阪急電鉄の大阪梅田駅前に位置し、阪急阪神ビルマネジメント(株)が運営するファッションビル「HEP FIVE(ヘップファイブ)」。若年層の女性をターゲットに据え、アパレルのジャンルを広げながらエンタメの要素を取り入れ、コロナ禍以降、売り上げを伸ばしている。ヘップファイブの強みは一体何なのか、館長を務める川口 剛氏に話を聞いた。
―― 施設の沿革を。
川口 元々は「阪急ファイブ」という若者向けの商業施設を運営していたが、「ナビオ阪急」および「梅田コマ劇場」と一体化する戦略が発表され、旧阪急ファイブと旧梅田コマ劇場の跡地に、1998年に開業したのがヘップファイブである。施設を開発するにあたり、お客様アンケートを実施したところ、「遊園地が欲しい」という声が多かったので、赤い観覧車を施設内にビルインすることになった。隣接するHEPナビオ(旧ナビオ阪急)にはTOHOシネマズ(株)が運営するシネコンが入っており、こうしてHEP(Hankyu Entertainment Park=阪急エンターテインメント・パーク)の名にふさわしい2施設が誕生した。
―― 概要や特徴は。
川口 規模は地下3階地上10階建て延べ4万5266m²、商業施設面積は2万1200m²で、店舗数は150店強を数える。150店のうち、ファッションが7割を占め、雑貨は1割強、飲食も1割強で、サービスは5店しか入っていない。メーンターゲットは18~24歳の女性で、その中でも大学生に重点を置く。買い物は憧れが大きな要素となるため、大学生をメーンに据えながら、その大学生に憧れる中学生、高校生をサブターゲットとする。開業から28年が経過した今では、これらのターゲットに加え、ヘップファイブを卒業したママ世代も子連れで訪れる。
立地する梅田エリアでは「ルクア」や「リンクス梅田」などの商業施設が相次いで開業したため、ヘップファイブも差別化が必要になった。それまではセレクトショップや高価な商品を扱う店舗を導入していたが、若者向けのカジュアルな商品を中心に、より若い服装・ジャンルの店舗を増やした。例えば、「ビームス」はストリートカジュアルの商品を扱う「ビームスストリート」に業態変更していただいた。同じテイストの中でより若者らしいファッションを提案する店舗を集めたことで、ターゲットに刺さる効果が生まれた。
―― 25年度(26年3月期)の実績と足元の状況を。
川口 大型店の改装で一時休業する店舗もあったが、施設売上高は24年度比1.7%増を記録し、コロナ禍以降、施設売上高は右肩上がりで推移している。26年度も大型店の売り上げが非常に好調で、直近の4~7月は前年度比6%増、8月は同9%増と伸びており、26年度の施設売上高は同5%増を目指している。昔は安価な商品が売れていたが、最近は定価でも買いたい若者が多く、客単価は右肩上がりだ。好調な店舗としては地上2階の「スーパースピンズ」、4階の「プラザ」、5階で増床した「アディダスオリジナルスショップ」が挙げられる。
―― 売り上げが伸びている要因について。
川口 コロナ禍を経て、自分らしい服装を選ぶお客様や、独自の趣味を持ち出すお客様が増えた。ファッションでは従来のフェミニンやガーリーに加え、地雷系の店舗や古着店を積極的に導入した。地雷系では「アクロトーキョー。」や「VOLCAN&APHRODITE」、古着店では「GRAPEFRUIT MOON」や「KINJI」が良い例だ。このようにファッションのジャンルを広げることで、お客様の買い回り向上に陰ながら貢献している。
独自の趣味では“推し活”を応援しており、ヘップファイブではキャラクターとのタイアップ企画やアイドルグループのPOPUPなどを随時展開している。最近は実写版が上映されている『ブルーロック』とのタイアップ企画を館内で実施した。推し活への取り組みとともに、エンタメの要素も導入しており、8~9階に出店する「バンダイナムコ Cross Store」では推し活の物販店を展開するほか、様々なイベントを開催し、プリントシール機も設置している。
―― ファッション×エンタメが生み出す効果とは。
川口 日常的に楽しみを求めるお客様が増えており、ファッションも見つけた時のワクワク感、ドキドキ感はエンタメと言える。ヘップファイブでは観覧車に乗るだけでも良いし、タイアップ企画で写真を撮影し、その後にファッションを選び、POPUPも訪れる、このように館内でいろいろなエンタメを見つけていただく。ファッションとエンタメは相性が良いと感じるので、その結びつきは大切にしたい。
―― 今後の抱負を。
川口 26年度の方針として「私の好きに出会う場所」を掲げ、前述のターゲット世代が自分らしさを見つけるお手伝いを進めていく。客単価は右肩上がりで推移しているが、来館者数につながるレジ通過数は年々減少傾向にあるため、お客様の好きに寄り添いながら、「梅田に来たら、まずはヘップファイブへ」と言っていただけるような施設を作っていきたい。
(聞き手・副編集長 岡田光/北田啓貴記者
商業施設新聞2662号(2026年9月8日)(3面)