総合不動産会社の東京建物(株)は、オフィスビル、住宅事業に加え都市型コンパクト商業施設、都市型ホテルなど商業施設の開発を積極化している。今後の事業展開について商業施設事業部長の杉瀬一樹氏に伺った。
―― 都市型の商業施設やホテル開発が活発化している。
杉瀬 引き続き大型の施設開発は継続しているが、大規模で長期にわたり開発する案件と、比較的短期間で収益を上げる事業スキームに分けて展開している。商業施設事業部の1事業部内でホテル、商業施設など多様な用途に対応できるため、事業のスピード展開が可能である。
―― ホテル事業の展開について。
杉瀬 昨今のホテル需要の高まりや投資家ニーズを受け、都市型の宿泊特化型ホテルの開発を推進しており、2017年10月には、六本木エリアの中心に第1号案件となる「カンデオホテルズ東京六本木」を開業した。客室数は149室で、1階にはニューヨークで人気のステーキハウスである「エンパイアステーキハウス」が日本で初出店し、最上階にはスカイスパを設けるなど一味違った特色あるホテルであり、開業以降、非常に好調に推移している。
―― 今後の開発は。
杉瀬 まだ1号店が稼働した段階であるが、18年秋には、浅草で藤田観光(株)が運営する125室の「(仮称)ホテルグレイスリー浅草」、銀座2丁目でソラーレホテルズアンドリゾーツ(株)が運営する客室数182室の「(仮称)銀座2丁目プロジェクト」、19年春には大阪の心斎橋で(株)イシン・ホテルズグループが運営する客室数309室の「(仮称)ザ・ビー大阪心斎橋」、夏にJR大宮駅西口で(株)カンデオ・ホスピタリティが運営する客室数321室の「(仮称)大宮駅西口ホテルプロジェクト」が相次いで開業する予定だ。さらに京都でも2つのプロジェクトを手がけており、現在、これら7プロジェクトを推進している。その立地特性に合う最適なオペレーターに運営をお願いしているのも特徴であり、差別化につながっていると見ている。今後も年2棟ペースの開発を進める方針だ。
―― 都市型商業施設の開発も積極的。
杉瀬 立地にもよるがホテル事業の場合は、客室数100室以上、建物規模1000坪以上が基準のひとつとなる。都市型商業施設の場合、テナントが出店しやすい規模となる50~100坪程度の用地を活用して飲食テナントを主体としたビル開発を進めている。すでに「ファンデス」シリーズとして15年8月にJR水道橋駅近くに「ファンデス水道橋」、16年11月には東京メトロ神保町駅近くに「ファンデス神保町」、17年7月にはJR上野駅近くに飲食テナント10店を集めた「ファンデス上野」を開業した。上野は、東京初出店2店、新業態2店のほか、飲食と親和性の高いダーツバーなども誘致し、魅力ある施設となっている。
次の計画として銀座、五反田で開発を進めており、19年夏~秋のオープンを予定している。主要都心部では昼間人口が多いにもかかわらず飲食施設が少ないエリアが多数あり、年2棟ペースの開発を推進する方針だ。福岡の天神でも開発中であるが、立地や規模からファンデスとはせずに、新たなカテゴリーとする。
―― 大型施設は。
杉瀬 これまでに商業施設では03年に川崎駅前にダイス、06年にJR錦糸町駅前にオリナス、福岡市にヴィオロ、08年に北関東最大級の大型SCであるスマーク伊勢崎を開発し、商業施設を含めた大型ビルでは25のテナントが入居する商業施設「オーテモリ」を有する大手町タワー、東京スクエアガーデン、中野セントラルパークなどの開発を手がけてきた。中でもテナント約185店が入居する大型商業施設のスマーク伊勢崎は今年で10周年を迎えるが、開業以来、毎年対前年売上高を上回り続けており順調だ。お祭りや警察、消防イベントなど地域の要望に応えられるのが要因のひとつとも言える。今年は開業10周年となるため段階的にリニューアルを実施する計画だ。
―― 今後の展開は。
杉瀬 ホテル事業などは、オリンピック需要が一巡した後に失速するのではないかとの声もあるが、インバウンド政策が順調に進み、日本におけるお迎え・おもてなしの体制も一段と整うため、懸念はしていない。幸い、当社には多種多様の情報をお寄せ頂いているほか、1つの組織で様々なソリューションに対応できる体制にあり、スピーディーな事業展開が可能である。この強みを生かし、都市型ホテル事業や都市型コンパクト商業施設事業を積極展開していく方針だ。また、Eコマースの進展などを受け、今後、物流施設開発事業にも積極的に取り組んでいきたい。すでに埼玉県で約1万坪の用地を取得済みで、現在施設計画を進めている。
(聞き手・副編集長 永松茂和)
※商業施設新聞2242号(2018年5月1日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.260