東急不動産SCマネジメント(株)は、東急不動産ホールディングスグループの一員として、商業施設を専門に運営する。一部を除き「東急プラザ」「キューズモール」といった東急不動産の物件を中心にグループ外受託物件も含め63の施設を運営する。同社代表取締役社長の佐藤一志氏に今後の展開などを聞いた。
―― 足元の状況は。
佐藤 消費、時間などスタイルが変わり、多様性や裾野が広がっていると思う。施設のイベントなどで何かおもしろいことをやるとお客さんがビビッドに反応するし、ポップアップストアでも変わったことをやるとたくさん集まる。Eコマース時代と言われているが、引きこもっているわけではないし、人は街に出ている。
―― 人が集まっていることが、実際に消費につながっていますか。
佐藤 残念ながら十分生かしているとは言えない。まだまだ売り場に工夫や努力が必要で、MDの見直しも必要かもしれない。
―― 「東急プラザ銀座」の開業から1年経ちました。
佐藤 できたこと、できなかったことがあり、オーナーである東急不動産と現場をつかさどる我々と一緒になって分析している。インバウンドもタイプや志向が変わってきた。団体客は減っているが、個人客は増え来街者全体は増加している。周辺にも大型商業施設が増えたが、当社の飲食店利用客が増えるなど良い効果が出ている。
―― 今後の方向は。
佐藤 開業1年なので、ドラスティックにMDを変える予定はないが、他の施設と協業しながら来街につなげ、館内で色々な仕掛けで来館に結実したい。イベントスペースが豊富なので、様々な仕掛けができる。それに東急プラザ銀座をご存じない方も多いので、認知を進めたい。
―― 「東急プラザ表参道原宿」は。
佐藤 大きなリニューアルは予定していないが、この春で5年経ったので、個別のテナント入れ替えなどになるだろう。渋谷キャストも開業し、渋谷からの連続性もできた。
―― 大阪の「あべのキューズモール」は。
佐藤 昨年売り上げが483億円で、成長を続けている。あべのハルカスなど周辺の商業施設も好調と聞いている。昨年開業5年目を迎えた。MD自体は元々受けていたので、同じようなMDで少し目新しいものを入れるなど、正当に進化させていくことをテーマに、物販テナントのリニューアルを昨夏に完了し、この7月で飲食ゾーンが完了し、改装が完了する。
―― 今後の改装は。
佐藤 現在、横浜・港北ニュータウンにある「ノースポート・モール」の改装を進め、今秋グランドオープンを予定している。周辺にはそうそうたる商業施設が集積していることもあり、リニューアルというより、当社仕様にリモデルする意識でやっている。
―― ポイントは。
佐藤 視認性がよくなかったり、集まる場所が足りないなど環境改善に重点を置く。若いファミリーが多く、ベビーカーのお母さまが特に土日に多いので、買い物がしやすい広い廊下やキッズスペースの充実など、ファミリーで長い時間過ごしてもらうことに心を砕いた。
―― それ以外は。
佐藤 3年前に受託を開始した「デックス東京ビーチ」も環境改善を含め継続して実施している。区画移転を含め一部の店舗を入れ替え、ラオックスを誘致した。共用部を産学連携で東大とお茶の水女子大の研究室共同監修のもと、サインの見やすさなどのアドバイスをもらいながら作り込んだ。
―― 新しい受託案件は。
佐藤 名古屋で今秋開業する「ささしまグローバルゲート」の商業施設運営を受託した。グループ外受託かつ名古屋エリアで初めての常駐だ。
―― 受託案件を今後増やすお考えですか。
佐藤 そこは積極的にやっていきたいが、大きな案件が委託されるチャンスはそう多くはない。
ただ、東急不動産には街づくりのDNAがあり、多彩な街づくりを得意とする。当社は投資する会社でないが、商業事業を広げていく中で、色々なタイプの商業施設を扱うことによって、東急不動産グループの商業事業の領域を広げる、その先兵的な役割ができたらいい。商店街の活性化やコンバージョンなども当社はできると思う。グループとしては色んな機能があるので、組み合わせられたら面白いのでは。
新しいカンパニービジョンを「夢ある、リアル。」とし、リアルな街で、リアルな施設でリアルな触れ合いを体験していただくことは、代えがたいもの。そういう舞台づくりに積極的にかかわっていきたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2202号(2017年7月18日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.233