9月13~15日まで東京ビッグサイトで開催された「サイン&ディスプレイショウ 2012」へ足を運んだ。同展示会では、大判対応印刷機(プリンター)によるグラフィックスポスター型の看板表示が存在感を示す。今年は、幅64インチ(160cm)の大判対応と、フィルムや紙媒体以外の木やガラスにも印刷する紫外線(UV)対応の機種を多くの企業が技術披露した。昨年は東日本大震災により、華美な広告や看板を自粛する動きが広がったが、今年は看板業界が活気を取り戻している。
溶剤系印刷機で世界市場首位(占有率は60~70%)のローランド ディージー(株)(浜松市西区)は、最大出力幅64インチの大判インクジェットプリンターを新たに製品化した。インクにライトブラック(灰色)を加えた合計9色を用意し、最大解像度は1440dpi(dot per inch)。灰色や光沢を印刷し、肌や髪の毛の滑らかさまで細かく表現する。
「ここまで細かい印刷表現が必要なのか」「化粧品会社が要求するのか」と説明員に尋ねると、『化粧品会社に限らず、すべての業種から求められている。家庭で使う水溶性インク対応のプリンターが、写真印刷のために高精細化し、一般消費者の目が印刷技術に対して肥えている。その肥えた目で、仕事で使う溶剤系プリンターの表現技術にも同水準を要求するため、屋外でも使える企業用広告のプリンターが高精細化へ引っ張られているのが現実だ』とのこと。
展示会ではこのほかに、日本市場で首位と目される(株)ミマキエンジニアリング(長野県東御市)が、LED UVにより幅64インチの媒体を何でも印刷する機種を、60m²/時の速度で技術披露した。CMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の4色に、白による下打ちを加えている。武藤工業(株)(東京都世田谷区)は、バイオマスを50%含むインクに白色を加えた64インチ対応の機種を11月に市場投入することを明らかにし、また切断用のカッティングプロッターの復活販売開始を記念して、印刷機とのセットで99万8000円、118万円のキャンペーン販売を11月末まで行っている。富士フイルムグラフィックシステムズ(株)(東京都千代田区)は、幅16インチ、厚さ13mmの媒体を20m²/時で印刷するLED UVプリンターを10月に発売する旨を明らかにした。
カーラッピングの実演
(セイコーアイ・インフォテックのブース)
(株)セイコーアイ・インフォテック(千葉市美浜区)は、蛍光色を印刷する機種を製品化し、看板業界に提案した。同社は、自動車に装飾フィルムを貼り付けるカーラッピングを実演した。日本ヒューレットパッカード(株)(東京都江東区)は、紙、フィルムのほか、多くの種類の布へ水溶性インクで印刷できる技術を披露した。幅104インチ(264cm)まで対応する。
テレビを代表とする家電製品では、世界市場で劣勢に立たされている日本企業だが、大型印刷機製造業はまだまだ元気で、世界市場を先導している。この優位をできる限り長く続けて欲しいものだ。最近の広告手法は、デジタルサイネージによる動画映像が躍動感で注目されるが、屋外広告では高精細な大型静止画によるグラフィックス広告が落ち着いた迫力の存在感を示している。その需要は大きい。
鮮やかなグラフィックス広告