総選挙を目前に控え、にわかに日本が騒がしくなった11月、アメリカではオバマ大統領が再選を果たし、中国では次期国家主席、習近平体制が発足した。
韓国でも、来る12月19日に大統領選挙が行われる。5年ごとに行われる政治ビッグイベントに、有力候補3人の支持率が拮抗する選挙戦が繰り広げられている。
中でも、党内競争を経て存在感を増す文在寅(ムン・ジェイン)民主統合党候補の躍進が著しい。それまでは与党セヌリ党の朴槿恵(パク・グンヘ)候補と無所属の安哲秀(アン・チョルス)候補がレースを牽引していた。
この傾向には幾つか理由がある。まず朴氏は、長年軍事独裁を続けた父親の故朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領に対する歴史的な功罪論争が重荷になっている。また、原則に忠実というイメージが強い反面、頑迷さによる意思疎通の難しさが常に指摘されている。さらには、側近らの政治スキャンダルや不祥事が相次ぎ、支持率を次第に下げている。
韓国は権力が一点に集中する大統領制であるがゆえに、一貫性のある国家プロジェクトを推進できる長所があるが、不正な政治資金や財閥企業からの献金といったスキャンダルが絶えないという短所も抱えている。
一方、安氏の場合、政党に所属しない政治ビギナーであるだけに、経験不足が指摘されている。また、清廉さや革新的なイメージとは裏腹に、本人所有の不動産売買時に実際の取引価格より安い価格を記載した契約書を作成していたことが明らかになり、大統領候補には相応しくないと非難されている。何より、安氏の選挙陣営は急ごしらえで、政治の素人集団という認識を払拭できていないのが、大きな課題だ。
これに対して文氏は、故盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領に最も近い側近だったというレッテルが不利に作用している。多くの国民は2008年、盧政権に対する不満の反動で現職の李明博(イ・ミョンバク)政権を誕生させた経緯があるからだ。
だが、逆説的には当時の大統領の側近として強靭な権力を持っていたにもかかわらず、政敵の攻撃対象になるような不正がなかった文氏の人物像こそ、現状の支持率アップにつながっていると言え、野党陣営が選挙に勝利するためには、文氏と安氏の候補一本化が不可欠とされている。
ただし、韓国国民は連日のテレビ、新聞の大統領選挙一色という有様に不満を募らせている。政治への関心が高い韓国人だが、洪水のような大統領選挙関連ニュースに飽きつつ、早く終わってほしいという声も聞こえてくる。
3候補の肝心の経済政策は、大手財閥企業の不公正行為の規制、中小企業育成の支援という総論は酷似している。いわゆる「経済民主化」という政策だ。特に、3候補揃って「共生」を打ち出しており、格差社会が深刻化する現状を打開するための公約としてアピールしている。
文氏は、国家が強制的にでも大手財閥企業による街商圏(在来市場など)を蚕食できないよう規制し、経済成長に伴う分配を強調。朴氏もスーパーを、法律で容易に強制できない領域をうまく調整すべきだとした。安氏の場合は、基本的には大手財閥企業の不公正取引行為の規制などに共感するものの、「中期的な自生力の確保」を優先している。
このような3候補の経済公約を要約してみると、「庶民商圏の保護」「不公正取引の規制」などを大々的に訴えていることから、大多数の民衆にとっては非常に期待できる大統領選挙になることは間違いなさそうだ。