新千歳空港(北海道千歳市)の商業エリアが好調だ。国際線利用者が増えていることに加え、映画館や温浴施設を導入するなど『時間消費型・滞在型』を意識して、地元住民を取り込んでいる。同空港を運営・管理する北海道空港(株)営業本部販売部部長 成田裕毅氏に施設の動向を聞いた。
―― 商業エリアの概要について。
成田 飲食、物販など約180店があり、2011年にリニューアルオープンした際に映画館などエンタメ施設も導入した。リニューアル後の商業エリアの運営は軌道に乗っている。当空港は旅客数としては国内4~5位の空港だが、店舗の売り上げは2位を誇り、商業エリアは賑わっている。
―― 商業エリアのコンセプトは。
成田 これまで空港は旅の通過点だったが、「過ごす」「楽しむ」「発見する」という価値を作った。それにより航空旅客だけでなく、地元住民にも楽しんでいただける時間消費型、滞在型施設として“次世代エンタメ空港”を打ち出している。
―― エンタメ系施設はどのようなものがありますか。
成田 3スクリーンあるシネコン「じゃがポックルシアター」、天然温泉による温浴施設「新千歳空港温泉」、チョコレート工場、ミュージアム、物販エリアで構成する「ロイズチョコレートワールド」、ぬいぐるみによる体験型施設「シュタイフ ネイチャーワールド」、ドラえもんのアトラクション「ドラえもん わくわくスカイパーク」を設けている。いずれも空港としては日本初もしくは世界初の導入事例となり、好調だ。
―― 物販店や飲食店も多い。
成田 “北海道ショールーム”をテーマに、道内の銘菓や海産物などを扱う物販、飲食店を中心に集めている。「きのとや」のチーズタルトなど、その場で作って実演販売する店が多く、人気を集めている。
飲食店ではラーメンの名店が集まる「北海道ラーメン道場」はいつも行列ができるほど人気で、このほか回転寿司など海産物を提供する店も人気がある。
―― 地元住民の利用が多いようです。
成田 映画館がかなり集客に貢献している。空港内でありながら、231席を設置するスクリーンがある。3Dに対応するなど本格的な施設だ。千歳市内で唯一の映画館ということもあり、ファミリー層などが多く利用している。鑑賞後は飲食や温浴を楽しんだり、物販店でショッピングするなど、空港内を回遊・滞在できるようになっている。
―― 旅客利用者が急増しています。
成田 14年の年間利用者は国内、国際線を合わせて約1900万人で、15年は2000万人を超えた。商業エリアの売り上げもそれに伴い好調だ。
特に国際線の利用者が増加しており、15年は200万人を超えた。国際線ターミナルは10年にオープンしたが、その時点では80万人程度だったので倍以上になった。国際線は台湾、中国など13路線の定期運航便がある。
―― 商業エリアは訪日外国人による売り上げが増えていますか。
成田 利用者数の増加に応じて伸びている。エンタメ施設では「ドラえもん わくわくスカイパーク」が人気で、物販では「ハローキティ ジャパン」などメードインジャパンのブランドが人気だ。札幌発のコンテンツ「初音ミク」の物販・ミュージアムエリアも人気が高い。
―― 制限エリア内には免税店もあります。
成田 大きく分けて3つの店がある。1つが国内外の有名ブランドのコスメやアクセサリー、たばこ、お酒を扱う総合店。2つ目が腕時計、炊飯器など家電製品、子供用品などを集積した店。3つ目が北海道の銘菓や水産品、和雑貨を扱う店だ。国際線が賑わっていることもあり、各店とも好調だ。
―― 現在、国内線の改修工事を行っています。
成田 国内線ターミナルは1992年にオープンしたエリアで、当時から比べると利用者は300万人ほど増えた。狭隘化の解消、セキュリティ強化などを目的に施設整備工事している。商業店舗の再配置もあるだろう。18年春に完了する予定だ。
このほかにも商業店舗は逐次新しい店が出店している。今後も、ニーズや時代に合った店の入れ替えは続ける方針で、より良い施設を作っていきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2130号(2016年2月16日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.186