セコム医療システム(株)代表取締役会長 布施達朗氏のJPI特別セミナー「セコムが2014年開設したインドでの日本式医療展開で得られた貴重な知見を活かす今後のアジア海外医療事業」を紹介する連載2回目では、布施氏が語ったインドでの病院事業や、セコムの医療事業の将来像について紹介する。
◇ ◇ ◇
◆14年1月にインドで病院開業
同社は近年、医療の海外展開にも注力し、14年1月にインドで「Sakra World Hospital」を開業した。
同社が進出したインド市場は、有望なマーケットとして知られている。人口は12億人で、世界2位。25年には14億人、世界1位になると言われており、今後も市場の成長が見込める。中でも都市部の成長が顕著で若年人口が多く、富裕層とミドルアッパー層が増加している。また、英語が公用語になっており、コミュニケーションが取りやすいことも魅力の一つと言える。
◆インドの医療市場は人口1000人に0.5床
インドの医療市場をみると、食生活上、糖尿病が多いなど医療需要が拡大している。一方で病床が圧倒的に不足している。OECD(経済協力開発機構)によると、OECD加盟国の人口1000人あたりの平均病床数が25床なのに対して、インドはわずか0.5床。そのため、国は民間の病院進出を認めており、株式会社(営利法人)による病院経営が可能となっている。価格を自由に設定できるなど自由度が高いのも特徴だ。
◆公的保険は公務員のみ、富裕層で15%加入
同国の診療体制は、日本と違って公的保険制度(医療・労災・年金保険)は公務員のみが対象となっている。大企業の社員や富裕層は民間保険に加入しており、加入率はおよそ15%。貧困層の医療は基本的に国や州政府の医療施設で実施する。国や州政府の医療施設は外来が無料で、手術は定額だが質は高くないのが一般的。
薬に関しては製薬企業が患者への医薬品の販売価格を決定する。病院の購買価格は製薬企業との交渉になる。臨床検査はラボや病院が独自に価格設定し、患者に直接請求するなど日本と異なることが多い。
病院の財源は、政府系病院は全額国庫で、私立病院は臨床検査、薬局、食堂など。なお私立病院は事実上、富裕層が対象となっている。
◆1000人当たり医師は0.7人、看護師1人
運営体制としては看護師、医師の不足が著しい。OECDの人口1000人あたりの臨床医師が3.2人なのに対してインドは0.7人。同じく看護師数はOECDが34人なのに対して、インドは1人。
(続きは本紙で)