東海旅客鉄道(株)(JR東海)の連結子会社である名古屋ステーション開発(株)(名古屋市中村区名駅1-1-3、Tel.052-856-3455)は、名古屋駅構内の店舗を筆頭に、商業施設「ASTY(アスティ)」や駅ビルを展開している。これらの施設の近況や、今後の開発計画について、同社の営業部 企画開発課 課長の家接順也氏に話を聞いた。
―― 貴社が管理・運営する商業施設について。
家接 当社は名古屋駅構内の店舗を筆頭に、商業施設「アスティ」や駅ビルを展開。愛知県、岐阜県、三重県の東海3県において、名古屋駅も含め、計14駅で商業施設を運営する。総店舗面積は約8200坪で、店舗数は約200店を数える。
アスティは東海道本線の尾張一宮駅、岐阜駅、三河安城駅、大垣駅の4駅と、中央本線では鶴舞駅、大曽根駅、春日井駅、高蔵寺駅、多治見駅の5駅、そして紀勢本線は松阪駅で運営している。春日井駅は駅舎の橋上化に合わせ、「アスティ春日井」として店舗を設置。松阪駅は一部既存の店舗を引き継ぎ、新たに当社が運営することになり、「アスティ松阪」として開業させた。
駅ビルは大垣駅と津駅の2駅で展開しており、大垣駅では「アピオ大垣」のリニューアルを行い、「アスティ大垣」として再スタートを切っている。なお、これらの施設以外にも、勝川駅では「マックスバリュエクスプレス勝川駅店」が出店する高架下商業施設を、安城駅では2店が出店する「安城テルミナ」を管理・運営している。
―― アスティの近況を。
家接 以前は駅を乗降されるお客様が中心であったが、最近は駅周辺にお住まいのお客様にも来館していただけるようになった。例えば、八百屋「カネ井青果」は、アスティ岐阜やアスティ大垣に出店しているが、いずれの店舗も非常に好評だ。これまでアスティでは駐車場が必要になることもあり、スーパーマーケットの誘致を積極的に進めてこなかったが、最近は自転車や徒歩で来館するお客様も増えており、こうした生鮮品を取り扱う店舗は重宝される。
―― 4月にリニューアルオープンした「アスティ大垣」について。
4月25日にリニューアルオープンした
「アスティ大垣」
家接 旧アピオ大垣は1階から6階までテナントが入居し、各フロアに書店や居酒屋が混在する商業施設であった。設備の老朽化が進んだこともあり、テナントの入れ替えを含めて、同施設の改装工事に着手した。
改装前は、アルコールを提供する店舗は2店しかなかったため、1階に飲食ゾーンを設けて、「ビストロ酒場 ASUROKU」や「世界の山ちゃん」を誘致。2階は駅の改札と直結するため、デイリーゾーンとして「成城石井」や「カネ井青果」などを配置した。そして、3階は目的型の店舗として100円ショップやエステなどを配置。リニューアルオープン当日は多くのお客様に足を運んでいただいて、大変嬉しく思っている。
―― 津駅の駅ビルは。
家接 「津チャム」は2014年7月に全面改装を実施しており、現在は4層構成で、地元の土産店や飲食店がテナントとして入居している。特に、2階はアパレルショップ中心の構成を、飲食店中心の構成に変更しており、オフィスワーカーを中心に昼も夜も盛況が続く。
―― 名古屋駅構内の店舗は。
家接 飲食ゾーンとして「名古屋うまいもん通り」が3カ所、「驛麺通り」が1カ所の計4カ所を営業中で、とりわけ名古屋うまいもん通りの太閤通口と広小路口は「なごやめし」の店舗を中心に売り上げが順調に推移している。広小路口は17年12月にリニューアルオープンした商業施設であるが、近隣に「JRゲートタワー」が完成したことで、オフィスワーカーや買い物のお客様、さらにはインバウンドの方々の通行量が増え、それが好影響をもたらしている。
―― 今後の開発計画について。
家接 名古屋では27年の開業を目指して、リニア中央新幹線の整備が進められている。名古屋へのアクセスがより良くなるため、名古屋駅やその近郊駅の商業施設をさらにブラッシュアップしていきたい。三河安城駅の「アスティ三河安城」で設備更新と合わせたリニューアル工事を実施中だ。同駅の周辺でも、リニアの開通を見据えて、地元行政がマンションや公園の整備を積極的に進めている。これにより、ニューファミリーの増加を期待している。リニューアルオープンは19年夏ごろを予定している。
(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞230号(2019年6月25日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.303