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北里研究所 理事長 藤井清孝氏(3)


50年後病院建て替えへ帰属収支差額50億円の目標、社会貢献強化し北里マインド継承

2015/4/21

「基本的な法人経営の考え方」を説明する藤井清孝氏
「基本的な法人経営の考え方」を説明する
藤井清孝氏
 (学)北里研究所 理事長の藤井清孝氏による、JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナー「100周年を迎えた北里研究所―未来に対するビジョンと設備の取り組み―」を紹介する連載3回目は、法人経営を中心にまとめた。

◇   ◇   ◇

◆海外拠点と連携して国際化推進
 藤井氏は、最近の社会的な問題や取り組むべき課題として、少子化・高齢化社会、団塊世代の後期高齢化時代に対する国の対応方策(18歳人口の減少、大学入学者の確保問題、2025年問題、2023年ECFMG受験資格)、医学研究の在り方(基礎・臨床)、ガバナンス・コンプライアンス、透明性の確保(臨床研究、研究倫理、論文捏造、データ改竄、社会への成果還元、知財)、国際化(学術交流、相互留学支援、語学教育、海外拠点)などを挙げ、国際化については、海外の大学や研究所と提携して海外活動拠点構築する必要があると述べた。

◆経営の安定/優秀な学生獲得/研究費の獲得へ
 藤井氏はここで、改めて法人経営に関して詳細を述べた。
 まず、基本的な法人経営の考え方として、経営の安定のためには、法人の事業を教学系事業本部と病院系事業本部に大別し、事業規模の6割を占める4病院の経営改善、教学系各学部・大学院の優秀な学生獲得、附置研究所群の安定経営・改組、専門学校群の将来の在り方(統廃合も含めて)、「臨床研究・治験、知財の適正管理」「公的研究費、競争的研究費の獲得、適正管理」「全体最適での施設の建て替え計画と実行」、次いで、法人ガバナンス・コンプライアンスの強化の「教育・研究・診療等の品質向上」「財務(中・長期の見通し)、透明性を担保」「人事、法務」を示した。

◆各部門独立採算制や全体不最適が壁
 その一方、学校法人北里研究所の壁として、各部門独立採算制を真っ先に挙げた。横の連携が希薄で、組織としてのベクトルの一致が困難であり、また、部門最適、全体不最適、赤字部門の取り扱いといった課題を述べ、次いで、規定の違いとしての学部人事と病院人事といった双方の人事交流の硬直化、旧北里研究所と旧北里学園の制度・慣習の違いの存在、さらには、分散するキャンパスの事実を示した。

◆帰属収支差額5%・50億円の中期目標
 そのうえで、法人経営の中期的目標を帰属収支差額5%、50億円(部門により目標数値は異なる)に設定し、内訳は教学系20億円、病院群30億円とした。学校法人の経営においては、法人運営体制の強化(本部経費、共通経費、戦略経費)、独立採算制(病院群)と経費配分性(例えば教学系)、各部門における独立採算収支は今後も重視(恒常的赤字部門の在り方、戦略的部門の育成)を掲げた。
 藤井氏は独立採算制について、学部、学科などが徐々に増えていった結果であり、それぞれの組織が単独で部門最適を実現している。教学系や病院群の収益を研究費等に再配分してもいいのではないかと述べた。さらに、最低50億円を確保すれば投資を維持でき、50年後の建て替えのために基金の積み立てが可能となると説明した。
 教学系各学部・大学院の優秀な学生を獲得するための、学費の値下げ、奨学金、戦略資金や魅力的な教育・研究内容の用意といった具体的な施策を明かした。

◆指標の向上と国際的貢献・交流を
 また、学校法人経営の質を担保する外的指標に関して、公的研究費獲得数・額、特許申請、ノーベル賞といった研究部門、就職率、国家試験合格率、国際的貢献・交流や経営面での安定、プレステージといった項目でそれぞれ向上を目指す。

◆大村智氏がガードナー国際保健賞、日本人初
 その一例として、前出の大村智特別栄誉教授の日本人初となったカナダ ガードナー国際保健賞の受賞、記憶に新しい医療衛生学部 馬渕清資教授によるイグノーベル賞受賞、ベトナムにおいて麻疹、風疹、日本脳炎などのサーベイランス業務に携わっている卒業生の飯島真紀子小児科医師(WHO)の偉業、活動を紹介した。

◆社会貢献と北里マインド継承で信頼される組織
 最後に、藤井氏は北里研究所のこれからとして、「法人経営の在り方では、経営企画諮問会議からの答申を尊重し、財務、人材育成、戦略などの面で施策を実践し、法人の使命である生命科学の総合大学、病院群、研究所群の継続発展と成果、さらに、グローバル化の実現に取り組む。法人のガバメントおよびコンプライアンスを強化しつつ、社会への貢献と北里マインドの継承により、社会からより信頼、期待される組織を実現したい。特に少子化・高齢化が進む我が国において大学入学者の確保は至上命令である。『地方消滅』という言葉が囁かれており、若い人を全国より集めて高度の教育を行い、社会に輩出するという大学の役割は地域における活性化の核となるものである。官民を挙げての地方再生の取り組みにも北里研究所として大いに貢献していきたい」と講演を総括し、締めくくった。
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