野村不動産(株)は、飲食ビルブランド「GEMS」を都内に5施設展開しており、2018年以降、大阪など9棟のGEMSを開業する予定だ。さらには芝浦1丁目計画を筆頭に様々な再開発事業の商業開発も加速する。都市開発事業本部の商業施設事業担当 横山英大氏に今後の商業開発について聞いた。なお横山氏は、グループで商業施設運営を行う(株)ジオアカマツの社長も兼務する。
―― 都市開発本部の役割から。
横山 野村不動産の賃貸事業におけるデベロッパーの位置づけである。当社は住宅部門を柱に事業を拡大してきたが、今後は賃貸部門も成長させていく考えで、商業開発が軸の一つになる。
―― 貴社の商業開発の特徴や強みとは。
横山 後発であるため、ニッチな分野から入った。GEMSが代表例で、GEMSは狭小な商業地に10店程度飲食テナントを集めて、運用資産としてグループREITに売却するといういわば“分譲の賃貸版”で、取得、開発して短期で商品として売却していくのは野村の強みである。
―― 12年に開業したGEMS渋谷が貴社の商業施設シリーズの1号になりました。
横山 GEMS渋谷が軌道に乗ってシリーズ化した。商業施設開発に本腰を入れてやっていくと決めたのは、ちょうどそのころだった。賃料も商業地であればオフィスよりは高く取れる。ただ飲食店は設備など手間はかかる。
―― 「ミラザ」もありますが、この位置づけは。
横山 都市部のマーケット適応型商業ビルで、「ミラザ」型もシリーズ化したい。最近、このタイプの保有物件も増えてきた。
―― 再開発事業にも積極的です。
横山 コンパクトタウンを多数整備するのが会社のひとつの方針。中核都市の駅前に、衣食住をすべてまかなえる複合施設を作っていくもので、得意の住宅にプラスアルファでやってきたことで、再開発への知見を深めてきた。
―― 中期経営計画における商業開発のウエイトは。
横山 25年3月期までに投資額は1兆8000億円を見込む。おおむね半分が分譲型で、半分が賃貸事業となり、このうち2~3割が商業開発向けとなるのではないか。
―― 計画数としてはどのくらいありますか。
横山 推進中が32物件ある。そのうちGEMSが約10件、ミラザタイプを4件ほど抱える。再開発案件は、協議中まで含めるとさらに増える。ショッピングモール型もある。
―― ショッピングモールのタイプは。
横山 RSC型は、首都圏の駅近くのものを考えている。NSC型については多数展開を想定しており、多少郊外でも競合のいない需要の空白地帯なら事業化できる。ただ、どちらかというと、単独型ではなく、駅前再開発の商業ゾーンが中心となるだろう。
―― では再開発案件の場所やエリアは。
横山 武蔵小金井(東京)は、住宅が中心で低層が商業施設となる。外神田はオフィスがメーンとなる予定だ。そのほかに南行徳(千葉)、日吉(横浜)、塚口(兵庫)は駅前で計画する。他に都内では西新宿と西日暮里、日本橋でも計画している。
―― 東芝ビルを建て替える芝浦1丁目計画は。
横山 46階、47階の2棟総延べ55万m²で、超がつく大規模再開発となるが、29年度の竣工で10年以上先となる。再開発に注力しているが、短期で開業できる単独での開発を積極的に行いたい。
―― 人口減少やEコマースが席巻する中で、商業開発は変化していきますか。
横山 人口は確かに減るし、遠くまで車で行く人も減るかもしれないが、日常使いで商業施設にふらっと訪れることは減らないと思う。日本人は買い物すること自体がコト消費になっている部分もあるので、ネットで完結することはないのではないか。さらには、交通の拠点となっているところは簡単に陳腐化しない。
地方都市は仙台や名古屋を見ても、駅前の魅力再発見がカギになっている。ただ、地方都市が難しいのは、駅を拠点に動くとは限らないことで、そうなると駅の重要性は高くなくなってくる。
―― 来年に向けて抱負を。
横山 色々トライしたい。おもしろいことをやりたい。「こういう事業モデル」と決めた方がしゃにむに量産化してやれることはあるが、決めたくない部分もある。
―― それでは時代の変化に対応できなくなると。
横山 決めすぎると、どこかに流れとのズレが生じることもある。やりながら考えていくことで、何かと何かを組み合わせた業態など面白い話が生まれるかもしれない。商業施設はどこか笑って考える内容が本当だと思っている。皆、商業施設は楽しくなるところに行きたい。あとはどこまで会社として事業化できるかとのせめぎ合いとなる。
(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2225号(2017年12月26日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.246