商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第443回

(株)渋谷マークシティ 常務取締役 営業部長 総支配人 増井紀洋氏


23年度は売上高約152億円達成
『渋谷ネイバーズ』を軸に集客

2024/8/13

(株)渋谷マークシティ 常務取締役 営業部長 総支配人 増井紀洋氏
 京王井の頭線渋谷駅直結の商業施設「渋谷マークシティ」は、鉄道、ホテル、オフィス、商業、バスターミナルからなる複合施設として2000年4月に開業した。従前のファッション・雑貨中心のMDを、21年には「渋谷 東急フードショー」などを導入して大きく刷新し、23年度は過去最高の全館売上高となるなど注目を集めている。(株)渋谷マークシティ(東京都渋谷区)の常務取締役 営業部長 総支配人の増井紀洋氏に話を聞いた。

―― 足元の状況から。
 増井 23年度は152億6700万円という過去最高の全館売上高を達成した。それまでの最高は13年度の131億円という売上高であったが、これを大きく上回る結果を達成できた。22年12月以降、来館者の増加が見受けられ、23年5月の新型コロナの5類移行後、増加の勢いが増した。
 一方、4階通路「アベニュー」の通行量は、コロナ前の7割程度の回復にとどまっている。これはオフィスの利用者の出社率が完全には戻っていないことが影響していると考えている。

―― 利用層について。
 増井 開業当初の渋谷マークシティは〝オトナ発信地〟をコンセプトに、20~30代女性をターゲットとしていた。しかし今は「渋谷ネイバーズ」という、渋谷で働いている人や旅行に来る人、インバウンドなど多様な層をターゲットに据えている。施設のMDも開業当初の女性向けファッション重視から変更するべく、21年に大規模リニューアルを実施した。

―― 21年の大規模リニューアルについて。
 増井 イーストモールの地上1階と、イーストモールおよびウエストモールの地下1階に渋谷 東急フードショーが出店した。地上1階はスイーツゾーンで、地下1階は生鮮・グロサリーを取り扱う。
 また、ウエストモールの地上1階には「DAISO」「Standard Products」が出店。特にStandard Productsはブランドとして1号店の出店であり話題を呼んだ。日常的に立ち寄れる店舗を主に導入したことで利用する層が大きく広がり、客数や売り上げが拡大した。23年度の過去最高の業績にも大きく貢献している。

―― 渋谷 東急フードショーについて。
 増井 生鮮三品を取り扱う地下1階にはミドル層の女性が多く、一方地上1階のスイーツゾーンには流行に敏感な若い人が多く訪れている印象だ。渋谷エリアでは東急百貨店本店などが閉店しており、今まで渋谷エリアで生鮮三品を購入してきた人たちの受け皿になっていると思う。
 また、インバウンドが渋谷 東急フードショーで料理などを購入し、それをホテルで食べるというスタイルも増えてきた。そういった部分からも、やはり幅広い客層から選ばれる「街のプラットフォーム」として定着してきたと感じている。

―― 周辺では様々な再開発事業が進められています。
 増井 27年春には、渋谷マークシティの隣接地において三菱地所(株)などが進める再開発事業が開業する予定で、渋谷マークシティでは4階のアベニュー部分で接続する計画だ。これにより、より多様な人が渋谷マークシティに訪れるようになるのではないか。
 また、27年度開業予定の「渋谷スクランブルスクエアⅡ期(中央棟・西棟)」が完成すると、渋谷駅東口方面に位置する「渋谷ヒカリエ」から動線がつながるようになる。周辺の再開発事業と連携することでエリア全体の回遊性は飛躍的に向上する見込みで、渋谷マークシティはその中で西口エリアの玄関口としてのプレゼンス向上を図っていきたい。

―― 現時点での施設の課題などは。
 増井 エリアとしてインバウンドが増加する一方、渋谷マークシティとしてはインバウンド需要をまだ完全に吸収しきれていない。渋谷マークシティに併設している「渋谷エクセルホテル東急」に宿泊するインバウンドの中には、ホテル外で食事をとる人もいる。こういったニーズがあることから、特に4階のアベニューの飲食店では、まだまだインバウンドを取り込めると見ている。中期的には、隣接する再開発事業との相乗効果を期待して、新しい店舗の導入なども進めていきたい。
 また、渋谷マークシティは元々、横の動線が強く縦動線が少し弱い傾向があり、縦動線で買い回りをする人は少ない。そのため、例えば東急 フードショーと4階アベニューに渡って回遊してもらうというよりも、それぞれのフロアで吸引力の強い店舗を導入して集客する必要がある。直近では、ウエスト2階に新業態のベーカリーレストランを導入する予定で、これによりさらなる集客を図っていきたい。

―― 今後の抱負は。
 増井 渋谷では再開発が活況だが、渋谷マークシティは開業から24年が経過しており、渋谷エリアの再開発事業では先駆けとなるような施設である。新たに再開発により開業する施設、すでに営業している施設と力を合わせて、“カオス”“創造”など渋谷らしさを大切に育てるまちづくりにも寄与していきたい。



(聞き手・新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2555号(2024年7月23日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.441

サイト内検索