電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第595回

イビデン(株) 代表取締役社長 河島浩二氏


AI向けは売上倍増
大野新工場は設備搬入開始

2024/10/4

イビデン(株) 代表取締役社長 河島浩二氏
 パッケージ基板大手のイビデン(株)(岐阜県大垣市)は、2024年6月に社長交代の人事を発表し、電子事業を統括していた河島浩二氏が新たに代表取締役社長に就任した。主力の電子事業はAIシフトが急激に進むなど、過去に例がないほど激動の事業環境下にあるといっても良い。河島新社長に足元の状況、そして国内で進む大型工場投資の現況について話を伺った。

―― まずは新社長としての抱負をお聞かせ下さい。
 河島 長年私は電子事業を担当してきたことから、現在国内で進めている大野、河間の新工場投資に専念して業務を遂行すべきと思っていたため、社長就任の打診を受けた際は正直なところ悩んだ。ただ私自身、様々な決断のタイミングで「新しいことを選ぶ」ことをモットーとしてきたこともあり、新たに社長を拝命することになった。

―― 分かりました。電子事業の現況は。
 河島 24年度上期(4~9月)はおおむね想定どおりに着地できたと思っている。ただ、顧客ミックスの変化などは出ており、クライアントおよび汎用サーバー向けの苦戦をAI向けの好調がカバーしたかたちとなっている。汎用サーバー向けは在庫調整の動きを受けて当初想定に比べて回復が鈍い。クライアントは価格競争の激化から数量を無理に追わない戦略にシフトしており、ピークに比べて数量は落ちている。

―― AI向けは。
 河島 受注は引き続き旺盛で、当社のAI向けの生産ラインはフル稼働の状況が続いている。AI向けに限れば、24年度通期ベースでは売り上げは前年度比で倍増する見込みで、電子事業の拡大を大きく牽引する見通しだ。AI向けは一部競合他社も参入してくるが、既存製品は引き続き100%のシェアを確保できる見通しで、次世代品についても技術難易度が高いことから、我々の優位性は高い状態を保てると考えている。

―― 国内では大野、河間で大型工場の建設を進めています。
 河島 すでに発表しているとおり、大野新工場は25年7~9月期の立ち上げを目指し、9月から設備搬入を開始したところだ。まずはフルキャパシティーに対して2割程度の設備搬入を計画しており、年内には初期投資分の搬入作業を終える予定だ。AI向けの旺盛な需要に対応すべく、河間から大野への設備の仕向地変更などを行って前倒しの可能性も探ったが、なかなか難しい状況だ。

―― 河間事業場新棟は稼働延期を発表しています。
 河島 当初は24年の稼働開始を予定していたが、顧客の需要動向を考慮して、稼働タイミングを26年に先送りしているが、直近の回復スピードを見ると不透明な状況だ。24年度から建屋の減価償却を開始しており、早急に立ち上げを進めたいところだが、26年以降は様々なケースを想定して顧客との話し合いを進めている。

―― 既存ラインのリニューアル状況は。
 河島 現状、AI向けは大垣事業場で対応しており、フル稼働が続いている。大垣中央事業場でもAI向けが生産できるような取り組みを急ピッチで進めており、現在認定取得に向けてサンプル出しを進めている。

―― 電子事業以外の新事業育成などは。
 河島 EV電池向けのセラミック製安全部材が事業化に向けた秒読み段階に入っている。プロジェクトレベルから正規事業部への格上げを検討しており、まずは売り上げ100億円を狙っていきたい。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)

本紙2024年10月3日号1面 掲載

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