商業施設新聞
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No.334

裏側


大塚 岳史

2011/9/13

 夏期休暇を利用して、妻の実家がある広島へ行ってきた。今までは、紙屋町、八丁堀、本通といった市中心部の繁華街に行くか、子供が小さいこともあり、近所のショッピングセンターなどに出かけていたが、今回、意を決して安芸の宮島へと出かけた。

 日本三景の1つである宮島には、過去に2~3回渡ったことがある。ただし、JR宮島口、広電宮島口の駅にはその倍ぐらい降り立っている。宮島へと渡るフェリー乗り場へ向かおうとするのだが、2回に1回は駅の東側にある大型遊戯施設に誘われてしまい、対岸から眺めるだけに終わってしまう。
 フェリーを降りて、さて厳島神社へ……と思っても、その短い道程にも誘惑が多い。初めて宮島に行った時は、悪友4人との同行だったが、名物のカキを殻ごと焼いていたり、名物のアナゴちくわがクルクルと回っている店の前に長期滞在。店のご主人とバカ話にふけり、帰る間際に千鳥足で神社と大鳥居を眺めて帰ったこともあった。その後も、厳島神社と大鳥居を眺めるだけで神社の中に入ったことはなかった。観光客として失格である。

 今回は、初めて観光チックに宮島を訪れた。なお、宮島をこよなく愛される方々、しっかりと観光をされている方には、つまらない話になります。
 まず、フェリーに乗って宮島に到着。みやげ物店を横目で見つつも、すんなり通過して、まずは大鳥居へ。干潮の時間だったので、子供を連れて大鳥居の傍まで歩いて行く。何度見てもすごいなぁと感心する。次に、拝観料を払って厳島神社にも初めて参拝した。なるほど、素晴らしい。歴史の重みを味わうことができた。しかし、個人的に感動したのは、厳島神社を後にしてからだ。

 まず、神社の裏手の街並みが落ち着いた風情で、とても和やか。観光シーズンから外れた平日だったこともあり、人通りも少なく、観光地を感じさせない趣があった。ロープウェー乗り場へと向かう途中、茶屋に立ち寄り、でき立ての紅葉まんじゅうを冷たいお茶とともに味わい、夏の日差しに晒された体を小休止。
 そして、宮島ロープウェーに乗って獅子岩駅へ。ロープウェーから見た、宮島の裏側に広がる瀬戸内の海に、ただただ感動!今まで、小豆島の辺りから、防予フェリーの航路周辺まで、色々な瀬戸内の海を見てきたが、こんなに素敵な景色はなかった。

 表の華やかさに隠れがちな裏側。しかし、暗いイメージばかりでは決してない。東京でも、裏原宿と呼ばれる「原宿通り」や「キャットストリート」は若者の支持を得ているし、古い街並みの残る谷中・根津・千駄木の通称・谷根千には「へび道」があり、人気の散策スポットになっている。
 裏側は、あくまでも裏なのか。それとも、単に陽が当たらないだけなのか。全国の街なかには、まだスポットを浴びていない魅力ある裏側がたくさんあることだろう。裏側の良さを残しながら、少しずつ表に出すことで、人が集い、街が元気になっていく、そんな街づくりも面白いのではないだろうか。
厳島神社の裏側は古都のような雰囲気
厳島神社の裏側は古都のような雰囲気

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