JR西日本のグループ会社である富山ターミナルビル(株)は、富山駅前で「マリエとやま」など複数の商業施設を展開する。新幹線開通による旅行者の需要を掴んだだけでなく、地元客の利用も増加しており、施設の業績は好調に推移している。今後、複数の開発を控えており、さらなる躍進が期待される。同社取締役営業部長兼企画部長の田村智治氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
田村 富山駅の南側で3つの商業施設を展開する。「マリエとやま(以下、マリエ)」は、駅に隣接する商業ビルで、ファッションに加えて「好日山荘」などのアウトドア、「無印良品」などの雑貨、コスメ、飲食など70店が出店している。利用者は地元客が多い。別館として「マリエ2」も展開しており、こちらは飲食店とサービス店の2店および貸室で構成する。
2015年3月には、北陸新幹線富山駅の開通とともに「きときと市場 とやマルシェ(以下、とやマルシェ)」をオープンした。新幹線高架下に位置し、地元の食物販、飲食店や土産店など38店を集積し、観光客や出張客など旅行者が目立つ。
―― 新幹線により街の賑わいが増したと思いますが、業績はいかがですか。
田村 とやマルシェは初年度となる15年度、26.8億円を売り上げて好調なスタートを切った。マリエは同時期にリニューアルして「スターバックス」や輸入食品などを扱う「ジュピター」などを導入したこともあって、54.4億円(マリエ2含む)と高い売り上げを記録できた。
とやマルシェは17年度、過去最高の売り上げだったが、今年度はそれを上回りそうだ。マリエと合わせて15年度を上回るペースで推移している。
―― 売り上げが伸びている要因は何ですか。
田村 とやマルシェでは地元客を取り込めるようになったことが大きい。実はこれは開発当時から狙っていたこと。とやマルシェは地元の食物販や、お土産店が中心のため、旅行者の利用が多い。ただ、雪の影響もあって富山県の観光客やコンベンション参加者は春~秋に集中するため、冬場は旅行者に頼らない運営が求められる。そのため開業当時から地元客も楽しめる商品を揃えており、認知度のアップとともに数字に表れるようになった。
マリエで売り上げ増の要因になっているのが、インバウンドの取り込みだ。富山でも15年ごろから訪日客が増えている。また、店舗の入れ替えも逐次行っており、地元客が増えていることも挙げられる。合わせて、ポイントカード「エムプラスカード」による利用者のリピートが進んでいる実感もある。これはとやマルシェにも言えることだろう。
―― 現在、複数の開発を控えています。
田村 富山駅ではあいの風とやま鉄道(株)の高架化が進んでおり、19年3月に工事が完了する。我々は高架下の商業エリアの事業者に選定されており、3エリアを開発する。
東エリアの1346m²は、とやマルシェと隣接し、地元をキーワードにした飲食店を複数誘致したい。とやマルシェも地元をキーワードにした食関連の店が目立つので、一体的なエリアになるだろう。中央エリアの194m²はセブン―イレブンでの出店が決まっている。西エリアの874m²は路面電車の待合スペースと隣接することもあってナショナルチェーンの飲食店を複数導入する。いずれも20年4月のオープンを目指す。
―― 富山駅前の開発事業にも参画します。
田村 富山駅南西街区市有地活用事業者として、当社を含むJR西日本グループが選定された。JR西日本の土地を含めた約7930m²に商業施設やハイクオリティなホテルを整備し、商業施設の運営管理は当社が担当する。開業は22年春を予定する。
―― 商業施設の方向性は。
田村 低層部の1~4階が商業施設にあたり、物販、飲食、サービス店など約60店を導入する。地元客をメーンターゲットにしつつ、駅や富山市中心部に足りない業種を補完したいと思っている。例えばスーパーマーケット。駅周辺に一定規模のスーパーはなく、駅周辺でマンションの開発が増えていることもあって必要な機能だろう。新施設の開業とともにマリエも22年度中に改装する予定で、一層集客力を増やしたい。
―― 富山市のポテンシャルについて。
田村 中心部でホテルの開発、マンション開発が目立つ。また、20年春には富山駅の北側と南側で分断されていた路面電車がつながり、南北通路もできる。駅南北の人の往来が増えるとみられ、当社としても駅周辺全体としても大きなチャンスだ。
一方で、郊外には大型SCがあるし、金沢駅には新幹線で20分ほどで行ける。競争を勝ち抜くために、当社だけでなく富山市全体で、観光客増などのチャンスを活かしていくことが求められるだろう。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2281号(2019年2月5日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.290