オフィスやブティックなどが建ち並ぶ、高級感が溢れる街である東京・南青山に、福井県のアンテナショップがあるのをご存知だろうか。銀座よりも少し若目の人達が好みそうなショーウィンドウが並び、やや奥まった場所に「ふくい南青山291」はある。江戸時代の越前藩邸の所有地という由緒ある場所である。「291」とは、「ふくい」と掛けた言葉。
福井県のアンテナショップは、2012年に開業10周年を迎えるが、“食の充実”へ向けたリニューアルを実施し、「291kitchen」をオープンした。「291kitchen」は、店内の1階に設置され、実演・試食ができるキッチン・スペースとして設置したもの。
オープン記念として、9月の毎週末には福井県の名産品を試食できた。9月3~4日は越前ガニと越のルビー(中小型サイズの完熟トマト)の冷製パスタ、10~11日はへしこ(塩を振って糠漬けにした魚料理)、17~18日は醤油と豆腐、23~24日は漬物と味噌といった具合だ。パスタを除けば和食で、味が深くまで染み込んだ落ち着いた味わいの食事を提供、今や世界を代表する健康食となった日本の食と味を、福井の名産品で表現した料理だ。
冷製パスタは、福井の冬と夏の幸がふんだんに盛り込まれた贅沢な味わい。ソースには、福井の代名詞「越前がに」の中でも内子、外子がぎっしりと詰まった“せいこ蟹”を用いた。さらに、従来の大玉トマトと比べて甘みが3~4倍で、小振りの大きさのトマト「越のルビー」を加えた。蟹とトマトの個性が強く発揮されたパスタの味である。世界料理オリンピックに日本代表として出場し、銅メダルを獲得した藤井正和シェフ(サバエ・シティーホテル総料理長)が腕を振るった。
|
|
|
|
ふくい南青山291の外装 |
|
|
|
冷製パスタで腕を振るう藤井シェフ |
|
へしこは、魚を糠付けした食材で、今回はこれをスライスして押し寿司にして振る舞われた。へしこと酢飯の間に、求肥昆布と甘酢漬けかぶのスライスを挟み込んだ茶色や赤色で色彩の調和も取れている。へしこの深い味わいと、かぶの調和が食べる人を楽しませる。
醤油と豆腐は、昔懐かしい味で、共に味が濃い。醤油は、幕末当時の醸造製法を守り続ける老舗「室次」の“こだわり醤油”だ。
「ふくい南青山291」館長の井上義信氏は、「東京・青山の一等地に当館はあり、この地にはファッションセンスの高い人達が多く訪れる。そのような方々に“一見さん”として当館に寄ってもらうため、苦労を重ねながら工夫を凝らした。店の看板や外装のセンスはもとより、店の陳列物を大事にしている」と話す。
普通のアンテナショップは、地元産の食品を前面に押し出す店が多いが、ふくい南青山291は、伝統工芸品の陳列が多く、これらを買い求めに来る顧客も多いという。ただし、集客のためには、食のイベントの効果が高いようだ。10月以降は、越前がにを用いた駅弁や、へしこを使った料理の試食会が予定されている。
2階にはイベントホールがあり、ふくいそばうち講座や地酒の飲み比べ大会(有料)が開かれる。1階南側では、福井県産食材をPRする飲食店事業者が募集されている。福井県産の食材を使用し、福井を代表する料理と味の提供、福井県を連想できる店舗名の設定などが条件付けられている。現在の出店者は㈱雄島館(福井県坂井市三国町米ケ脇4-4-34)で、店舗名は「ありそ亭青山」である。
次にどんな福井料理が出てくるのか楽しみである。
|