(株)力の源ホールディングス(福岡市中央区大名1-14-45、Tel.092-762-4445)は、1985年に博多とんこつラーメンの「博多 一風堂」を開業して以来、業態を多角化しながら、国内外で約200店を展開している。3月21日には東証マザーズへ上場、2018年3月期には41店の純増計画で新規出店を加速する。事業展開や出店戦略を、同社代表取締役会長兼CEOの河原成美氏に聞いた。
―― 博多とんこつラーメンの外食需要は、国内外で活発だ。
河原 当社の17年3月期の連結売上高は、前期比7.5%増の224億3000万円で、営業利益は同21.2%増の6億900万円(営業利益率2.7%)、純利益は同16.7%増の2億7100万円だ。そのうち海外売り上げは2割程度を占める。新規出店に費用がかかり利益を圧縮しがちだが、本来はもっと利益を出せる企業体質である。メニューでは、白丸元味と赤丸新味の注文比率がおよそ55%対45%で、白丸元味の愛好家が多い。客層は、30~40歳代の男性が70%程度と認識している。
―― 外食産業は、先行きが見通しにくい。
河原 コンビニから中食業態まで巻き込んで競争が激化している。人手不足も深刻で、店で雇用する新たな人材を探すのは困難な状況だが、他社との間で人件費値上げ競争という消耗戦には陥りたくはない。人手不足を解消するために、ロボットの導入も考える。事業を取り巻く環境は厳しいが、「変わらないために変わり続ける」という経営理念に基づき、ラーメンを中心とした日本の食文化を世界に伝えるため、国内外で積極出店を続ける。そのため3月21日に株式を公開し、東証マザーズに上場した。
―― 全店舗体制はどんな状況か。
河原 17年3月期の全店舗数は198(直営145、ライセンス53)店で、そのうち国内は125店、海外は65店、その他8店。国内の業態別内訳は、一風堂が83店、RAMEN EXPRESSは17店、アメリカンチャイニーズレストランのPANDA EXPRESSは1店、その他ブランド(一風堂スタンド、1/2IPPUDO)などは24店だ。また、福岡の老舗うどん店「因幡うどん」を子会社化したことで同ブランドは5店、博多うどん酒場「イチカバチカ」は3店。18年3月期の国内売上高は、既存店で前年並みを見込み、売上増のためには新店が寄与することになるだろう。
―― 海外店の体制は。
河原 アジア53店、米国4店、欧州4店、オーストラリア4店を展開している。アジアの国別では、香港・中国が22店で最多、以下台湾9店、シンガポール8店、フィリピン5店、タイ4店、マレーシア3店、インドネシア2店が続く。欧州は英国と仏国が2店ずつ。18年3月期は、欧州店舗の通期黒字化と利益貢献への実現、米国では新規に西海岸を立ち上げる。
―― 出店計画は。
河原 18年3月期は、41店の純増(新規出店43店、退店2店)を計画し、全239店体制にする。国内は新規出店18店(直営15、ライセンス3)、退店2店を予定、海外は新規出店25店(直営14、ライセンス11)を計画する。8年後の25年までの中長期では、国内300店、海外300店体制にしたい。その間に、開業から30年を経た国内店舗ブランドをリニューアルしていく。海外では米国、中国、東南アジアでの出店を強化。東南アジア市場は若い人が多いため、伸びしろが大きいと期待している。17年3月期は国内で新規出店22店、M&A4店、閉店9店、海外では新規出店10店を実施した。
―― 海外展開のパートナーについて。
河原 米国では、パンダ レストラン グループと提携し、西海岸のサンフランシスコ、ロサンゼルスからIPPUDOを展開し中心都市部へ旗艦店出店、周辺商圏へはKURO-OBIの展開を進める。西海岸での1号旗艦店は今初夏にサンフランシスコ・バークレーで開店予定、その後はニューヨーク発ジャパニーズ・ブランド「KURO-OBI」としてフードコートを中心に展開する。製造面では、中国の龍大食品グループ(山東省)と提携して進める。
―― 東南アジアへの出店戦略は。
河原 人口増加・高度経済成長が見込める東南アジア市場に対して、シンガポールを拠点に旗艦店「IPPUDO×KURO-OBI Marina Bay Sands店」を17年1月に開店した。また、ポークスープで低投資&早期回収可能なブランド「IPPUDO EXPRESS」を、シンガポール・チャンギ空港内での2店の出店実績を踏まえて、今後ショッピングモールを中心に出店を加速する。また、ノンポーク&テイクアウト業態の「KURO-OBI」も、NY発日本ブランドとしてフードコートを中心に展開する。マレーシアやインドネシアなどのイスラム教圏のハラル対象のブランドとする。
―― 暖簾分け制度を開始している。
河原 出店の加速、店舗営業力の強化に向けて、店舗の運営形態の多様化に着手し、フランチャイズと直営のハイブリッド(混成)モデルである「暖簾分け」を進めている。業務委託型の暖簾分けは、既存直営店を店主に業務委託するもので、業績連動型の報酬体系として営業力を強化できる。また、ライセンス型暖簾分けは、店主の自己資金による出店を許諾するロイヤリティ収入形態で、より高い意識での店舗運営を促すものだ。25年に100人の経営者輩出を目指す。
(聞き手・笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2199号(2017年6月27日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー