電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第645回

Rapidus(株) 専務執行役員 エンジニアリングセンター長 折井靖光氏


前工程と後工程の融合図る
2nm成功しスピードで勝負

2025/9/26

Rapidus(株) 専務執行役員 エンジニアリングセンター長 折井靖光氏
 Rapidus(株)(東京都千代田区)は、国家半導体戦略カンパニーともいうべき存在であり、北海道千歳市に巨大半導体工場の建設を進めている。先ごろ、世界最先端の2nmプロセスのファーストロットの製造に成功したことで、国内外の注目を集めている。今回、同社にあって専務執行役員の任にあり、エンジニアリングセンター長として指揮を執る折井靖光氏に話を伺った。

―― ご出身、ご略歴について。
 折井 東京生まれ、大阪育ちで、池田高校を出て大阪大学基礎工学物性物理工学科で学んだ。卒論は「半導体の超格子」に関するものであった。そして、日本IBMに就職し、1986~2016年まで30年間にわたり勤務した。
 ―IBMでチップレットを立ち上げたのですね。
 折井 当時はメーンフレームの時代であり、バイポーラ半導体のころであったが、野洲工場でまさに現在のチップレットに当たる実装技術を作り上げていた。この画期的な実装技術により、スパゲティー配線を排除することができた。TCMといわれる熱伝導モジュールを作り上げたが、64層セラミック基板の上にRDL(再配線層)を設けた。そしてCMOSの世界に突き進むことになる。

―― AI時代を迎えて圧倒的な性能向上が必要ですね。
 折井 そのとおりだ。なにしろ近い将来には2000ZBの時代に入るといわれるが、映画では約1兆本に相当する。そして、前工程の微細化に加えて、後工程(パッケージング)も複数の半導体を組み合わせて、性能向上を図らなければならない。マザーボードやサブストレート上のインターポーザーにメモリーとロジックを積んでこの両者を近づけなければならない。

―― チップレットが必要となる。
 折井 これまで1チップに集積した大規模回路を、複数の小さなチップに個片化し、インターポーザーと呼ぶチップレット間をつなぐ基板上に載せて1パッケージに収める技術が大切になる。もちろん、Rapidusは有機基板の上にRDLインターポーザー、そしてその上に2nmロジックとメモリーを搭載する最先端チップレットに挑戦している。

―― インターポーザー開発も工夫する。
 折井 600mmパネルレベルでのインターポーザー開発をディスプレー技術も積極的に取り入れながら加速させていく。また、シリコンブリッジ導入とビア/ランド径の微細化により、RDL層の削減にも取り組んでいる。ダイレベルテストの工夫、そしてアセンブリー・デザイン・キットの作成・提供により、設計のシンプル化、短TAT化にも寄与していく。

―― エンジニアリングセンター長に就任されました。
 折井 私のミッションは〝前工程と後工程の融合〟を実現することにある。これまで後工程のエンジニアリングを主に見てきたが、これからは前工程もしっかりと把握しなければならない。そうしなければ、これからやって来る半導体の新時代に対応できない。前工程に加えて、後工程の重要性は一気に高まってきた。

―― Rapidusというシリコンファンドリーの強みについては。
 折井 千歳市の半導体工場「IIM」(Innovative Integration for Manufacturing)において、前工程と後工程の一気通貫のものづくりの実現を目指す。他のファンドリーに対する差別化として「スピードの速さで勝負!」ということがあるが、これが実現できる環境にある。装置メーカー、材料メーカーなど、半導体関連の各企業にも北海道に進出してもらいたい。Rapidusはこの企業連合の先頭に立つ考えだ。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2025年9月25日号1面 掲載

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