商業施設新聞
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第228回

アパグループ 代表 元谷外志雄氏


10万室の次期拡大戦略をスタート
寡占化一番乗りへ全力

2020/4/28

アパグループ 代表 元谷外志雄氏
 ホテル業界のトップ勢力として躍進を続けるアパグループ(東京本社=東京都港区赤坂3-2-3、Tel.03-5570-2111)。同社は2020年4月から次の拡大戦略として「第三次頂上戦略(SUMMIT5-Ⅲ)」をスタートし、業界№1としての確固たる地位を確立する目標だ。同社の元谷外志雄代表に今後の事業展開などについて伺った。

 ―― 新型コロナウイルスの影響について。
 元谷 かねて観光大国化における一番のリスクはパンデミックであるとの認識を持っていた。過去にSARSが大流行した時に観光業界は大きな打撃を受けているし、現在、世界規模の問題となっている新型コロナウイルスにおいても大きな影響が出ている。
 ただ、当社の収益力は、ホテル事業の利益率が30%近くあり、業界では世界一とも言える断トツの№1となっているため多少景気が落ち込んでも大きな痛手にはならない。幸いアパホテルは、欧米系のインバウンド需要が多く、中国からの団体旅行者はいないため、同業他社と比べると直接的なダメージは限定的である。仮に間接的な影響があったとしても、効率の良い運営ノウハウと強い財務体質があるため経営に大きな影響を与えることはないと考えている。

19年9月に開業した日本最大級のアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉
19年9月に開業した日本最大級の
アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉
 ―― 中期経営計画である第二次頂上戦略の進捗状況は。
 元谷 当社では15年4月から東京都心から地方の中核都市へと展開を広げ、20年3月末までに客室数10万室を目標とする第二次頂上戦略(SUMMIT5-Ⅱ)を推進している。すでに3月13日時点においてアパホテルネットワークで618ホテル、9万8174室となっており、客室数の10万室はほぼ達成できる見通しだ。この間、都心にいながらリゾート気分が味わえ、滞在そのものが目的となる「アーバンリゾートホテル」にも注力した。館内に複数のレストラン、大浴場、露天風呂、屋外温水プール、フィットネスなどを完備した国内最大級の「アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉」(2311室)や、西日本最大級となる「アパホテル&リゾート〈御堂筋本町駅タワー〉」(913室)が昨年開業した。今年の4月24日には都内最大級となる「アパホテル&リゾート〈両国駅タワー〉」(1111室)の開業も控えている。今後も高級化・大型化によるブランドアップ戦略を推進し、選ばれるホテルになるよう進化させていく方針だ。

 ―― 新都市型ホテルとして常にホテルを進化させていますね。
 元谷 アパホテルでは、ただ単に“スペース”を売るホテルではなく、“満足”を売るホテルとして、高品質・高機能・環境対応型を基本理念とする「新都市型ホテル」を展開している。客室をあえてコンパクトに造ることでCO2の排出量を一般的な都市ホテルの3分の1に減らし、環境にも配慮している。
 最近では、テレビ画面をアパデジタルインフォメーションとして多機能化しており、ホテルの館内案内や、精度の高い人流センサーを用いた大浴場の混雑状況の表示、テレビリモコンでチェックアウト時間の延長手続きができるセルフ延長機能などを導入し、宿泊客のニーズに対応している。

 ―― 次期中期経営計画について。
 元谷 20年4月からは次の5カ年計画である第三次頂上戦略(SUMMIT5-Ⅲ)をスタートする。第二次頂上戦略では、海外やパートナーホテルを含めたアパホテルネットワークで客室数10万室を計画したが、次期経営計画ではアパホテルの屋号を持つ直営、FCホテルだけで現在の7万室規模から10万室を目標としている。やはり東京は需要があるため、引き続き新規の直営ホテルは東京エリアに集中し、25年に万博の開催が決定した大阪や京都、福岡など大都市圏への展開も強化する。極端な話をすれば、東京都内にある地下鉄の出口ごとに作っても良いのではないかと考えている。

 ―― 中・長期の展望について。
 元谷 すでに業界では客室数増加による第一次オーバーホテル現象が発生しているが、東京五輪開催後の数年の間は端境期として需要減退によるオーバーホテル現象に見舞われ、さらに大きな第二次オーバーホテル現象が起こると想定している。東京五輪開催で期待していた矢先に新型コロナウイルスの問題が発生したことで、業界全体が厳しい状況になったのは事実だ。
 ただ、長期的には観光大国化の流れにより成長軌道に乗ると見ている。オーバーホテル現象や今回の新型コロナウイルスの影響で経営不振に陥ったホテルが出てくるかもしれないが、それをM&Aへのチャンスと捉え、積極的に拡大戦略を推進する構えだ。ホテル業界は、現在の百花繚乱の時代から寡占化、独占化の流れへと移行しており、まずはマーケットシェア20%を獲得し、寡占化一番乗りを目指していきたい。

(聞き手・永松茂和記者)
※商業施設新聞2339号(2020年3月31日)(6面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.55

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