商業施設新聞
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第465回

(株)パルコ 心斎橋店店長 菅原崇氏


上期取扱高は前期比50%増
複合MDで激戦区でも存在感

2025/1/21

(株)パルコ 心斎橋店店長 菅原崇氏
 「心斎橋PARCO」が賑わっている。「NEW COMPLEX」をコンセプトに掲げて幅広いMDを構築し、2025年2月期上期はPARCO全体の中で、最もテナント取扱高の前期比伸び率が高かった。インバウンドだけでなく国内客も取り込んでおり、商業激戦区の大阪・心斎橋で存在感を発揮している。(株)パルコ心斎橋店店長の菅原崇氏に、現在の動向や今後の見通しなどを聞いた。

―― 足元の動向から伺います。
 菅原 24年2月期は開業時に掲げた年間テナント取扱高の220億円を超えて、259億円で着地した。今期、25年2月期上半期は前期比で50.9%増となり、PARCOの中でも最も伸ばすことができた。23年5月に新型コロナが5類に移行し、23年秋口にかけて施設売り上げは回復していったため、今後は前期比のハードルも高くなるが、10月の数字も3~9月に近い伸びで着地している。25年2月期の年間テナント取扱高は350億円近い数字になるのではないか。

―― ここまで伸びている背景は。
 菅原 全体的に良いのだが、特に6階を中心としたポップカルチャー系が大きく伸びている。春の改装でポップカルチャーゾーンを5階にも広げ、「キデイランド」を移転・増床オープンするなどした。各フロアで接続する大丸心斎橋店にもポップカルチャー関連のテナントが出店するフロアがあり、2館一体で集積感が高まった。ポップカルチャーは国内外の方を集客し、土日はファミリー層も目立つ。この集積・集客が館内の店舗に波及している。

―― 店舗構成はバラエティが豊かです。
 菅原 「NEW COMPLEX」をコンセプトに掲げ、百貨店でも、ファッションビルでもないモノ・コトを融合させた。地下には飲食店やコスメ、低層から中層階にはラグジュアリーブランド、ファッション、ポップカルチャー関連の店舗、上層階には「ハンズ」やシネコンの「シアタス心斎橋」などがある。全体としてファッション、アーバンカルチャー、フードを軸にしつつ、大丸と2施設一体で魅力を作るためコスメ、フード、ラグジュアリーをともに強化する分野として掲げており、単独ではなしえない集客もできている。

―― 館内を歩くといわゆる尖った商品が多いです。
 菅原 もともと街としてラグジュアリーやファッションの旗艦店が多く、特別な体験や高感度な商品を求めて来街する方が多い。そのため我々の施設にも尖った商品や高級感のある商品が多く、他の街でも展開しているファッションテナントにも心斎橋の特性を意識していただいている。

―― 地下の飲食ゾーンも尖っていますね。
 菅原 「心斎橋ネオン食堂街」として大阪の人気店を中心に焼き鳥、寿司、食堂、ラーメンなど幅広い業態を集めた。こうした食堂街に音楽やアートを盛り込み、特徴的な空間になっている。

―― 心斎橋は商業施設激戦区ですが、心斎橋PARCOが目指す立ち位置は。
好調な心斎橋PARCO
好調な心斎橋PARCO
 菅原 年齢で言うと大丸は40~60代に強く、近隣に若者に強い商業施設があり、PARCOはその間の層をしっかり取り込みたい。また、施設のあり方ではテーマパークのような場所を意識している。国内客の目線でいうと心斎橋はターミナル駅ではなく、わざわざ出かける場所で、観光客にとっては観光スポットとして期待感が高い街。そういう場所にあるためPARCOは商業施設ではあるものの、気持ちとしてはテーマパークとして想像を超える刺激、出会い、高揚感などをしっかり提供していきたいと思っている。

―― インバウンドの動向はいかがですか。
 菅原 24年3~9月の累計テナント取扱高構成比は国内の方が66%、海外の方が34%だった。前期比の伸び率では国内の方が129.0%、海外の方が211.9%、全体では148.6%と、海外の方の伸びが特に目立つ。海外の方は前述のポップカルチャーのほか、日本発のデザイナーブランドや地下の飲食ゾーンへの来店も多い。

―― 心斎橋全体がインバウンドで賑わっていますね。
 菅原 施設が接する心斎橋筋は平日の午前中からインバウンドで賑わっており、コロナ前より国籍が広がったという声も聴く。御堂筋の歩行者空間を広げる工事も行っており、今後、御堂筋側は人通りが増えていくのではないか。

―― 今後取り組んでいきたいことは。
 菅原 26年春からリニューアルを進めていく予定で、このエリアの特徴でもあるラグジュアリーブランドや高感度ファッション、施設の強みでもあるポップカルチャーを今以上に強めたい。また、少し抽象的な話になるがここまで心斎橋PARCOが成長してきたため、心斎橋PARCOから何か新しいものを生み出し、全国のPARCOや、PARCO以外の施設にも波及するものを生み出したいという思いもある。集っている人たちがワクワクするようなものをつくれると良い。


(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2576号(2024年12月17日)(3面)

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