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第692回

ニデック(株) 常務執行役員 小型モータ事業本部長 田中裕司氏


冷却装置も軽薄短小を実現
モーター技術で高性能・高信頼性

2026/8/28

ニデック(株) 常務執行役員 小型モータ事業本部長 田中裕司氏
 ニデック(株)の小型モータ事業本部は、自動車向けやハードディスク駆動用モーターの技術を生かし、データセンター(DC)向け冷却製品も多数展開している。さらなる需要の拡大を見込み、成長の柱に据える。常務執行役員 小型モータ事業本部長の田中裕司氏に、製品展開や現在の取り組みについて話を伺った。

―― 冷却向け製品の概要からお願いします。
 田中 これまでは空冷サーバー向けを中心に冷却ファンやヒートシンクやヒートパイプ、ベイパーチャンバーなどを提供してきた。しかし近年は、水冷のトレンドに沿って冷却液の循環や熱交換を行う冷却液分配装置(CDU)の販売が急増している。世界中から引き合いがきており、販売先も拡大している。

―― 空冷の現状を。
 田中 GPU搭載のAIサーバーが増え水冷のニーズが高まっているが、空冷がなくなることはないと考えている。データサーバーの需要も増えており、この用途で空冷はまだ活躍する。当社の空冷技術は高風量、高効率、低騒音の3つを軸に開発している。まだまだファンの進化が必要で、競争も激しいのが現状だ。

―― 空冷向け製品の開発について詳細を。
 田中 冷却ファンには高回転が求められるが騒音が課題となるため、高効率を維持しつつ静音化する必要がある。例えばセレーション技術では、プロペラの背後の形状を加工して騒音源となる翼面上の渦を低減する。また実証中のウィングレット効果は、プロペラの先端を上向きに加工することで騒音源となる翼端の渦を低減できる。そのほか様々な技術を組み合わせ、高効率、低騒音、高風量となる検証を進めている。

―― 水冷サーバーでの取り組みについては。
 田中 主力製品はCDUで、世界でもトップクラスの出荷量を誇る。最新のGPUに合わせた製品をいち早く市場投入しているためだろう。サーバーラックごとに冷却するIn-Rack CDUでは現在、Vera Rubin対応製品を開発中だ。
 設計面では当社が得意な軽薄短小に特化し、高性能かつコンパクトな筐体サイズを両立させた製品を展開している。複数のサーバーラックを同時に冷却するIn-Row CDUは、最大2MWの冷却能力ながら小型化を実現し、コンテナ型のDCにも対応できる。

―― 開発面でのポイントを教えて下さい。
 田中 技術、信頼性、生産規模が強みである。モーターメーカーとして、特に自動車向けのオイルポンプで定評があり、それを生かした水冷用ポンプや、モーター制御技術を生かした応答性の高いポンプ制御など高性能な製品を展開している。GPUの性能が上がるにつれて冷却に必要な水量や水圧が増加するなかで、同じ体積のまま強度の高いポンプを開発することで、コンパクトな筐体サイズを維持している。実装技術も重要で、水流の抵抗を受けない設計開発を行っている。

―― 信頼性や生産規模については。
 田中 これまで出荷した製品はすべて水漏れ事故ゼロを達成している。ハードディスクドライブは、高性能化のためにヘリウムガスを封入しているが、その封止検査の技術を液漏れ検査に応用したことが活きている。CDUは月産3000台が可能なタイ工場で生産している。このタイ工場の検査設備が特徴で、流水検査に加え、熱負荷をかけて冷却能力までの検査を全数で行うのは当社のみだろう。

―― 今後の開発は。
 田中 DCの消費電力増大が課題となるなか、チラーを使用しない冷却技術が求められている。当社では現在、Vera Rubinの冷却まで対応可能なCDUを開発中だが、今後Rubin UltraやFeynmanの世代では限界がくる。そこに対して今取り組んでいるのが二相冷却技術だ。気化熱で熱を回収し、蒸気をCDUで冷却して液体にする技術で、大規模な製品になる想定。市場が求めるタイミングで製品化したい。同時に、アフターサービスを含めた幅広いサービスの整備も重要だ。

―― 中長期の展望を。
 田中 DCの切り口でみると、様々な製品がニデックにはある。今後は製品単品での提供だけでなく、広いソリューションとして提供できるかが重要だ。性能競争は常に他社の先を行きたい。業界を驚かせる製品を出してきた自信もあり、さらに進化させていく。



(聞き手・日下千穂記者)
本紙2026年8月27日号1面 掲載

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