商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第85回

Zebra Japan(株) 店舗運営部 部長 古田秀治氏


出店加速へサテライト型開発
20年に50店体制
17年は旗艦店も強化

2017/7/4

Zebra Japan(株) 店舗運営部 部長 古田秀治氏
 昨今の雑貨ブームの牽引役「フライング タイガー コペンハーゲン」は、日本上陸から5年が経過し2017年7月には6年目に突入する。現在、23店を展開、20年には50店を目指す。拡大のキーとなるのが16年8月に開発した小型の「サテライト型」店舗で、50店のうち同形態が30店を占める予定だ。17年は今後の拡大に向けた地固めの年とし、18年から出店攻勢をかける。転換期を迎えた同ブランドの戦略について、Zebra Japan(株)店舗運営部 部長の古田秀治氏にお話を伺った。

―― 店舗形態から。
 古田 これまでは、ブランドを根付かせるため、100~150坪のフラッグシップ型、80~120坪のミドル型といった比較的大型の店舗を大都市圏に展開してきた。初のエリアにはまず、ブランドのすべてを表現するフラッグ型を出店し、周りにミドル型を展開してきた。なお、フラッグ型は東京・表参道、名古屋、大阪・アメリカ村、京都・河原町、広島、福岡の7店で、それ以外はミドル型だった。

―― 16年に小面積のサテライト型を開発しました。
サテライト型店舗の「イーアスつくば店」
サテライト型店舗の「イーアスつくば店」
 古田 16年8月に、初の小型店を茨城県つくば市のショッピングモール「イーアスつくば」に出店した。売り場面積は国内最小の42坪で、地域特性や顧客ニーズをダイレクトに反映させた地域密着型の店舗だ。フラッグ店の取り扱い商品数は約2000点だが、同店では1000点弱に絞り込んだ。売り上げも順調に推移し、17年2月には「イオンレイクタウン kaze」(埼玉県越谷市)に2号店をオープンした。
 サテライト型の標準面積は50坪だが、基本コンセプトは変えていない。ワンウェイのショッピング方式は継続、SC内立地であるため、バギーが通れる快適な通路幅を確保した。

―― 開発の経緯は。
 古田 ブランド黎明期は都心や大都市圏に大型店を出し、認知度の拡大、ファンを開拓するには有効だった。しかし、日本全国に多店化し、中核都市へ出店するという次のフェーズを見据えると、投資コストと準備期間を要する現在のスケールでの多店舗化は難しいとも感じていた。また、大型店は日常的にご利用いただくには広すぎるという側面もあり、小型店の開発につながった。

―― サテライト型の課題は。
 古田 運営を通じて課題も色々見えてきた。鮮度を維持するための商品選択とオペレーションの効率化を両立する難しさがある。商品を増やし、入れ替えの頻度を上げるほど売り上げは上がるが、膨大な手間がかかる。これまでとオペレーションが全く変わるため、数店を運営する中でベストプランを出していきたい。17年はそのための期間となる。

―― フード類の拡充も進めます。
 古田 “フード”は来店頻度を上げる切り札だ。本国は売り上げの25%をフードが占め、日本のコンビニのように利用されている店舗もあり、日常使いのニーズが高いのが特徴。サテライト店は、地域密着型とし、日常ニーズをいかに訴求していくかがカギとなるが、そのためにはフードの強化が欠かせない。よって、16年から日本向けフード類の開発を開始、17年のバレンタインシーズンには、初めて日本オリジナルのチョコクランチを販売した。現在、日本でのフードの比率は3~5%だが、将来的には10%まで引き上げていきたい。

―― 17年の動向は。
 古田 フラッグ型1店、サテライト型4店の計5店の出店を考えている。同時に店舗のスクラップ&ビルドにも着手し、5店を退店する計画で、すでに立川、町田、池袋などの店舗を閉鎖した。
 小型店は多店化を進める上で重要だが、同時にフラッグ型の強化も図っていく。フライング タイガー コペンハーゲンらしさを体現する上で、旗艦店の存在は大きい。本国では新しいデザインの什器の導入も進んでいるため、メンテナンスも含め、一部改装も考えている。

―― 今後の計画は。
 古田 20年に50店体制とする計画だが、内訳ではサテライト型を30店強、ミドル型を10店、フラッグ型を8~10店で、フラッグ型の出店も続ける。16年11月に開店した広島ストアはオープン前に500人の行列ができた。やはり新しい市場への期待は非常に大きく、北海道や東北など未進出のエリアに出店していきたい。

―― 競合環境が熾烈な中、好調な要因は。
 古田 店舗網を広げる中で、様々な改革・改善を行ってきた。これまで商品はデンマーク主導のセレクトかつ商品供給がなされていたが、16年春以降は日本でコントロールできるようになり、日本の商習慣、市場の動きに合った商品供給が可能となったことも大きい。
 そして、何と言っても強みは「デンマーク」というアイデンティティだ。デザイン性の高さに加え、一見しただけでは用途がわからないユニークでユーモアのある商品は日本には少なく、自然と差別化につながっている。

―― 抱負を。
 古田 本国の基本コンセプトはデンマーク語の「ヒュッゲ」という言葉。日本語に直すと難しいが、「人と人とのふれあいからくる温かさやほっこりした雰囲気」「居心地がいい時間や空間」を意味しており、接客や店作りで、その“ヒュッゲ感”をもっと表現していきたい。
 ヒュッゲを通じ、我々はただ「モノ」を売るのではなく、その先にある「シーン」を提供している。今はモノを売るのが難しい時期で、リアル店での買い物に付加価値を持たせるかも求められているが、ヒュッゲを徹底することで、自ずと価値を提供できるだろう。

(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2196号(2017年6月6日)(5面)
 商業施設の元気テナント No.218

サイト内検索