デジタルトランスフォーメーション(DX)に不可欠なデータの取得には、情報の源泉である「センサー」の存在が必須だ。自動運転、製造現場の予兆保全、バイタルセンシングに至るまで、センサーの果たす役割は高まり続ける。そのセンサーの1つであるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)にフォーカスし、国内関連企業が結集して活動する一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)は設立から34年目を迎えている。MMCを率いる副理事長・専務理事の長谷川英一氏、産業交流部国際交流担当部長兼MEMSシステム開発センター センター長の武田宗久氏に、日本のMEMSの現況、伸びしろ、MMCの支援体制などをお聞きした。
―― MEMS市場の現況から。
武田 市場調査会社のYoleグループやWSTSなどの調査・統計データから、MEMS市場は150億~200億ドル規模、半導体市場の2~3%を占め、CAGR(年平均成長率)5%前後で伸長している。コンシューマー向けを筆頭に、自動車向け、産業機器向けが続く。MEMSデバイスではRF、慣性、圧力、加速度、マイクロフォンが上位を占めており、伸長率が高いのは超音波MEMS、タイミングデバイスである。
―― 研究開発における日本の存在感は。
武田 IEEE MEMS、Transducersなど世界を代表するMEMS関連学会では、アジア勢の発表件数が最も多く、日本も産学からの発表件数で存在感を示している。特に日本はIEEE MEMSでは加工技術、Transducerでは機械センサーとバイオセンサーでの発表件数が多い。
―― 日系企業のポジションは。
武田 Yoleグループ調べによるMEMS売上高上位30社の中に日本勢はTDK、キヤノン、村田製作所、エプソンの4社のみという現状であり、各社の順位も低下傾向にある。2018年には10社がランクインしていた状況と比較すると、日本のMEMSにおける競争力は低下傾向にあることは否めない。なお、MEMSファウンドリー上位15社ランキングではソニー、ロームの2社が健闘している。
―― 日系MEMSの躍進に向けてMMCも精力的に活動されています。
長谷川 日系MEMSデバイス各社の技術力は高く、市場としても今後、自動運転、IoTやウエアラブル、5G/6G通信機器、医療や防衛用途などへMEMSは確実に伸長すると見込まれている。そこでMMCから経済産業省へMEMSの必要性と存在意義を説くと同時に、23年11月設置のMEMS事業連携委員会において、MEMSを経済安全保障の枠組み内に入れていただくよう要請してきた。結果、経産省の半導体・デジタル産業戦略の中でMEMSも記載されるに至り、25年12月23日付の「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」には、センサー類やMEMSなども日本の経済安全保障上で重要なものは政策の対象にすると記載された。さらには特定重要物資の主な支援措置対象となる先端電子部品に磁気センサーが新たに含まれたことは大きな成果である。
―― MEMSの今後の伸びしろは。
長谷川 加速度センサー、ジャイロスコープ、慣性センサーは自動車産業を支えるためにも、国内生産基盤の整備が不可欠である。圧電技術・材料から差別化する圧力センサーは日本の得意領域であり、今後も競争力維持が期待される。米国企業が強い光MEMSやMEMSタイミグデバイスはデータセンターや車載ECUなどで拡大が見通され、日本の競争力強化が必要である。超音波MEMSもToFセンサーや指紋センサー、医療などへの応用が見込め、日本の競争基盤整備が待たれる。そのほか、ガスセンサーや磁気センサー、MEMSマイクロフォンなども伸びしろとみる。
―― 日本の復活に向けてMMCの展望を。
長谷川 MMCがMEMS産業活性化を目的に運営するMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)では、産総研共用施設内の8および12インチウエハー対応MEMS製造ラインを活用し、MEMSファンドリーサービスを11年から提供している。少量試作にも対応しており、今では年間5億円以上を受託するに至っている。ぜひ多くの方にご活用いただきたい。また、前述のMEMS事業連携委員会はMMC会員に限らない。多くのMEMS関連企業様にご参加いただければ幸いである。今後も引き続き、日本のMEMSを盛り上げるべく、精力的に活動していく。
武田 世界最先端の研究開発事例や注目技術に触れる機会を提供することもMMCの重要な役割と心得る。海外も常に意識しながら、日本のMEMSに貢献できる取り組みを継続していく。
(聞き手・高澤里美記者)
本紙2026年5月28日号5面 掲載