UTACはシンガポールに本社を置く有力OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly&Test)企業の1社だ。アナログ分野の受託組立・テストに強みを持つほか、同業他社に比べてテストの売り上げ比率が高いことも特徴だ。2014年にパナソニックの海外後工程拠点を買収するなど、日本市場でのプレゼンスも高まりつつある。CEOを務めるジョン・ネルソン氏に足元の状況および今後の事業計画について話を聞いた。
―― まずはご略歴から教えて下さい。
ネルソン 私はアイルランド出身で、キャリアのスタートはアナログ・デバイセズ(ADI)からだ。その後、フェアチャイルドに転籍し、そこで初めて後工程分野に携わった。その後、ジェネラルインスツルメンツやファーストシリコンに関わり、02年からはオン・セミコンダクターにCOOとして参加し、三洋半導体の買収にも関わった。12年からUTACのCEOを務めており、今年で6年目になる。
―― これまでのUTACの歩みについて教えて下さい。
ネルソン 当社は1997年に設立され、DRAMの組立・テストのターンキーサービスから市場に参入した。99年には富士通がシンガポールで行っていたDRAM組立事業を買収、03年には中国に工場進出し、05年にUltra社、06年にNS Electronics社を買収し、それぞれ台湾とタイに進出を果たした。さらに10年には中国企業を買収して業容を拡大させたほか、14年にはパナソニックの後工程拠点3カ所を取得した。かつて三洋半導体の買収に関わったことがきっかけで、パナソニックともコネクションができており、UTACに移籍したのちに、海外拠点に関するオファーをもらった。
―― 現在の生産拠点は。
ネルソン 6カ国に9工場を展開している。中国には東莞工場のほか、上海工場も有していたが17年8月に閉鎖した。同工場は生産規模が小さく、中国のローカルOSATと比べてコスト競争力が低く、閉鎖を決めた。同工場の設備は我々の最大拠点であるタイ工場に移設している。
―― 現在の売り上げ規模は。
ネルソン 17年(暦年)売上高は8.75億ドルだ。粗利益率は22%を確保できており、他のOSATと比べて利益率は遜色ないレベルだ。分野別ではアナログが最大セグメントで売り上げ全体の45%を占める。ロジックなど非メモリーが主力だが、メモリーも台湾工場をメーンに展開しており、売り上げの10%程度を構成している。また、テスト比率が高いことも我々の特徴で、売り上げの3分の1程度を占めている。付加価値の高いアナログ・ミックスドシグナル向けのテストを得意としており、本社のあるシンガポールはテスト工程をメーンに展開している。
―― 先端パッケージ分野の取り組みは。
ネルソン 先端パッケージ分野は同業他社も注力している分野であり、我々としては後発として出ていくよりは、得意とするニッチ分野にフォーカスしていきたい。今後もナンバー1プライオリティーはアナログ分野だ。そういった意味ではアナログでよく用いられるWLP(ウエハーレベルパッケージ)分野では、一定の事業規模を築いている。我々のWLP事業はモールド後のプローピングテスト~個片化~テープ&リールまでを担当している。月産2億個の生産能力を有しており、年間売上高でも1.5億~1.7億ドルを達成できている。
―― 18年の見通しは。
ネルソン ビジネス環境によるが、見通しは悪くない。上海工場の閉鎖は利益的にはプラスになり、粗利益率は改善する見通しだ。設備投資は前年を上回る約1.1億ドルを計画し、約6割はタイ工場のアナログ向け組立能力の増強に充てる。残り40%はシンガポールの先端テスト投資や東莞工場のSiPの能力増強に振り分ける予定だ。
―― 今後のM&Aの方向性については。
ネルソン M&Aについては常に考えている。14年に買収したパナソニックの後工程拠点を筆頭に、IDM企業の後工程拠点は、OSATがマネジメントした方が良いと考えている。今後もこういったケースのM&Aは出てくるだろう。それと、我々は現状でプライベート企業であるが、将来的にはIPO(新規株式公開)も含めた資本強化を検討している。OSAT業界は中国系ローカル企業の台頭もあり、ますます競争が厳しくなっている。再度上場することで資金力を高め、競争力を高めていきたい。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2018年3月15日号5面 掲載)
(聞き手・本紙編集部)