商業施設新聞
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第97回

(株)サンクゼール 代表取締役専務 久世良太氏


集客力ある施設に積極出店
食材の自社製造が強み
米国拠点機に新業態も視野

2017/9/26

(株)サンクゼール 代表取締役専務 久世良太氏
 ジャムやワイン、パスタソースなど多彩な食材を製造販売する(株)サンクゼール(長野県上水内郡信濃町大字平岡2249-1、Tel.026-219-3902)。健康で安全なおいしい食品を提供することを第一と考え、農場から食卓まで安全であることを保証する。これが消費者から支持を得ており、出店要請が途切れることがない。同社代表取締役専務の久世良太氏にブランドの魅力や今後の展開などを聞いた。

―― これまでの経緯から。
サンクゼールワイン&グロッサリー GINZA SIX
サンクゼールワイン&グロッサリー GINZA SIX
 久世 1975年に私の両親が長野・斑尾高原でペンションを始め、母が宿泊客向けにジャムを作って出したところ大変好評だったため、事業化した。その後、ペンションをやめ、ジャムの製造販売の(株)サンクゼールの前身となる(株)斑尾高原農場を設立。今後のビジネスモデルとして参考とするため、仏ノルマンディーや、米カリフォルニア州ナパバレーのワイナリーなどを視察した。そこで大いに刺激を受けて、卸販売から作り手の思いを発信できる直営店を目指した。
 特にナパバレーのワイナリーの直売店ではカウンター越しに楽しい会話が弾む。いつかあのようなことを日本でやりたいと思っていたところ、「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」で「ニューウエスト」の新設が持ち上がった。当時SCはアパレルが大半だったが、「サンクゼール・ワイナリー」を提案したところ、可能性を感じていただき、出店に至った。ワイン、ジャムだけでは約20坪の売り場を作れないので、パスタソース、ドレッシング、紅茶など様々な商品を開発した。以来、首都圏や関西のデベロッパーからお声がけいただけるようになった。

―― 久世福商店は。
 久世 現在は撤退したが中国に2010年に進出した際に、味噌、醤油などが欲しいと言われ、世界では日本独自の商品を欲していることを知った。時を同じくして「イオンモール幕張新都心」への出店が決まり、日本全国のうまいものセレクトショップ「久世福商店」を立ち上げた。自社製品のほか、メーカー共同開発品など、ほとんどがオリジナル商品だ。
 一方で、多店舗化しないと在庫が回らないので3年で15店出店を目指したが、多くの引き合いをいただき結果的に50店出店した。アパレルから食物販へのシフトによる市場環境の変化を感じた。

―― 両業態の立地やアイテムは。
 久世 立地は基本的に同じで、イオンモールの「越谷レイクタウン」や「水戸内原」では2業態を出店している。
 サンクゼールは7割がワインやパスタソースなどの自社商品で、標準店舗面積の35坪に約1000品目を揃える。一方、久世福商店は自社商品の比率は約2割。40坪を標準に約2000品目を揃えるが、都心型用に小型化も可能だ。

―― この分野は競合も多いですが、差別化は。
 久世 自社商品を有しているのが強み。プロダクトミックスの中で、バランスをとるための部分としてメーカー機能を持っているので、様々なカテゴリーの商品を仕入れて展開できる。店頭にマグネット効果として「ジェラート」や「おとうふドーナツ」を販売し、これが集客装置になっている。

―― 食物販店舗は飲食を強化する方向ですが。
 久世 地方都市の商業施設ではカフェニーズが強いので、「イオンモール長久手」では久世福商店の主力商品を食材として使い、「久世福商店・久世福茶寮」を出している。カフェとの併設店であり、昼間客数が増えた。2店目を三宮のOPA2に出店した。サンクゼールも「サンクゼールカフェ」を展開しており、今後増やしていきたい。
 また、国分寺セレオではワインバル付き店舗をオープンするなど、立地によってどんな機能を付加するか検証を進めている。

―― 今後の出店や店づくりの考えは。
 久世 両業態とも多くの引き合いをいただいているし、集客力のある商業施設はまだあるので、この3年は同じように伸ばしていく。地方モールではカフェなどの機能を付加し、モールの中のキーテナントを目指したい。その一方で駅ナカや駅ビルに出店を開始し、帰りがけに寄っていただける利便性を追求したい。
 一方で、「ザ・グロッサリー&ワイン」という新ブランドを立ち上げ中だ。自社ワインだけでなく、世界中からこだわりのワインやフードを調達し、提供する。また、米国オレゴン州ポートランド郊外のニューバーグにあるジャム加工工場を4月末に買収した。毎月コンテナが出ているので、そこに商品を載せて、久世福商店の“世界版”を展開していきたい。さらには敷地が12万m²あるので、サンクゼールの製造拠点としても機能させていく。

―― 色々広がります。
 久世 強みとなっている部分の厚みをさらに増したい。サンクゼールなら何かやってくれる、というような期待に応えたい。それがお客様の満足につながるのが大前提。わくわく感が生まれる売り場を作っていきたい。

―― 今後の抱負や売り上げなどの目標は。
 久世 海外はオレゴン工場のオペレーションを確立する。国内はサンクゼールと久世福商店の2ブランドを着実に展開していくこと。既存店が116店に達しているので、新商品を絶えず投入したい。そして新業態を含めてわくわくする店づくりを目指していく。売り上げは前期が69億円であり、こうした施策で3年後にも100億円を超える水準にしたい。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2207号(2017年8月22日)(5面)
 商業施設の元気テナント No.221

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