(株)ピーアンドディコンサルティング(さいたま市大宮区桜木町1-7-5、Tel.048-643-9720)は、埼玉県内を中心に地域密着型ショッピングセンター(NSC)「UNICUS(ウニクス)」を10施設展開し、2017年にはさいたま市岩槻区で「ウニクス浦和美園」の開業も控えている。「郊外」から「住宅地」や「駅近」へと出店立地にも変化が見られるとともに、NSCは組み合わせの競争だと話す同社代表取締役の溝口隆朗氏に話を聞いた。
―― 足元の状況から。
溝口 いずれの施設も売り上げは順調に推移し、全体で見ても前年を上回っており好調だ。最近では8%ほど上回る月もあった。客数は、年明けごろに一時前年を下回ることもあったが、2月以降は回復し、前年を超えてきた。
15年4月に「ららぽーと富士見」(埼玉県富士見市)がオープンし、商圏が近い「ウニクス南古谷」(埼玉県川越市)に影響が出るのではないかと思ったが、結果的に当社は日常使いのSCであることなどから来店動機が異なり、思ったほどの影響は見られなかった。こうした事例もあることから、大型SC近隣地にあえて出店するということもあって良いと思う。
―― 建築費の高騰などがあるが、現在の開発環境をどう感じているか。
溝口 環境的に悪いとは思わない。確かに建築費の高騰はある。だが、建築費は変動しているので良い、悪いはない。(SC開発は)投資なので、その時の投資のバランスでできるかどうかだ。これを考えると、私はまだまだやれると思う。
また、NSC開発に関しても飽和感はなく、どういうものやテナントを組み合わせるかという知恵を出し合う競争になっている。当社では物販、サービス、医療などを組み合わせた開発なども行っている。
―― 近年のNSC業界に変化は。
溝口 トピック的なのは、SM企業が自社を核とした複合開発をやらなくなってきたことが挙げられる。なぜならば、我々が考えるNSCのなかで、一番賃料を払ってくれるのがSMになってしまったからだ。以前はドラッグストア、100円ショップなど、自分たちより高い賃料を払ってくれるところがあった。なので、SMはNSCを作ることができた。ところが、今はSMがNSCを作ったところで、リターン(賃料)が自分たちより低い。こうしたことから、SMは、自分たちがNSCを作るよりも簡単に、リスクが少ないテナントインの出店を指向している。郊外などでは例外もあるが、東京から50km圏内ではあまりない。
―― ウニクス浦和美園の開発も始まっている。
溝口 同SCは、延べ約1万m²で2階建て。ヤオコーのSMを核にテナントを20店ほど集積し、1階にSM、上はサービス系テナントを中心に物販なども配置する。
―― 開発地域は。
溝口 直近の川越、今度できる浦和美園は平面駐車場がほとんどなく、当社の考えるダイレクトパーキングの考え方から離れている。時代の流れで、住宅地に入っていかざるを得ない。以前は都心から20~70kmとしていたが、国道16号線沿線か内側、かつ住宅地に近いところで、駅から徒歩10分ほどといった場所が狙い目ではないか。
―― 貴社のNSCの課題は。
溝口 必要性も含めフードコートをどうするかを常に考えている。確かにフードコートの必要性はよく分かるし、お客様も多いのだが、実際どのようなものが良いのかまでは、まだ辿り着かない。NSCであれば各々で客席を持って単店同士をつなぎ合わせるというのもありだと思う。ウニクスでは南古谷、上里、伊奈の3カ所にフードコートがあるが、どうしたら最も価値が上がるのか様々な検討を行っている。
―― 今後の見通しは。
溝口 NSCを保有するなかに、投資家の方々が増えている。当社が業務提携しているケネディクス投資法人も「生活密着型」というリートを立ち上げている。出口を考えた開発も重要だが、作ることが目的になってはいけない。
当社は作ってさらに運営するのが目的。当初は土地、建物両方を流動化したが、今は底地しか流動化しない。建物を当社が所有することにより、必要なときに追加投資ができてバリューを下げない、また、テナントとの関係も良好に保つことができると考えている。
(聞き手・編集長 松本顕介/若山智令記者)
※商業施設新聞2141号(2016年5月10日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.193