商業施設新聞
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第134回

西日本鉄道(株) ホテル事業本部副本部長 加藤正幸氏


25年までに40店体制に拡大へ
グランドホテルの改装も検討

2018/6/19

西日本鉄道(株) ホテル事業本部副本部長 加藤正幸氏
 西日本鉄道(株)(福岡市中央区天神1-11-17、Tel.092-734-1217)は、福岡市内を中心に国内外で4ブランド20店のホテルを全国展開している。国内では都心の一等地を中心に店舗数を拡大する一方、海外展開も堅調に進めており、2025年度までに店舗数を倍増したい考えだ。今後の展開について、同社ホテル事業本部副本部長の加藤正幸氏に話を聞いた。

―― 展開しているブランドを教えてください。
 加藤 当社では、4つのホテルブランドを展開している。1つ目は、1969年に開業したフルサービス型の「西鉄グランドホテル」で、当社最上位のブランドである。
 そして宿泊機能に特化したホテルを「ソラリア」「西鉄イン」「クルーム」の3ブランドで展開している。
 「ソラリア」シリーズは、福岡(天神)駅の再開発時にエリアブランドとしてスタートしたブランドを、宿泊主体型ホテルの上級ブランドに活用したもので、シティホテルタイプの福岡に始まり銀座やソウル、京都など、ビジネス・観光両面での利用が期待できるエリアに厳選して出店している。ダブルルームやツインルームの割合が高く、客室が広いのも特徴だ。
 事業拡大のきっかけになった「西鉄イン」シリーズは、「快適かつリーズナブルに泊まれる場所を提供する」というコンセプトで99年からスタートした。平均単価は7000~8000円で、ビジネスパーソンの出張ニーズに応えたホテルブランドである。
 そして16年に開業したのが「イン」と「ソラリア」の中間帯となる新ブランド「クルーム」だ。女性や観光目的のお客様の増加など、宿泊ニーズの多様化に対応するために「西鉄イン博多」をリブランドする形で展開を始めた。「自分の家のようにくつろげるホテル」をコンセプトに、客室のリネンやアメニティにこだわり、新設したラウンジではドリンクなどを準備。リビングのように過ごしていただける空間を提供し、感度の高い女性の利用を増やしている。19年1月には2号店として「(仮称)西鉄ホテルクルーム名古屋」を出店する。

―― ホテルの状況は。
 加藤 当社が運営するホテルの平均稼働率は80%以上で推移している。平均単価も17年度は客室リニューアルの効果もあって、16年度比で3~5%上昇した。需要に応じてこまめに単価を設定し、売上最大化に努めている。

―― 訪日客については。
 加藤 訪日客はシングルルームよりも2~3人で利用できるダブルルームやツインルームの需要が高く、当社においても広い客室の多いホテルを中心に利用者を増やしている。
 シティホテルの「ソラリア西鉄ホテル福岡」や「西鉄グランドホテル」では35%が訪日客で、宿泊主体型のホテルでも平均して15%強と年々増加傾向だ。

―― 17年には京都にも開業しましたね。
 加藤 4月に開業した「ソラリア西鉄ホテル京都プレミア三条鴨川」は、抜群のアクセス性とロケーションを兼ね備えており、プレミアム性の高いホテルづくりを進めた結果、初年度から高稼働率を実現している。

―― 出店立地と店舗数の目標は。
 加藤 これまでの年1店ペースの出店を加速し、25年までに40店の展開を目指す。国内では全国の政令指定都市や地方中核都市の、駅前や繁華街に絞って出店したい。マーケットボリュームの大きい大阪や京都では複数出店を目指す。
 海外も韓国を皮切りに、20年春に開業予定のタイ・バンコク、23年夏開業予定の台湾・台北まで出店が決まっているが、国内と同様に日本人のビジネス・観光需要が見込める東南アジア圏を中心に展開を進めたい。

―― 今後の取り組みは。
 加藤 16年に発表した第14次中期経営計画(16~18年度)で、Sクラスホテルの開発を具体策に掲げた。福岡では「天神ビッグバン」という中心部での再開発の動きが進む中、当社でも福岡の街づくりに貢献するためにも様々な検討を進めている。その1つが来年50周年を迎える「西鉄グランドホテル」のあり方であり、周辺の開発動向も視野に入れながら福岡の街にふさわしい計画を策定したい。
 お客様へのサービス向上のための施策にも取り組んでいる。例えば、宿泊代金の割引や客室のアップグレードなどポイントカードの特典を充実した。訪日観光客向けには持ち出し可能なスマートフォンを各客室に設置するなど、利便性の向上に努めている。このようなオペレーション磨き上げの取り組みと新規出店の加速を進めることで競争力を高め、ホテルグループ全体の価値向上につなげたい。

(聞き手・ソウル支局長 嚴在漢/北田啓貴記者)
※商業施設新聞2245号(2018年5月22日)(7面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.24

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