商業施設新聞
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No.379


大塚 岳史

2012/9/11

久々に訪れた有栖川宮記念公園はセミの鳴き声で街の喧騒がかき消されていた
久々に訪れた有栖川宮記念公園はセミの鳴き声で街の喧騒がかき消されていた
 出無精(デブ性)な外観ながら、実は旅好きである。しかし、飛行機は嫌いなので電車や車を利用しての国内旅行が専門。山好きの父親に2歳ごろから登山へ連れて行かれたそうだが、話を聞いたり、アルバムを眺めて確認するだけで、まったく記憶には残っていない。記憶に残っている最初の旅は?と考えてみると、距離の長短は別にして、小学校1年生の時に行った徒歩遠足になるようだ。

 当時、東京タワーを見上げるような所に住んでいたので、徒歩遠足で向かったのは東京・南麻布にある「有栖川宮記念公園」。家族以外と出かけた最初の旅行ということもあり、友達としゃべりながら、先生に怒られながら、楽しく歩いたことを思い出す。名前は忘れても、今でも鮮明に覚えている顔もある。
 しかし、何より印象に残っているのは漢字も知らない小学生ゆえに、「アリス川」だと思い込み、友人たちと“不思議の国のアリス”をモチーフにした公園だと思い込んでいたことだ。同じクラスの女の子は、公園の中を懸命になってアリスを探していた。

 今は、プライベートだけではなく、記者として取材で近郊から地方都市まで様々な街に出かける。時間がある時には、駅の東西口もしくは南北口の両方を必ず見て、地図を頭に描きながら目で見る風景をそれに重ね合わせていく。私にとって、楽しく、そして今後のためになる大切な作業である。
 地方都市の場合は、駅と中心市街地が離れている場合があるので、徒歩なり、バスなりで時間の許す限り中心市街地を訪れる。この時も、地図を頭に描き、大きな施設や特徴ある建物、そして道路を曲がる度に目印を刻み込んでいく。

 これをプライベートな旅行でも自然とやっているため、地域のまとめをしたり、大型商業施設の計画が浮上した時に、街がどのようになっていくかが想像しやすく、取材に幅を持たせられる。小さなことの積み重ねだが、街を理解するのに最も有効な手段だと自負している。頻繁ではないが、郊外型のショッピングセンターを訪れる時も、また違った醍醐味がある。

 そして、久々に訪れた街を目にした時に、その変化や、逆に変わらない様を感じることができるのも楽しみの1つだ。商業施設ばかりに目が奪われるのは職業病の一種だろうが、こちらからの一方的な街との触れ合いは、どこか新しい人と出会ったり、懐かしい人と再会した時の気持ちに通じるものがある。やはり、街は生きているのだ。

 先日、都立中央図書館で調べ物をするため、30年ぶりに有栖川宮記念公園を訪れた。公園がそのままなのか、変わったのかは分からなかったが、友人が池に落ちた所、お弁当を食べた場所はすぐに頭に浮かんできた。東京メトロ・広尾駅側から公園内を歩きながら、束の間のタイムトラベルを満喫した。
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