商業施設新聞
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第87回

サムティ(株) 不動産本部 不動産事業部長 高橋雅史氏


ピエリ守山、FFと体験型で復活
15年10月より22店新規導入

2017/7/18

サムティ(株) 不動産本部 不動産事業部長 高橋雅史氏
 関西を中心に、賃貸マンションや分譲マンションなどの開発を手がけるサムティ(株)(大阪市淀川区西中島4-3-24、Tel.06-6838-3616)。同社グループが所有する大型商業施設としては、滋賀県守山市の「ピエリ守山」がある。一時は“廃墟モール”とささやかれたが、ファストファッション(以下FF)を核に、様々な業種のテナントを誘致したことで、売上高が前年を上回るなど、見事な復活を遂げている。同社の不動産事業部長の高橋雅史氏に話を聞いた。

―― ピエリ守山は2014年12月に全館リニューアルオープンした。その後の状況は。
見事に復活した「ピエリ守山」
見事に復活した「ピエリ守山」
 高橋 リニューアルオープン後は「マツモトキヨシ」や「久世福商店」など、日常使いの店舗を新規に誘致したほか、「+CASA」や「ニトリ」といった家具店も新たに誘致した。核となるFFは、「ZARA」や「H&M」などが引き続き健在であり、「OLD NAVY」は閉店したものの、その後継テナントとして、来店客から要望が多かった雑貨業態の「アレックスコンフォート」が出店しており、感度が高い顧客層から支持されている。前述の店舗を含め、15年10月より22店を新規に誘致しており、この新店効果もあって、売上高・来館者数ともに前年を大きく超えている。

―― 好調の要因について。
 高橋 FF、ヒマラヤ、ニトリ、生鮮食品館TOKUYAといった、核テナントが順調に売り上げを伸ばしていることが挙げられる。とりわけ、FFに固定客が付いてきたのは、大きな要因となる。加えて、新店22店など、テナントの新陳代謝を図ったことも、売り上げを伸ばす要因になったことは言うまでもない。
 また、当施設はアウトドアライフをコンセプトにした体験型付帯施設として、「めっちゃさわれる動物園」や「びわこスカイアドベンチャー」などのテナントも配置。特に、めっちゃさわれる動物園は17年3月に改装を行い、アルパカを動物園の新しい仲間に迎えるなど、ふれあいゾーンの拡大を図った。これが話題になり、ファミリー客を中心に来店客が増加し、施設全体の売り上げも伸びた。こうした“コト消費”につながる店舗を設けているのも、好調の要因と言えるだろう。

―― 改めて、ピエリ守山の強みとは。
 高橋 当社の森山会長が「心斎橋筋商店街を守山市に持ってきた」と例えるように、Gap/Gap Kids、ZARA、H&M、Stradivarius、Bershkaなど、外資系FFを一堂に揃えたのは大きな強みである。アパレル不況が指摘されているが、ピエリ守山では、これらの外資系FFが売り上げを牽引している。
 他方、ファッションの景気に左右されるというリスクも付きまとうが、雑貨店や家具店など、様々な業種をミックスすることで、そのリスクを最小限に抑えている。なお、ピエリ守山の店舗数は120店(17年5月時点)で、ファッションは売上高が全体の3割強、売り場面積は全体の4割を占める。

―― 顧客動向は。
 高橋 客層は20~30代の子育て世代が多く、子供連れやファミリー層が全体の20%強を占める。また、60代のシニア世代もボリューム層を形成しており、これらは日常使いで利用されるお客様となる。総じて、20代から60代まで満遍なく来店していただいている。
 顧客分布としては、滋賀県が全体の8割と大半を占め、残りが京都府や大阪府となるが、当社の想定以上に福井県からの来店客も増えており、伸びしろが感じられる。当初、ピエリ守山の商圏範囲は20kmを設定していたが、大阪府や福井県からも来店するお客様が多いため、予想以上に集客できている。

―― 今後の展望を。
 高橋 ここ2年で顧客が求める欠落業種を誘致してきた。近隣の商業施設との差別化およびすみ分けを目指し、より一層、体験型・滞在型施設の誘致を行い、バリューアップを図る。
 具体的には、年々参加人口が増えている琵琶湖一周サイクリング「ビワイチ」と連携したサイクリスト企画を検討している。また、ピエリ守山の最大の特徴である、琵琶湖湖畔という自然豊かなロケーションを生かすべく、温浴施設の二次開発も計画する。魅力的な商業施設を目指し、まだまだ仕掛けていく。

―― 貴社における商業施設開発の方向性は。
 高橋 当社はマンション、オフィス、物流倉庫、ホテル、商業施設といった多様な資産の開発・保有・運営を行うなど、事業の多様化を進めている。商業施設はピエリ守山が最大規模の施設となるが、今回のように、既存の商業施設を再生するという仕組みは発展途上の段階にある。当社としては、ピエリ守山でノウハウを蓄積し、同施設とともに成長しながら、次の案件につなげていきたい。

(聞き手・岡田光記者/北田啓貴記者)
※商業施設新聞2198号(2017年6月20日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.229

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