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No.587

密室の青瓦台に韓国国民の叫びは届くのか


嚴 在漢

2016/12/20

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾訴追案が12日9日、韓国国会を通過した。弾劾案は、在籍議員300人のうち299人が無記名投票に参加し、賛成234票、反対56票、棄権2票、無効7票で可決された。弾劾案の可決定足数は在籍議員3分の2の200人である。可決された弾劾訴追案は、憲法裁判所が審理(最長180日間)し、憲法裁判官9人のうち、6人以上が賛成すれば朴大統領は罷免され、それから60日以内に新しい大統領選挙を行う。万が一、賛成が5人以下であれば弾劾案は棄却され、朴大統領の権限は回復される。

 朴大統領は、40年来の極めて親しい交友関係の崔順実(チェ・スンシル)氏による秘密情報漏洩や、国政関与といったスキャンダルが発覚し、ついに弾劾された。朴大統領をめぐる一連の疑惑は、韓国経済界にも大きな影を落としている。

 12月6日、韓国国会で開かれた「チェ・スンシル国政壟断真相究明のための特別委員会(チェ・スンシルゲート)」の聴聞会には、サムスングループや現代自動車グループをはじめとする9人の大手財閥企業のオーナーが呼び出された。9社は、ミルやKスポーツ財団などに656億ウォン(約65億6000万円)を拠出する見返りに、財閥らの利益に利用したのではと疑われている。スポーツ財団の募金総額は、財閥以外の企業からの募金を含めると800億ウォン(約80億円)に達する。この募金額の一部を崔氏が流用あるいは着服したことが判明している。

国会聴聞会に呼び出された韓国大手財閥オーナーら
国会聴聞会に呼び出された
韓国大手財閥オーナーら
 聴聞会で財閥オーナーらはこぞって「スポーツ財団に捻出したお金に対する一切の対価は望まなかった」と証言しつつも、「企業経営者として大統領府(青瓦台)からの寄付要請を拒絶することができなかった」と吐露した。またオーナーらは「朴大統領が安家(青瓦台近くの特別家屋)に呼び、文化隆盛とスポーツ産業の振興を支援してほしい」と要請した事実があると証言した。

 この日、国会議員の質問攻勢に遭った李在鎔 (イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は「サムスンが崔氏側を支援したのは不適切であったし、非常に後悔している」と話した。とりわけ、李副会長は「2015年7月のサムスン物産と第一毛織の吸収合併は崔氏とは関係ない」と強調。だが、特別委員会は両社の合併当時、サムスン物産の大株主であった国民年金の賛成と崔氏の支援には、ある種の裏取引があったのではないかと疑っている。また、サムスンはスポーツ財団への寄付(204億ウォン)とは別途に、15年9月以降、乗馬選手(崔氏の娘)の支援やスポーツセンターなどに94億ウォン(約9億4000万円)を支援したことでも疑惑が深まっている。

 ロッテは、16年3月半ば、重光昭夫(韓国名・辛東彬)会長と朴大統領の非公開面談後、韓国政府による市内免税店の追加選定の発表があったことの背景が争点になっている。だが、ロッテ側は「3月初頭、すでに市内免税店に対する追加選定の可能性は高まっていた」と反論している。

 ロッテは、スポーツ財団への寄付として45億ウォン(約4億5000万円)を拠出している。また、16年5月にはKスポーツ財団に別途で70億ウォン(約7億円)を出したが、ロッテグループに対する電撃的な検察捜査の前日に崔氏らから返してもらった経緯がある。重光会長は、10月25日、背任や横領などの疑惑で4カ月間行われた韓国検察の捜査結果で指摘された問題点について陳謝し、新しい成長ロードマップを提示している。聴聞会で重光会長は「スポーツ財団への寄付で利益を得るつもりはなかった」と答えた。

 さらにSKは、15年8月に崔泰源(チェ・テウォン)会長の特別赦免とスポーツ財団への寄付(111億ウォン)に対する対価性が争点になっている。崔会長は会社の資金数百億ウォンを横領した罪で4年の実刑判決が確定し、2年半服役していたが、光復節を迎えた8月14日、朴大統領によって特別赦免・復権された。

 韓国国民は朴大統領の弾劾可決を受けて、異様な喪失感で憤慨している。13年2月、韓国初の女性大統領として華々しく就任した朴氏。独身で子供がいないから悪いことは絶対しないだろうと信じ切っていた、熱烈な支持者らを裏切った結果となっている。数十年間の特別な知人との運命の悪戯を断ち切れなかった朴大統領は、密室政治と政経癒着の果てとともに、公私が区別できない歴史に残る不名誉な大統領になりそうだ。
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