなるとみている。ひとり親方向けに、職人(左官や電気など)の斡旋サービス、大型工具のレンタル、店頭にない商品の取り寄せサービス(ロッカー設置など)、現場配送も対応可能だ。

―― b8taにも期間限定出店しています。
 高家 当社は、19年度に開始したデジタル戦略を実現するために、4つの目的「ストレスフリー」「パーソナライズ」「エモーショナル」「コミュニティ」で、デジタルツールを使ってお客様の買い物を楽しく便利にする取り組みを進めている。b8ta Japanと協業することで、当社のPB商品をはじめ、新商品を展示し、お客様が手に触れ、体験し、購入できる場を創造していく。b8taに期間限定で出店することで、カインズが出店していない都心部へ出店できる利点があり、当社商品の都心部での認知度が高まる効果がある。逆に郊外にある当社の大型店でb8taコーナーを作り、ベンチャー企業などの革新的な商品を陳列することも検討している。

―― 衣食住の小売りなどの各種サービスを組み合わせた、複合型商業施設「くみまちモール」に取り組んでいます。
 高家 群馬県前橋市や埼玉県新座市ですでに開業している。さらに埼玉県羽生市では、住友商事と羽生市岩瀬土地区画整理組合が複合開発した「愛藍タウン」に、ベルクさんとともに出店している。ユニクロさんも入居し、衣食住の小売りサービスが揃っている。近隣には、羽生総合病院や短期大学が立地し、医療・教育などを1カ所に合わせた拠点になりつつある。住民の高齢化も進んでいるので、その対策として交通などの移動手段、商品の配達サービスなどの地域密着サービスの取り込みなども議論している。HCは災害避難拠点にもなりうる。このような小売りの枠を超えた取り組みが、今後の事業の柱として重要になると考えている。

―― くみまちモールの需要は高まりそうです。
 高家 羽生市は人口約5万5000人の都市で、同様の規模の街で住民の高齢化による様々な課題への対応から、街をコンパクトにまとめたい需要は日本中で増えていくと思う。くみまちモールでは、当社およびグループのベイシアが主体となり、地域密着型の街づくりの進化をお手伝いしたいと考えている。ベイシアグループを結集するうえでも良い機会になりうる。当社は、商品カテゴリーが広く、年間1億4000万~1億5000万人のポスレジを通過するデータを財産に、小売りだけではなく地域密着サービスに広げていきたい。

―― 「食」や「衣」の事業分野をどう考えますか。
 高家 食分野も大事で小売りのキーカテゴリー分野である。加工食品や、飲料はすでに販売している。生鮮食品は扱っていないものの、ベイシアが販売しており、くみまちモールでみられるように、今後連携を強化していきたい。衣料分野は、ベイシアグループでは、ワークマンが扱っている。ワーキングウェアが主体であったが、機能性や女性の視点を商品開発に反映した「ワークマンプラス」が大人気であることから、同店とカインズが隣り合って出店することも将来はあっても良いと考える。


(聞き手・編集長 松本顕介、笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2365号(2020年10月6日)(5面)

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