商業施設新聞
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No.366

北極と一緒にしないで!


高橋 直也

2012/5/15

 サービス産業を営むA社の取締役にインタビューした際、「北海道は未出店ですが、いつ出るんですか?」と聞いたところ、「いや、寒い所ってあまり気分が盛り上がらないから出ませんよ。北極よりハワイの方が気分も盛り上がるでしょ」と言われてしまった。
何を隠そう、私は北海道出身である。「北極と一緒にしないで!」と心の中ではショックを受けたが、確かに北海道は不便な場所である。

 特に冬。寒くて家から出る気はしない。外出しても、雪が積もれば自転車はペダルを踏んでも進まないし、車の運転も事故との隣り合わせで命がけだ。ちなみに、電車はよほどの雪でなければ運休にならない。上京してから、初めて雪で電車が運休となった時には「なんだ、東京も大したことないな」と勝ち誇ったものである。
 店舗運営を考えても、海を隔てているため、物流にそれなりの苦労がある。しかも様々な業界で地場の企業が強く、内地の企業は否応なしに競合することになる。例えば、コンビニならセイコーマートが北海道民からは強烈な支持を得ているし、スーパーではアークスグループやコープさっぽろも強い。しかも景気が非常に悪いため、サイフの紐の固さを考えると経営者としては悩ましいだろう。

 あれやこれやと、北海道の将来を嘆いているが、わずかながら明るい話題も出てきている。北海道新幹線が札幌まで延伸される見通しなのである。完成まで24~25年後と言われているため、開通する頃にはリニアモーターカー全盛の時代になっていないか不安だが、とにかく北海道としては大きな話題だ。外から訪れる人は増えるだろうし、札幌駅の駅ビルも将来的には改築する方針でもあり、どうにか盛り上がって欲しい。

 個人的には、福岡市の天神エリアのような賑わいが欲しいものである。昨年の秋、キャナルシティの取材のために福岡・天神エリアに行った時は、その賑わいに驚いたものである。もちろん、街の規模としては現在住んでいる東京の方がはるかに大きいのだが、小さいエリアに、あれだけ大きな商業施設、オフィスビルが密集しているのは国内にもあまり例がないのでは……と個人的には思うのである。観光気分も少しあったので、思いが美化されているかもしれないけれど。
札幌駅前。写真右側のエスタは老朽化が進み、建て替えか大規模改修が必要だとか
札幌駅前。写真右側のエスタは老朽化が進み、建て替えか大規模改修が必要だとか

 あの密集した感じは、残念ながら北海道にはないのである。土地が広すぎるせいか、道路が広く、人がまばらに見えてしまう。官民が一体となって、北海道新幹線の開通までに、新しい、賑わいのある街づくりをしてもらいたいものだ。なかなか、きっかけがない北海道では絶好のチャンスのはずだ。
 賑わいを手っ取り早く生み出すには、いっそのこと、札幌近郊にかわいいネズミのテーマパークを誘致したり、高さ1000mの電波塔を建てたり……と、話題になることは間違いないが、実現性のない話ばかりが頭に浮かぶ。なにせ、土地だけはいくらでもあるので。

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