商業施設新聞
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No.1064

活況呈するデパ地下


岡田 光

2026/7/14

 本紙2026年6月2号から『デパ地下最前線 関西・中部編』と題し、5回にわたって連載企画を進めた。25年秋に開かれた某百貨店の内覧会で、取材対応者から「来年はデパ地下が面白くなるよ」と聞き、それをきっかけに始めた連載企画だったが、終わってみるとデパ地下という世界の奥の深さを感じる。“地下で食品を売る場=デパ地下”、その一言ではとても言い表せない、百貨店各社が英知を結集した売り場であると肌で感じた。

 26年に入ってデパ地下の改装に関するニュースが相次いだ。関西エリアでは「大丸梅田店」が地下の食品フロアを改装。2段階に分けて進め、第1弾でできたてスイーツゾーン、第2弾ではカフェ&ベーカリーゾーンを新設した。「あべのハルカス近鉄本店」はウイング館地下2階の惣菜売り場を改装し、新しいスタイルのデリ惣菜を中心に、全国初出店や百貨店初登場のブランドを集めた。

「大丸梅田店」に新設されたカフェ&ベーカリーゾーン
「大丸梅田店」に新設されたカフェ&ベーカリーゾーン
 中部エリアでも「ジェイアール名古屋タカシマヤ」がデパ地下フロアの改装を段階的に実施。和洋酒売り場を一新し、洋菓子売り場を刷新している。最近は「大丸福岡天神店」や「大丸神戸店」のほか、「伊勢丹新宿店」や「日本橋三越本店」でもデパ地下のリニューアルオープンを発表しており、百貨店各社が行うデパ地下への投資にテナントも注目している。なぜ、百貨店各社はデパ地下への投資を進めるのか、それは百貨店側の事情と、利用客側の事情がある。

 百貨店側の事情としては、他店との差別化を図る施策として、すぐにでも取り組め、効果が出やすい点がある。百貨店が他店との差別化を図るうえで注力するカテゴリーとして、①ラグジュアリーブランドを含む特選ブティック、②デパコスメ、③デパ地下の3つが挙げられる。しかし、①は海外ブランドが多数を占めており、本国の意向が優先されるため、融通が利かないのが実情だ。②も海外ブランドが増えており、難しさもある。結果、①と②に関しては対応が困難で、百貨店の同質化を生み出しているという声がある。その点、③はエリア初出店や同店限定品など、百貨店自らコントロールしやすいカテゴリーであり、百貨店の強みである編集力も発揮できる。百貨店各社がデパ地下の改装を相次いで実施するのは、デパ地下が差別化しやすいカテゴリーとして定着しつつあることを意味している。

 利用客側としては、百貨店の主要顧客である50~60代の購買行動が大きく影響しているという事情がある。第2次ベビーブーム世代以上の彼らは子育てが一段落し、お金と時間に余裕が出て、百貨店に足を運ぶことも少なくない。低層階の化粧品や特選ブティックを訪れる人もいるが、この世代が圧倒的に多く訪れるのがデパ地下。生鮮や菓子のショーケースを見て、「今夜は何を食べようか?」や「お土産は何が良いかな?」と考え込む姿が多く見られる。

 そんな彼らの中にもこだわりがあって、デパ地下ではここ数年、和菓子よりも洋菓子が売れているとよく囁かれる。それは、「主要顧客である50~60代の男女が、洋菓子に憧れを感じているから」というのが理由だ。子どもの時に食べられなかった洋菓子への思いが、今の購買行動につながっている。現に、大丸梅田店では25年上期の菓子ブランドの売り上げが18年比26.7%増と増え、その中でも洋菓子は同35.8%増と高い伸びを示した。デパ地下を差別化の武器として強化する百貨店側と、デパ地下に憧れを追い求める利用客側。この2者の思惑が一致して、デパ地下への投資は今日も続いている。
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