NEXCO東日本(東京都千代田区霞が関3-3-2、Tel.03-3506-0111)は、関東以北(新潟、長野の一部含む)から北海道までの高速道路3871kmを管理・運営している。管内のサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)は321カ所あり、うち商業施設を有するSA・PAは196カ所に上る。2016年度には新ブランド「YASMOCCA(ヤスモッカ)」を開発。3年で56カ所の設置に向けて整備を進めるなど従来の休憩施設という役割だけでなく、魅力ある、訪れたくなるSA・PAに進化を遂げている。また、商業施設関連には、4年間で約240億円の投資を計画し、新施設の整備も進める。同社取締役兼常務執行役員 サービスエリア事業本部長の萩原隆一氏に話を聞いた。
―― SA・PAの展開状況について。
萩原 「礎づくり」と「華づくり」をテーマに展開している。「礎」は、どの施設にも共通する基本的なサービスの質を向上して提供しようというもので、「華」はさらに付加価値を提供するという考え方である。華の代表的なものとしては、商業施設ブランドの「Pasar(パサール)」が挙げられる。礎の一環としては、16年度から新ブランド「YASMOCCA(ヤスモッカ)」の展開に着手。3年間で計56カ所の整備を目指しており、順調に進んでいる。
―― YASMOCCAの特徴は。
萩原 定食や日用品の充実に加え、その地域にこだわった独自の食事メニュー、隠れた名産品や定番土産の販売にも注力し、魅力ある商品をスピーディーに提供する。毎日のようにご利用いただくお客様をターゲットとし、季節メニューも用意しているため、飽きのこない食事を楽しんでもらえる。また、建物への投資という面では、軽微な工事でリニューアルできるので、スピード感を持って展開が可能だ。
―― Pasarは。
萩原 Pasarは首都圏近郊で展開しており、「幕張」(上下)、「羽生」(下り)、「三芳」(上り)、「守谷」(上下)の計6カ所。当社商業施設のフラッグシップブランドとして、市中で話題の店舗や、その場でしか味わえないグルメなど地域性の高い商品も取り揃え、多様なお客様ニーズに対応する、高速道路ならではのバラエティ豊かなサービスを目指している。
―― 圏央道延伸、常磐道全通による効果は。
萩原 例えば圏央道の延伸では、内側にある東北道や関越道といった縦貫道の商業施設の利用者が減り、外側が増えるといった増減が見られるが、全体の利用者数は増加傾向にある。また、近郊に物流施設の集積が進んでいる圏央道の菖蒲PAのガソリンスタンドでは、大型車が利用する軽油の販売比率が高まるなど、高速道路ネットワークの形成で車の流れにも変化が起きている。
―― 今後のSA・PAの展開は。
ドラマチックエリアの輪厚PA(上り、撮影者=中宮写真映像製作所)
萩原 3月に、今年度から20年度までを対象とした新中期経営計画を策定した。SA・PAなどの商業施設関連には約240億円を投資し、4カ所以上の商業施設の新設・改築や年間2カ所程度の増改築・老朽化更新などを行う。
中でもPasarは1カ所、地域性・旅のドラマを演出したドラマチックエリアは5カ所整備する予定だ。Pasarは東北道の蓮田SA(上り)で、新たに設けた敷地に新設する計画だ。
ドラマチックエリアは、16年度末時点で14カ所だったが、17年4月、北海道の輪厚PA(上り)が新たに仲間入りし15カ所となった。今後も積極的に拡大し、中期経営計画最終年度の20年度末には20カ所となる予定。
これら投資を行い、SA・PAの魅力向上、商業施設の効率的な運営などを推進することで収益力を強化し、16年度の売上高(物販、飲食店舗)980億円だったものを、20年度は1040億円以上にまで増加させる。
―― 注目エリアは。
萩原 環状道路(圏央道、北関東道など)の外側への展開を進める。内側はおおむね整ってきており、今後は外側を中心に展開していきたい。
―― 訪日客対応は。
萩原 17のSA・PAに免税カウンターを設けており、さらに増やしていきたい。また、エリアコンシェルジェの案内における通訳サービスの活用、銀聯カードの取り扱い、Wi-Fiサービスの提供などにも取り組んでいる。ピクトサインの設置も進めている。
(聞き手・若山智令記者)
※商業施設新聞2220号(2017年11月21日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.241