仙台国際空港(仙台空港)は、7月で東急グループ、豊田通商、前田建設工業による民営化1周年を迎えた。民営化以降、仙台空港では積極的なLCCの増便やサービス向上策を実施し、旅客数を増加させ続けている。仙台空港の運営を行う仙台国際空港(株)の営業推進部商業運営グループ長兼商業運営支配人の神津秀人氏に、今までの取り組み実績や計画について話を聞いた。
―― 仙台空港の現状について。
神津 仙台空港は、2016年7月から東急グループ、豊田通商、前田建設工業が運営権者となり完全民営化した。16年度の利用旅客数は316万人で、うち国内線が293万人、国際線が22万人だった。17年度の目標は合計341万人で、国内線が314万人、国際線が26万人を計画している。直近の動向は、特に国際線旅客数の伸びが高く、前年比で41%増加している。LCC増便などが大きく影響している格好だ。
―― 民営化から1年経ちましたが、どのような取り組みを行っていますか。
神津 最も大きいのは空港施設の一体運営化だ。これまでは旅客ビル、貨物ビル、滑走路や駐車場といった空港施設は別々の会社で運営していたが、運営を一手に集約した。これによって一体的・機動的な経営ができ、旅客数の増加や商業の拡充といった課題に対し空港を挙げて取り組めるようになった。
また、仙台空港に来るための2次交通も大幅に改善された。JR東日本、仙台空港鉄道(株)と増便の協議を行い、3月には1日あたり3便の増発が実現した。これによって利用者が増加しただけではなく、車利用の従業員が電車で通勤できるようになるといったメリットも生まれた。空港への直行バスも、1年前は地元の路線バスのみだったが、観光地へ接続するための路線を誘致した。こういった取り組みについては、電車・バス事業を行っている東急グループならではのノウハウやブランド力が活かされている。
また、空港の総合案内カウンターを視認性の高い場所に移して利用者の利便性を向上し、携帯電話の無料充電スポットを新設するといったサービス面での拡充も行った。加えて、これまでなかった従業員休憩所の新設など、ショッピングセンターのノウハウであるES(従業員満足)を意識した取り組みも行ってきた。
―― 空港ビルの商業部分については。
神津 1階から3階に、物販12店、飲食12店が出店している。物販のうち4店は直営店で、全館の売り上げの約6割を占めているが、お土産を扱っている「総合売店 萩」がキーテナントの役割を果たしている。
民営化後の大きな変化としては、1階の国内線到着ロビー付近を、4月に「みちのくラウンジ」として改装し、カフェ&バーとして運営している。今後2~3階についてもリニューアルを計画中で、その際にはテナントもターゲットリーシングを行い、リプレイス含めて商業床の活性化を図りたいと考えている。
―― さらなる集客策は。
神津 空港ビル独自の集客要素というのは、そこに飛行機があるということだと考えている。民営化以降、飛行機が見える空港展望台を無料で開放するなどしているが、今後は飛行機を中心としたレジャー要素を含んだ施設を目指したい。現在の利用者は、ビジネスマンや観光客といった「飛行機を利用する人」が中心だが、そうした施設になれば、今以上に地元の人々にも空港を利用してもらえるようになる。
また空港運営については様々な規制があるが、規制緩和の要望も出している。商業に関係するものでは、エアサイドへの非旅客入場に関する規制の緩和や、すでに決定済みではあるが、国際線到着エリアでの免税店出店を可能にするといったものだ。
―― 今後の抱負を。
神津 仙台空港は、東北の玄関口としての使命を担っており、これを果たすためには空港自体に賑わいがなくてはいけない。全社を挙げて旅客を増やし、商業を活性化し、皆が笑顔で自然に集まってくるような、おもてなしがある空港を目指したい。
(聞き手・山田高裕記者)
※商業施設新聞2219号(2017年11月14日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.240