電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第694回

三菱電機(株) 情報技術総合研究所 光電融合デバイスプロジェクトマネージャー 大畠伸夫氏


高速光デバイスを強化
CPO普及時代に存在感示す

2026/9/11

三菱電機(株) 常務執行役 半導体・デバイス事業本部長 竹見政義氏
 生成AIの急拡大が世界の半導体・電力・ネットワークの構造を揺さぶるなか、三菱電機(株)が光電融合技術の研究開発を加速している。化合物半導体を用いた光デバイスに強みを持ち、DFBレーザー(LD)と光変調器を1チップにしたEML(電界吸収型変調器付きレーザー)は、データセンター向けで世界トップクラスのシェアを保持する。このEML技術を核に、2028~30年ごろに普及が見込まれるCPO(Co-Packaged Optics)市場で存在感を示す構えだ。情報技術総合研究所の光電融合デバイスプロジェクトマネージャーである大畠伸夫氏に、光デバイス開発の現状とCPO時代の技術課題、今後の展望を伺った。

―― CPOが求められる背景から教えて下さい。
 大畠 光電融合の中心技術であるCPOは、ICと光デバイスを極めて近い距離で集積し、電気配線を最小化することで、低消費電力と大容量通信を実現する技術だ。現在主流のプラガブル方式では、長い電気配線により、高速の電気信号が減衰し、復元に不可欠なDSP(Digital Signal Processor)が大きな電力消費源となっている。CPOはDSPを削減できるため、1ビットの信号を送信するために必要なエネルギーを約5pJ以下に抑えられ、4倍以上の電力効率の向上が期待される。
 また、CPOでは電力効率に加え、高密度化が重要になる。現在は1mmあたり1Tbpsの集積密度が目標とされており、400Gbps対応チップを1mm幅に4個並べる必要があるため、非常に挑戦的な技術だ。将来的には2~5Tbps級のさらなる高密度化が求められる見通しだ。

―― EMLチップについて。
 大畠 当社のEMLは独自のハイメサ構造が特徴だ。変調器の導波路両側面に溝を形成して光を強く閉じ込めることで、高速動作時でも光の消光が可能になる。このため波形が崩れず、受信側が確実に判定できる。23年には106GHzの帯域幅を示すデータも公表しており、世界的にも高速応答性能でトップクラスだ。層構造の設計や微細加工など長年の知見と強みを持つ。
 現在は1.6Tbpsや3.2Tbps級の光トランシーバーを視野に入れた400Gbps/レーンの高速EMLの開発を進めている。200Gbps対応品は24年4月から量産しているが、将来の高速化に向け、複数仕様の製品開発を継続している。

―― 具体的には。
 大畠 シングルエンド方式に加え、正相・逆相の2本の信号線を使う差動方式の変調器を開発している。差動方式はノイズ耐性が高く、高密度実装時に問題となるクロストークや信号劣化を抑えられる。一方で信号線が2本になるため、チップ構造や配線長は従来品とは異なる設計が必要だ。
 実装方式もワイヤーボンディングとフリップチップの両方を検討しており、顧客のモジュール設計方針に応じて対応できる製品群を準備している。さらにCPOの普及を見据え、LDと変調器を分離した構成にも対応する方針だ。従来のEMLはLDと変調器を同一チップに集積した一体型だが、CPOではLDをパッケージ外に置く外部式(ELS)が主流になる。熱に弱いLDを外出しすることで、信頼性と交換性が確保できるためだ。CPOで要求されるデバイス仕様を考慮し、分離型構成では全く新しいデバイス開発を他社と連携して進めていく。

―― CPOに至る中間形態としてNPO(Near Package Optics)も想定されています。
 大畠 NPOはプラガブルのようにフロントパネルでの交換はできないが、プリント基板上で交換可能な構造を持つ。顧客によって求める構造が異なるため、当社はどちらにも対応できるよう、よりプリミティブな光デバイスレベルで開発していく。XPO-MSAが新たに設立され、6.4Tbps級のNPOが発表されており、今後は12.8Tbps級のNPOも登場するとみている。

―― 先の技術として、ガラスインターポーザーが話題になっています。
 大畠 ガラスは反りが少なく大面積化に向き、複数のICを1枚の基板に配置しやすい利点がある。また光を透過するため、電気配線と光配線を同一基板内で共存させる構想がある。28年ごろを目標にガラスインターポーザーを導入するロードマップを示している企業もあり、まずガラスインターポーザー上にCPOを配置する段階が到来すると見ている。
 その後はインターポーザー内部のチップ間配線を光化する段階へ進むと予測している。内部の光インターコネクトまで進めば現行EMLでは効率が不足するため、新しいデバイス技術が必要になる。ただし、28~30年ごろに想定される「ガラス上のCPO」までは、現在の技術の延長で対応できると考えている。

―― 今後の方向性を。
 大畠 化合物半導体の高速光デバイスを量産できるメーカーは世界的にも限られており、当社はその領域で確かな技術を持っている。一方で、日本企業が米国・台湾中心のAIエコシステムから距離を置かれがちな状況には危機感がある。従来の自社単独での開発から脱却し、積極的な社外連携を活用することで、早期技術確立を目指すとともに特定顧客に依存せず、複数のルートでエコシステムに関わっていくことが重要だと考える。

(聞き手・澤登美英子記者)
本紙2026年9月10日号1面 掲載

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