シャツ専門店「BRICK HOUSE」などを展開する東京シャツ(株)。1949年の創業当初は百貨店へ卸販売を行っていたが、97年にSPAに本格的に進出、1号店を大阪・梅田に出店した。2001年には卸事業から完全撤退。現在、店舗網を200店以上に広げ、日本一のシャツ専門店に成長した。15年3月には日清紡グループの一員となり、川上から川下まで全体を見据えた事業運営が可能となった。新業態や新商品の開発など、これまで以上のスピードで、さらなる拡大に向けた体制も整った。専務取締役の渡部陽一氏にお話を伺った。
―― BRICK HOUSEの概要から。
渡部 主力商品はメンズ、レディスシャツで、ネクタイ、スカーフ、ニットなどシャツに合わせるコーディネートアイテムを取り扱っている。価格は2900円、3900円、4900円のリーズナブルな3ラインで、デザイン、色、素材などバリエーションが豊富だ。1シーズン(半年)で約600の新柄を投入している。新作が頻繁に店頭に並ぶことで鮮度の高い売り場を実現し、リピートにつながっている。この圧倒的な商品力は他社にはないだろう。
―― 店舗展開について。
渡部 多店舗化の手応えを感じたのはグランベリモールへの出店だ。2000年前後の郊外SCの出店ラッシュも追い風になり、郊外型SCを中心に出店を進めたが、屋号がバラバラになってしまったことから、この数年でブランドを整理し、「BRICK HOUSE by Tokyo Shirts」「TOKYO SHIRTS COLLECTION」の2ブランド体制とした。店舗数は206店(15年12月時点)、売上高は127億3800万円(15年2月期)で、順調に推移している。
―― 出店形態は。
渡部 都心の10坪程度の店舗からSCの40坪の大型店まで、面積は様々だが、平均で15~20坪の小中型の店舗が多い。シャツに特化しているため、立地や面積を選ばずに出店できるのも強みだ。デベロッパーからは坪効率の良さが求められるので、そういった点でも評価をいただいている。
―― 競合との違いは。
渡部 紳士服だけでなく、オンオフの垣根がなくなりビジカジ化が進み、セレクトショップなどでもビジネスシャツを扱い、競合は多い。紳士服業態のシャツ売り場は、スーツを販売するため、セールが常態化しているが、当社はシャツで勝負しており、基本的に値下げを行わない。明確な価格提示が消費者の安心・信頼感につながっている。また、形態安定加工や夏季用の吸水速乾加工など機能性の高さも支持を得ている。基本的に「1柄1色」でシャツを作っているため、バリエーションの豊富さは他社の追随を許さない。
―― 新事業としてフルオーダーシャツの販売を開始しました。
渡部 200店を超え、ブランドが硬直化したきらいがあり、またSCでは同質化が進み、差別化を打ち出す必要も出てきた。また、「シャツ屋」であることをもっと認知して欲しいという想いから新事業を立ち上げ、14年4月に東京・八重洲の「TOKYO SHIRTS COLLECTION」でフルオーダーシャツを始めた。競合はパターンオーダーが多いが、当社は千葉・松戸に自社工場があるため、フルオーダーに対応できる。
価格は百貨店に比べ2~3割安い。おしゃれに関心が高い、20~30代の若いお客様がついてきた。従来、オーダーシャツは50代以上の利用が一般的で、当社のユーザーも30~40代が多いため、一回り以上若い世代を取り込めたことは大きい。
―― 今後の展開を。
渡部 ポピュラーラインのブリックハウスに加え、オーダーメードに高級ラインを加えた八重洲店のような新業態、メードインジャパンにこだわった商品を集積したアッパーラインの3形態で展開する。
ブリックハウスは、地方はある程度網羅しており、首都圏や関西圏、名古屋などの都市型の商業施設への出店を強化したい。スクラップ&ビルドしながら、同規模で展開していけたらと思っている。10店程度の出店を見込んでいる。新業態やアッパーラインは、都心の中でも感度が高くアーバン型の商業施設を選んで出店していきたい。
―― 情報発信に注力しています。
渡部 タブロイド判のフリーペーパー「東京シャツ通信」を15年9月に創刊し、各店で配布を始めた。内容はシャツについての雑学、シャツにこだわりのある著名人へのインタビュー、最新商品情報など。紳士服メーカーと間違われることもあり、「シャツ専門メーカー」としての歴史や魅力を伝え、認知度を向上させるのが主な狙いだ。
また、接客面でのコミュニケーション不足を補う役割も持っている。小型店はスタッフも少人数で、接客の際に一人ひとりに伝えられる情報も限られてしまう。積極的な情報発信で、販促につなげたい。
―― 抱負をお願いします。
渡部 “街のシャツ屋さん”という身近な存在でありたい。消費者が気軽に買えるよう、通勤圏の中に必ずあるように店舗網を維持していく。SPAに転換した際の消費者に寄り添ったモノづくりという想いを大切にしながら、企業として進化し続けたい。
(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2134号(2016年3月15日)(5面)
商業施設の元気テナント No.181