商業施設新聞
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第117回

三井不動産(株) 商業施設本部 上席主幹 安達覚氏


日比谷、名古屋、日本橋などで開発
ミクストユースを前面に

2018/2/20

三井不動産(株) 商業施設本部 上席主幹 安達覚氏
 今年、三井不動産(株)は「東京ミッドタウン日比谷」や「(仮称)三井ショッピングパークららぽーと名古屋港明」などの商業施設の開業を予定する。新しい価値観や消費行動が台頭する中で、商業施設開発も新しい一歩を踏み出す。商業施設本部の安達覚氏に聞いた。

―― 「東京ミッドタウン日比谷」の期待から。
 安達 単に“日比谷の商業施設”というよりは、歴史的に芸術文化・エンターテインメントの中心地として時代をリードしてきた街の特性を活かすことを意識した。周辺施設を巻き込んだタウンマネジメント、都心創造の概念として、「東京ミッドタウン」ブランドとした。オフィスビルと商業とのミクストユースに、新たなものを付加することで新しいパワーを生み出す。また、昨今の働き方変革を踏まえて、9階の「スカイロビー」や「スカイガーデン」では、オフィスワーカーが憩い、働き、懇親できるサードプレイスを設けた。
 さらに、同地にあった三信ビルの意匠やデザインを持ち込み、当時の階段やかつてのアーケード空間を再現し、伝統と革新性を融合していく。

―― 名古屋初のららぽーと。新しい形や取り組みは。
 安達 東海3県初のららぽーとであり、力を入れている。東邦ガスの事業用地「みなとアクルス」に商業施設や分譲マンション、東邦ガスの業務施設やエネルギーセンター、バスターミナルなどのミクストユースの街づくりを推進する。様々なテーマの中で商業施設の役割をららぽーとで表現するにあたり、運営が一層重要となる。カギとなるのが敷地内に設ける8000m²の緑地だ。マルシェやフェスを開催し、交流の場とする。

―― 米国で広がるデッドモール。日本への影響は。
 安達 米国とは様々な面で条件が違うので、日本のSCがデッドモール化することはないのではないか。ただ、米国は商業施設トレンドを先取りしている面があるので、そこは要注意。テナントと顧客とのマーケティング、リニューアルやリノベーション、ソフトの仕掛けにより、半歩先の提案力が重要だ。

―― ファッションECの「&モール」は。
 安達 当社のカード会員1000万人の顧客分析をすると、ネットを使った取り寄せなど、消費行動が変わってきている。&モールはバーチャル上のショッピングモールとは違って、リアル店舗との共生型ECモールを目指している。お客様は利便性が高まるし、店舗側は機会ロスを防げ、売り上げ増につながる。

―― 開始から2カ月。
 安達 テナントからも評価をいただいており、手応えを感じている。参画企業200店で、2018年度内に400店を目指す。

―― 「三井アウトレットパーク(MOP)横浜ベイサイド」の建て替え検討など、アウトレットが好調です。
 安達 そのほかにも来年「MOP木更津」3期増床を計画する。建て替え、リニューアルを推進していく。場所は申し上げられないが新規も計画している。

―― 都心商業では宮下公園が貴社としては初めての渋谷エリアでの開発に。
 安達 300mの細長い土地で、エリアの結節点となる場所で面白い。公園をリノベーションして、商業施設とホテルを開発する。日本にこれまでにないミクストユースとなる。渋谷では様々な開発が進行しており、新しい市場も開拓する計画だ。

―― お膝元の日本橋は。
 安達 これまでも「コレド室町」などをはじめとした再開発を進めており、今後も開発が進捗していく長期にわたるプロジェクトとなる。東京駅周辺までのエリアで地元や行政と協議を進めており、リノベーションや建て替えなど当社の「経年優化」をキーワードに推進する。その中で、19年に完成予定の「室町3丁目計画」は日本橋のランドマークになるし、今秋には高島屋を建て替える「日本橋2丁目地区再開発計画」が完成予定で、この2つが完成すると日本橋は大きく変わるだろう。

―― 五輪以降、開発がトーンダウンする懸念は。
 安達 地方の活性化など、多くのテーマがある。日本は東京だけではないし、色々な視点で見ると、五輪で終わるというより、むしろスタートになると思う。

―― 海外での展開は。
 安達 台湾、マレーシア、中国で商業開発を進めている。ららぽーとを台北と上海で、アウトレットはクアラルンプールで増床、台湾・台中で計画している。台湾・林口のアウトレットでは日本から50、60店が出店したが、そこで学んだことを日本に逆輸入する機会も広がっている。

―― 今後の抱負を。
 安達 今後もミクストユース型の街づくりを進めていくことで街に新たな付加価値を生み出していきたい。
 当社は商業施設やオフィス、ホテル、物流施設も自社で開発しており、これらをかけ合わせていくと、多くのパワーを生み出し、お客様にとっても魅力的で個性のあるものができると確信している。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2228号(2018年1月23日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.249

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