福岡地所(株)が展開する「キャナルシティ博多」(福岡市)は2015年度、訪日客を中心とした観光客の取り込みに成功し、過去最高となる1648万人が来館するなど好調だ。「リバーウォーク北九州」(北九州市)では、ファッションエリアを食に転換する大胆なリニューアルを7月に控える。キャナルシティ博多事業部長の下田圭一氏に各施設の動向を聞いた。
―― キャナルシティ博多の客数が伸びています。
下田 15年度の来館者数は1648万人となり、過去最高を記録した。11年度以降伸びているが、11年9月にH&Mなどが出店する増床エリアがオープンした効果もあるだろう。特に近年では訪日客の増加が著しい。15年度は売上高も480億円と高水準になった。
―― 以前から訪日客を意識しています。
下田 開業時にバスの発着場を整備したが、昨年追加で10台ほど整備した。訪日客に人気があるのは「ラオックス」やドラッグストア、雑貨店だ。ラオックスは昨年リニューアルして内装をグレードアップしたほか、休憩スペースを広げるなどした。熊本地震により、個人旅行者の数は減少しているが、クルーズ船でやってくるツアー客の数は堅調だ。
―― 訪日客の傾向について。
下田 福岡は韓国からの旅行者が多く、中国人客と比べると客単価は低いかもしれない。ただ、韓国は距離が近く頻繁に訪れていただける。商品としては、試着が必要な衣料品より食物販や化粧品・医薬品などがよく売れる。
―― キャナルシティ博多は博多駅エリアや天神エリアなどに囲まれています。
下田 博多駅エリアや天神エリアはどちらかというと買い物する場所だが、キャナルシティ博多は映画館、劇場、物販や飲食店、ホテルなど様々な用途が集積し、多くの人が訪れる。デザインも特徴的で、施設の中央に店舗ではなく、運河が流れているなど“過ごす場所”だ。体験型、コト消費という言葉が浸透したが、先駆けといえる。
また、最近では映画館(ユナイテッド・シネマ)が4DXや映画を見ながら食事を提供する「ダイニング・シネマ」を導入した。4DXのシアターは稼働率が高水準で推移するなど映画館としても差別化に成功している。
―― リバーウォーク北九州では、思い切った改装を計画しています。
下田 1階の入り口付近にあったファッションエリアを食のエリアに改装する。これまで有名ブランドが出店しており、施設の中でも目立つエリアなので雰囲気はかなり変わるだろう。1200m²を改装し、7月1日から順次オープンする。スーパーの「レガネットキュート」、カフェや雑貨などを販売する「ブルーハワイライフスタイル」の国内2号店など計6店が出店するほか、好調なスターバックスを増床する。
―― 改装の背景は。
下田 北九州市は少子高齢化が進むエリアで、ファッションよりデイリーに利用できる食関連のニーズが強いと感じた。上層階の劇場や美術館との親和性も見込めるため、食を前面に出した施設にしたい。
新店で特に期待しているのが、青果の「やおや植木商店」だ。「木の葉モール橋本」(福岡市)にも出店していただいているが、売上高が毎年大幅に上がっている。
―― 木の葉モール橋本の状況は。
下田 絶好調だ。木の葉モール橋本は地域密着型の施設で、商圏は3km程度だが、年間600万人が訪れる。やおや植木商店も出店する食物販エリアが特に強い。開業の際、地域密着を打ち出すために食を強化した。周辺に競合施設は多いが、食が集客の牽引につながっているのは木の葉モール橋本だけだ。
この施設でユニークなのはチラシなど販促を打つ回数が圧倒的に少ないこと。館内ポスターの訴求力が高く、口コミなどで広がる。従業員とお客様が知り合いだったりと、商店街に近い。地域密着型施設として15年度はイベントを700回ほど行い、夏休みに行うラジオ体操に500人ほど参加することもあり、地域の中心になっている。
―― 今後の展開を教えてください。
下田 キャナルシティ博多では手づかみでシーフードを食べる「ダンシングクラブ」、妖怪ウォッチのグッズを扱う「ヨロズマート」というエンターテイメント性の高い店が開業する。グランドハイアットも現在客室の改装を進めており、17年春に完成する。
キャナルシティ博多は、4月に20周年を迎えたが、11月下旬ごろから運河と噴水がある空間「サンプラザ」で約2500インチ相当の壁面、ガラス面に3Dプロジェクションマッピングを行う。新たに映像設備とコンサートホール並みの照明、音響設備を設置し、噴水設備や水中照明もリニューアルする。今後も「都市の劇場」というコンセプトのもと、進化していきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2148号(2016年6月28日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.198