電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第700回

(株)タムラ製作所 代表取締役社長 中村充孝氏


大型トランスで高シェア堅持
次の100年へパワエレも重視

2026/10/23

(株)タムラ製作所 代表取締役社長 中村充孝氏
 2024年度に創業100周年を迎えた(株)タムラ製作所(東京都練馬区)は、25年から次なる100年を見据えた「One TAMURA for Next100」を始動し、部門の垣根を越えて新境地開拓に挑んでいる。AIデータセンター(DC)や再生可能エネルギーなど成長分野で多数の採用実績を有する同社は、業績も過去最高更新が続く。代表取締役社長の中村充孝氏に、好調要因や増強計画、中長期展望などをお聞きした。

―― 好業績ですね。
 中村 北米を中心とするAI DC/AIサーバー関連の伸長に加え、中国や欧州を中心に太陽光発電や風力発電向け大型トランス/大型リアクターも好調に推移している。産業機器向けも全般的に実需見合いの受注状況にあるほか、国内では27年度からの省エネ規制を背景にエアコンの駆け込み特需が奏功している。自動車もハイブリッド車需要への回帰で、昇圧リアクターへの引き合いが一気に高まり、35年まで伸長を見込んでいる。こうした背景から8月に26年度通期業績予想を期初予想から上方修正し、売上高は前年度比17%増の1450億円、営業利益は同23%増の65億円、当期純利益は52億円の利益を見込んでいる。

―― AI DC向けで採用実績のある製品群は。
 中村 受変電設備やPDU(電源分配)向けへ大型トランス、UPS向けへ大型リアクター、HVAC(冷却機器)向けにトランス、リアクター、GPUサーバーなどサーバーラック向けに電流センサー、ゲートドライバーモジュール、基板実装・材料ではソルダーレジストやソルダーペーストを供給している。なかでも北米市場でのPDU向け大型トランスでは約40%のシェア、かつUPS向け大型リアクトルでも高シェアの状況にある。

―― 増強は必須ですね。
 中村 大型トランス/大型リアクターを増強中のメキシコ工場の生産能力は25年度に23年度比2倍、27年度には25年度比2倍に引き上げる予定である。マレーシア(東南アジア向け)、中国拠点もフル稼働であり、27年度あたりに増強を検討中である。また、欧米市場向け電流センサーも受注が増加傾向にあり、主力拠点の中国に加え、坂戸事業所にも生産体制を整備し稼働中だ。当初計画していた27年度の年産約20万個よりも上ぶれしそうだ。ゲートドライバーモジュールも今後、SiCやGaNベースのパワー半導体に不可欠であり、28年度以降の伸長を想定している。

―― 車載向けは増強を要するのでは。
 中村 ご指摘のとおりであり、車載用昇圧リアクターのマザー工場である坂戸事業所(埼玉県坂戸市)に加え、子会社の若柳タムラ製作所(宮城県栗原市)に昇圧リアクター製造用設備を追加導入し、立ち上げ中である。数量ベースで従来比約2倍に引き上げ、27年度から業績に寄与する見込みである。

―― 伊EMG(EMG Power Electric)社買収の目的と期待する効果を。
 中村 EMG社は当社が持ち得ていない、製造に特殊な加工技術を要する中電圧(MV)領域の大型トランス/大型リアクターに強い。ただしEMGの生産拠点はイタリアのみで、事業拡大に向けた生産能力が課題だった。一方当社は、メキシコ、チェコ、マレーシア、中国などに大型トランス/大型リアクターの生産拠点があり、グローバル生産体制に強みが有る。ただし、MV領域の特殊な加工技術がなかった。EMG社が当社の連結子会社に加われば、こうした点でシナジー効果を発揮できる。

―― 先端パワーエレクトロニクスでの取り組みは。
 中村 25年7月に新設した先端パワーエレクトロニクス技術研究所では、長期視点で、東北大学をはじめとした産学連携も活かし、電子化学の素材技術と電子部品の設計技術を融合した、素材から差別化した次世代パワー半導体向け磁性受動部品関連事業の創出に取り組んでいる。30年に向けて事業化を検討中であり、35年度には売上高100億円達成を目指していきたい。

―― 社長就任から1年半の振り返りと今後に向けて。
 中村 就任当初は2年間で体質改善し、3年目にROEや営業利益率向上を目指していた。しかし実際は、中国の生産集約、EMG社買収なども含めて、予定より半年ほど前倒しで進められており、中期経営計画の27年度目標値(ROE8%以上、営業利益率7%以上)の達成を見据えている。27年5月には本社移転も予定しており、心機一転する。黒色ソルダーレジスト「NOCTURNEシリーズ」など独自ブランドの展開や、30年度には次世代パワー半導体向け磁性受動部品関連を電子材料、電子部品に続く新たな柱に加え、次なる100年に向けて、着実に歩みを進めていく。



(聞き手・高澤里美記者)
本紙2026年10月22日号5面 掲載

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